2012/9/14 ニールセン北村朋子さんのHidden Story

今週は、デンマーク在住のジャーナリスト、ニールセン北村朋子さんのHidden Story。

沖縄本島と同じくらいの広さ、人口はおよそ6万5千人。
そんな島に、ニールセン北村朋子さんは、ご主人のアナスさん、息子さんのホルガ君と一緒に 暮らしています。

そのロラン島、風力をはじめとする自然エネルギーですべての電力をまかなっているのです。

風車がたくさんあるなというのは、一番最初に目についたことだったので、「なんでこんなに風車が立っているの」とまわりの人に聞いたりして、で少しずつ、ロランの人が「ここは風がいいからみんな風力で発電しているんだよ」と教えてくれて、「へ〜でもこれ誰が持っているの電力会社が持っているの?」とか話を聞きながら、「ああ、普通の人も風車を持って発電できる国なんだ」と、デンマークのこと、エネルギーのことが分かり始めた、という感じですね。


ロラン島とお隣のファルスター島にある風車の数は550基以上。

島の電力をまかなうだけでなく首都コペンハーゲンへもエネルギーを送っています。


ロランで生活を始めてしばらくすると、朋子さんにこんな想いが芽生えました。



だんだんこういう取り組みを田舎の自治体がやっているのは面白いなと思って、誰かこういうことを日本に伝えている人はいるだろうなと思ったんですけど、コペンハーゲンの人とか日本の人に聞いても、全然誰も知らなくて。そしたら、これは自分が伝えなければ誰も知らないままなんだなと思って。つてのあったメディアとか、飛び込みで、こういう自治体があって面白い取り組みがあるんだけど取り上げませんかとか、簡単な記事のサンプルを送ったりとかして……そしたらたまたま雑誌『ソトコト』が取り上げてくださって。


それ以来、テレビ、新聞、そしてラジオ。
ニールセン北村朋子さんは、さまざまな取材を手がけて来ました。

すごく面白いのは、今でも環境エネルギーや持続可能な社会づくりに関わる仕事が多いですが、サッカーとか、ハンドボールとか、食とか、教育のこともやっているんですけど、どんな角度から仕事をしても、デンマークっていつも最後に行き着くところが同じで、「人が大事」っていうところにいつも行き着くんですよ。いろんな分野をやることで、デンマークのいろんな顔を見ることができるしでも結局、デンマークにとって何が大事なのかっていうのは、地域の人、関わっている人が大事っていうところにいつも行き着くのでそれは面白いなと思うし。

自然エネルギーの島として知られるデンマークのロラン島ですが、実は今、東日本大震災の被災地とのコラボレーションが始まっています。

すごく心が痛んで、当時は自分として何ができるのかということで本当に途方に暮れていたんでけども、じゃあ自分が今一番力を入れてこれまでやってきたのは何かということと、ロランの人たちが私がロランのことを日本に伝えてきたというのを知っていたので「日本は他人のような気がしないよ」とみんなが言ってくれて。

これまで自分が一番力を入れてやってきたのは、どんなことなのか??
ニールセン北村朋子さんは、ロランの取り組みや技術を被災地へ伝えたいと考えました。
そしてその想いは、ロラン市と宮城県の東松島市の共同プロジェクトへと発展しています。

多分、日本ってすごく遠い国だったと思うんですけど、私がいろいろ話聞かせてって取材に行って、みなさんがいろいろ教えてくれて、そういうの、最初は「そんなの日本に教えてどうするの?」という人がほとんどだったんですけど、私たちがやっているこんなことでも海外の人は興味を持ってくれるのねと思ってくれる人が増えていて、みなさんがね、「復興はどうなの?」と聞いてくれる人が多くて、だから何とか形にしてね「ロランの智恵がこんな風に活かされているよ」と今度はフィードバックしたいですね。

被災地の復興支援に関わる一方で、ニールセン北村朋子さんは、今年(2012年)7月、「ロラン島のエコ・チャレンジ」という本を発表しました。

エネルギーのこともさんざん書いたんですけど、最後に書かせてもらったのは、「でも、エネルギーっていうのはツールに過ぎないよ」ということで。
エネルギーは目的ではなく道具なので、その道具を使ってどういう社会を目指すのかというのが大事なので、どうして変えなきゃいけないのかということと、その先に自分たちはどういう社会を思い描いているのかというのを、クリアに想像できるというか、頭のなかでビジュアル化できるのかというのが大事で、それが私が一番伝えたいメッセージのひとつです。とにかく、みんなが望んでいるのは、安心で安全に楽しく暮らすことだと思うので、そのためには他の国と争っていてはいけないし、そういう風にならないためには自分たちの町はどうすればいいのか?自分たちの国はどうすればいいのか?そういうことがイメージできれば、それは共有できると思うので。

エネルギーは目的ではない。
目指すのは、安心、安全に、楽しく暮らせる社会。
明日を変える「風」を作るのは、ひとりひとりの想いです。

» ロラン島のエコ・チャレンジ