2012/12/7 写真家、鋤田正義さんの情熱物語

今月は、音楽のHidden Story月間!
今朝は、デビッド・ボウイ、Tレックス、YMOなどさまざまなミュージシャンの写真を撮り続ける写真家、鋤田正義さんの情熱物語。

鋤田正義さんは、1938年福岡生まれ。
大阪の広告代理店で勤務したあと上京。
メンズ・ファッションを中心に写真を撮りました。
ロンドンへ乗り込んだのは、70年代に入ってまもなく。
Tレックスを撮影したい、という想いを抱き、スタイリストの高橋靖子さんとともにイギリスへ渡ったのですが、仕事を得た方法は、いわゆる「飛び込み」でした。

スタイリストの高橋靖子さんという人がいて、Tレックス撮りだしたのは1972年ですけど、その前の年の71年に、山本寛斎さんのショーがロンドンであって、スタイリストとして、やっこさんがそれを手伝ったんですね。で、やっこさんのほうが英語がうまいんですね。
それでファッション関係からも攻めていったみたいですね。Tレックスのマネージャーはいきなり分からないんで。ファッション関係からこういったら事務所の電話番号が分かって、それでマネージャーに会いに行ったら、もともとファッション関係の人だったらしいんですよ。それでやっこさんも息があいますよね。そういうこともあって、スムーズに話がいったんですけど。

1972年、Tレックスはリンゴ・スターが監督した『ボーン・トゥ・ブギー』という映画を発表するなど、人気の絶頂期を迎えていました。

ロンドンのスタジオで撮ったときは、最初1時間か2時間くらいのオーダーで頼み込んでたんですけど、ミッキー・フィンとマーク・ボランのふたり来てもらって、最初は形にはまったポートレートを僕なりにおさえて、だいたい撮れて、だんだん彼らも曲を引き出したり、ギター手にしだしら弾き出したり、それがエスカレートして、マネージャーに連絡してPAの小さいやつとか持ち込んで、彼らもリハーサルみたいな、ふたりで。
それで、ノリ出して、どんどんやったら4時間くらいかかったんですよね。

途中でね、カメラすら忘れてるんですよ、彼らは。
ふたりで音楽をやってる、それをこっちが良いところをこう。目の前のミニコンサートを撮ってたような感じで。
その後こういうあれ、ないですもんね。
スタジオがステージみたいになって撮っていったっていうのは、後にも先にもこれくらいで。

写真家、鋤田正義さんは、72年、Tレックスを撮影。
さらに、鋤田さんは、ひとりの男に出会います。

ロンドンに滞在中に、デビッド・ボウイって知らなかったんです、それまで。

それで、街を歩いていたら、ポスターが貼ってあって、それも足高くあげて、ロックのコンサートの感じじゃなかったんですね。しかも宇宙から落ちて来たみたいな、スペースファンタジーみたいなテーマでやってるから、すごく新鮮な感じがしたんで、ロンドンのまわりの若い人もすごいんだって話をしてたんで、たまたまそれがコンサートのポスターだったんで、それを見に行ったんですけど、ルーリードと一緒に出てたんですね。
それでまた、ポートフォリオを見せたら気に入ってくれて、スタジオ撮影ができたんですけど。飛び込みですね、仕事じゃなくて。

鋤田さんがロンドンでデビッド・ボウイを撮影したあと、ボウイのアメリカ・ツアーがスタートしました。
鋤田正義さんもツアーに同行しました。

ボウイもアメリカ公演にかけてるんで、会場もラジオシティミュージックホールかな、4日くらいリハーサル期間がありましたかね? 1日前くらいは、自分が最初におりてくるミラーボールをチェックしたりとか、そういうこともやってましたけど、それは当日、2月、ヴァレンタインデイでしたかね、それに合わせてるんですよ。ミラーボールで降りてくるんですよね、でっかいやつ、それはすごい演出でしたね。

そして、鋤田さんとデビッド・ボウイといえば、アルバム『ヒーローズ』のジャケット撮影秘話。

東京で撮ったんですけど、77年にイギーポップがアルバムを出して、イギーポップのプロデューサーを彼がやっていて、そのアルバムのプロモーションで東京に来たんですね。それで、コンサートやらないから、時間余裕あるからって、1時間ずつ時間をくれたんですよ。

イギーポップ1時間、デビッド・ボウイ1時間。そのとき撮ったんですけど、『ヒーローズ』のために撮ったわけでもないんですよ。

こっちの撮りたい撮り方で撮って、それで好きな写真を10何枚送ったら、数カ月後に、『ヒーローズ』っていうのができたんで使わせてくれと。だから嬉しかったですね。

デビッド・ボウイ、Tレックスをはじめ、YMO、ブライアン・フェリー、サディスティック・ミカ・バンド、ジョー・ストラマー、デビッド・シルビアン、矢沢永吉、布袋寅泰、小沢健二、木村カエラ。
アーティストの写真を撮り続けてきた鋤田正義さん。
最後に伺ったのは、撮影の極意。

やっぱり、「憧れの人を撮って来たな」という感じは、1回1回そういう気はないんですけど、やっぱりね、嫌いな人は撮ってないんですよね。
気持ちを接して撮ってるから、それがよかったのかなとは思いますけどね。
「和気あいあい」でほとんどの人を撮ってるんですよね。

大事なのは、気持ちを接すること。
その写真家はそう言ってにっこり微笑みました。