2013/7/26 女子サッカーの指導者、沖山雅彦さんのHidden Story

サッカーの東アジアカップが開催中の今週お届けするのは、女子サッカーの指導者、沖山雅彦さんのHidden Story。
沖山さん、実は、ヨルダンの女子代表の監督を務めてらっしゃいます。
先日、帰国された際にお話を伺いました。

現在、ヨルダンの女子代表を率いる沖山雅彦さん。
日本では、女子のクラブチームや国体に出場する東京都の代表、さらにJFAアカデミー福島。女子の選手を中心に指導してこられました。そんな沖山さんがヨルダンに行くことになった理由を教えていただきました。

去年の4月。沖山さんは、ヨルダンへ。
代表監督に就任しました。最初に女子の代表チームを見て、沖山さんはこう感じました。

最初の印象は、「こりゃ大変だな」というのが正直なところですね。

当然、外国なので、日本人と考え方も違いますし、僕が持っている日本のスタンダードなイメージが全く通用しない、という感じでしたね。練習に遅れてくるのは当たり前、休むのも当たり前。あとは練習終わったら、ゴミを散らかしっぱなしなんですね。
それはなぜかというと、ヨルダンですと、街の中でも掃除をする仕事の人がいるので、これは彼らの仕事でしょ?だから、ペットボトルのゴミも散らかしっぱなしで。でも、それは世界的なフットボール界のスタンダートからしたら違うだろうな。

この状況を受け、ヨルダン女子代表、沖山監督が最初にとった行動とは?

例えばゴミなんかですと、まず僕がやるんですよ。1週間くらい終わったあと10分片付けてると、帰っちゃう選手が「何やってるのかな」と気になりますよね、そうすると1カ月くらいすると、ひとりふたり「コーチ、やりますよ」と。 だから、まず自分がやることが一番大事だなと常々思ってましたので。

そして、サッカーの技術面でも、大きな改革が必要とされていました。
中東の国、ヨルダンで、沖山監督が伝えたのは、どんなことだったのでしょうか?

僕が行った時には、正直、いわゆるフットボールのテクニック的なところは非常に低かったです。これはサッカーどころじゃないなというのが正直な印象でした。

やったことは、私が行く直前にやっていたアカデミーでの練習が、あるいはトレセンのコーチとしてやったことが非常に役立ちました。

2012年の1年間は個のレベルを上げるということ、これは日本サッカー協会が育成年代でずっとやっていること、アカデミーで重視していたことなので、そういう日本の育成年代で行われていたトレーニング方法、考え方、あるいはトレーニングのオーガナイズを応用して、個を育成する。

今年6月。ヨルダンにとって、重要な大会がありました。
来年開催される、女子アジアカップの予選。
選手の姿は、最初に出会ったときとは、全く違っていました。

アジアカップ予選のときは、選手自ら、自分たちでミーティングをして、ルールを作ったり。なんか、携帯電話を夜、集めたとか言ってましたね(笑)中学生の寮生活でやるようなことをキャプテンが決めて、選手達に伝えて、消灯時間を決めて部屋で休むようにしたり、試合から逆算してオフザピッチのことをちゃんとやる、という雰囲気ができてたかなと思いますね。

女子アジアカップ予選。
グループAの最終戦、ヨルダン vs ウズベキスタン。
勝ったほうが、1位で突破できる試合、ヨルダンは、4-0で勝利!!
見事、アジアカップ出場を決めました。

応援してくれた観客も「女性でもここまで出来るんだ」というのを認めていただけるような試合が出来たんじゃないかなと思います。

スタンドで応援してくれた観客だけでなく、向こうのテレビで生中継とか、1日に再放送を5回くらいやったほど放送してましたので、多くの人が女性でもこれほどスポーツができるんだとか、女性でもこれだけサッカーができるんだということを、認知するきっかけを作れたのではないかと思います。

アラブの世界、イスラムの世界では、女性がスポーツをすることに対して認知度が低いですし、なかなか理解がされていない地域ですので、そういったなかで、女性がスポーツをこれだけできるんだ、見る人も感動できるんだということが、あの大会を見た人に伝えられたんじゃないかなとも思います。

就任から1年と少し。
沖山監督は、チームを 女子アジアカップ出場に導きました。
出場を決めた大一番は、ヨルダン国内で 何度も再放送。

それは、ヨルダンの人々が 女子サッカーの魅力を心から感じた1日でした。