2012/8/24 寺川綾選手のHidden Story

今週は、ロンドンオリンピック競泳女子、100メートル背泳ぎで銅メダル!
400メートルメドレーリレーでも銅メダルを獲得した寺川綾選手のHidden Story。

寺川綾選手。最初にオリンピックに出場したのは、2004年のアテネ。
2008年の北京は国内の選考会で敗れ、出場できませんでした。
しかし、今年、ロンドンで銅メダルを2つ獲得。
この栄光の裏にはどんな物語があったのか?
まずは、北京オリンピックへの出場を逃したことについて伺いました。

そのときも一緒に練習していた選手がオリンピックに選ばれたので、もちろんコーチも一緒に帯同することになって、私は行けなかったので日本に残って練習することになったんですけども、オリンピックの開催中も本当は悔しくて「見たくない」って、ずっと思っていて見ないつもりだったんですけど、始まると、どうしても気になってテレビで仲間の頑張りを見せてもらったんですけども、すごくみんなが輝いて見えたし、やっぱり水泳って素晴らしいなってあらためて感じることができて、で、自分は家でいま何をやってるんだろうと思って「やっぱりその場に行ってオリンピックでみんなと一緒に戦いたいな」という気持ちがよりいっそう強くなって、それからまた、練習環境も変えてやろうと思ってやりました。

悔しさを噛み締めながらの再スタート。
寺川さんが門を叩いたのは、平泳ぎの北島康介選手や背泳ぎの中村礼子選手を輝かしい成績に導いた平井伯昌コーチでした。

「もうとにかく強くなりたいので、世界と戦える選手になりたいので、面倒をみてもらえませんか」と伝えにいきました。

最初は「嘘だろ」っていう感じで笑っていたんですが、いろいろ話していくと、最初は先生は「自分に見てもらいたい選手は山ほどいるんだ。いろんな方にお願いされてるし」という話をされて、「お前だけ突然来て、お願いしますって言われて、はい、じゃあ見ますよと、そんなうまくはいかないよ」と言われました。

一度は断られましたが、寺川さんは、あきらめませんでした。
2008年の暮れ、もう一度、平井コーチをたずねます。

最初から自分は何を言われても絶対に最後まであきらめないと決めていたので、断られても断られても「いいよ」って言われるまで絶対に通い詰めるつもりだったので、2回目も同じように「どうしても強くなりたいからお願いします」という風に行きました。
「ちゃんと練習に耐えて、本当に目標を高くもってやる覚悟はあるのか?」と聞かれて「あります」っていう風に答えました。

D: これは、場所、プールサイドですか?

そのときは、お寿司屋さんかな(笑)。
どうしても、先生もお忙しいので、時間をとっていただきたいってなったときに、本当に食事の時間しか空いていなかったのでお邪魔しました(笑)

お寿司屋さんで話はまとまりました。
寺川綾選手と平井伯昌コーチ。
ロンドンへの挑戦が始まりました。

Nellyの『Live Tonight』。
競泳の寺川綾選手が、競技前によく聴いている、というナンバーです。
でも、ロンドンでは、プールに入場する際、寺川選手はヘッドフォンをしていませんでした。

いつもは聴いています。

もちろん、今回もバス移動などでは聴いていたんですけども、試合会場に入ってからは、今回はせっかくだからオリンピックの雰囲気を楽しみたいなと思って、あえて、会場についてからは音楽を聴くのはやめました。今回はそうしました。

寺川選手が出場した100メートル背泳ぎ。
7月30日に行われた決勝。結果は、自己ベストを記録しての銅メダル。

直後のインタビューのなかで、寺川選手はこう語りました。
「平井先生の言葉をしっかり思い出すことができて、やっと目標だった58秒台が出たので良かったです」
寺川さんが泳ぎながら思い出していた、平井コーチの言葉とは?

決勝前の招集所に向かうときに先生と2人で歩いていて、今までどういうことを言ってきたか「おさらい」するから、それをちゃんとまとめてからレースに臨みなさい、と言われて。

スタート、たくさん練習してきたスタート。そして最近気をつけ始めた浮き上がりと、あとは、そのあとは前半50メートル、ターンするまでは大きく速くリラックスして泳ぐこと。そして、ターンは素早く入ってまた浮き上がりに気をつけて、そのあとはすぐにスパ―トかけずに、最後の15メートル10メートルにすべてをかけるようにして、タッチは絶対に流さないこと。きっちりと決めること、という約束をして行きました。

歓喜のあとのプールサイド。
笑顔で抱き合う寺川綾選手と平井伯昌コーチの姿がありました。

あの時は平井先生が、「タッチしか見てなかったけどほんと良かったよ」と言われて、「タッチしか見てくれてなかったんですか!」という話になったんですけども。

でも、私のことも喜んでいてくれたんですけど、そのあとに入江選手と鈴木選手が続けてメダルをとったことで先生達はすごく盛り上がっていて、「ほんとに聡美もよかったよ」と言われて、でも、私は表彰式の準備をしていたので、鈴木選手がメダルをとったことを知らなかったんですよ。
それでもうびっくりしちゃって、本当にチームメイトとしても嬉しかったですし、一緒に「よかったですね、よかったですね」という話題でした(笑)

競泳っていうのは、自分ひとりで泳ぎますし、ひとりでやるスポーツなんですけど、でも、みんなチームのつながりがすごくて、絆っていうか横のつながりがすごいチームだなと思います。

競泳はひとりでやるスポーツだけど、でも、ひとりだけで戦うわけではない。
チームスピリットがまぶしく輝いた、ロンドンの夏でした。