2012/6/8 ハローキティのHidden Story

今週は、レディ・ガガもこよなく愛するハローキティのHidden Story。
デザイナーの山口裕子さんにお話を伺いました。

1975年から グッズの販売がスタートしたハローキティ。
1980年からそのデザイナーとしてキティちゃんとともに歩んで来たのは、山口裕子さんです。
子どものころからあらゆるキャラクター・グッズを集めてきたという山口さん。
しかし、株式会社サンリオに入社して最初の仕事は……

一番最初は、入ったときに言われたのは「サンリオは子どもを対象にしたグッズを作っているけれども、これからはハイターゲットの人にもウケるような商品を作らなければいけないので、君はハイターゲット・チームに入ってください」と言われました。

そのハイターゲット・チームがキャラクター・チームじゃなかったんですね。キャラクターというのは子どものものだと。
ハイターゲットというのは、ロゴだけだとかハートのデザインが付いていたりとか、そういうものだと言われたので「いや違うな」と思ったんですよ。「なぜ、キャラクターがついてて、大人が持ってちゃ悪いの」と思いましたけど。

山口さんが当時、サンリオのキャラクターで最も好きだったのはスヌーピー。2番目が、キキララ。

しかし、入社2年目、こんな指令が下ります。
「新しいキティをかきなさい」。
当時、キティちゃんは元気がなかったのです。

私が入社したときから低迷していました。だから興味もなかったですね。
すごく売れていたのがキキララちゃんだったので。

興味もなかったキティちゃんをどう描けばいいのか?
山口さんは深く考えました。

キティちゃんをどうしようと……でも、私がひとつだけキティちゃんに疑問を持っていたのは、私自身も親からピアニストになれと言われていたので、私自身はおうちに家庭教師が来てピアノを習っていたんですけど、キティちゃんも将来はピアニストになりたいってそういう設定でうたっているのにかかわらず「キティちゃんピアノ弾いてないじゃん」という素朴な疑問があったんです。

そういうことで、キティちゃんのうちに初めてグランドピアノが来た日というストーリーを考えて、そういう絵を描こうと思って。
私自身も「ピアノがおうちに初めて来た日」というのをよく覚えていたので。

今や、レディ・ガガをはじめ世界で愛されるキティちゃん。
しかしデザイナーの山口裕子さんが担当し始めた80年代初頭。
その人気は低迷していました。山口さんがとった作戦は……

キティちゃんがどうやったら売れるのかを知っているのはファンでしかない。
かつてキティちゃんの商品を買っていた人たちになぜ買わなくなったのかを聞くしかない。

で、その当時、レコード店の前を通っていて、そこで新人歌手がキャンペーンをやっているのを見て、あ、これだと思ったんですけど。店頭で何かをやればお客様に話しかけられると思って、それで「サンリオショップの店頭でキティちゃんの絵を描いて配る」ということをさせてくださいと。それがサイン会だったんですけど。

サイン会での声、代表的なものは、
「キキララちゃんと比べて冷たい感じがする」
「キティちゃんって、オシャレじゃない。
いつも同じオーバーオールばかりを着ている」

だからオシャレにしなきゃいけない、みんなが憧れるようにしなきゃいけない。

あとはその冷たいっていう部分ですよね。この大きな太い輪郭線がいけなのかなと。「キティちゃんをやわらかくするには、どうすればいいのかな」と相当悩んだんですけど、ある日、ぬいぐるみを見てて、ああ、ぬいぐるみには輪郭線がないんだと。ぬいぐるみがやわらかく見えるのは輪郭線がないからだなと思って、「ああもう輪郭線は取っちゃおう」と思いましたね。

1984年、山口さんはアメリカに設けられたデザインスタジオへ。

女子ひとりで行くわけですから、寂しいですよね。
84年というと電話代もすごく高くて、で、まあその、キティちゃんにお友達を作ろうと思ったのは、自分自身に友達を作りたかったというのもあって、キティちゃんにテディベアの男の子のお友達を作ろうと思って、タイニーチャームっていうテディベアの男の子なんですけど、で、それを1985年の秋に発売するんですけれども、その商品がすごく売れて、その商品で初めてサンリオで一番売れるキャラクターになったんですね。

私はそのときにキティちゃんとお祝いをしました。キティちゃん、よかったよね〜って。誰とお祝いするでなく、キティちゃんとふたりでお祝いしました。

山口さんの心の内側をキティちゃんに映し出したことが、大きなヒットにつながりました。
いま、山口裕子さんが考えているのは、キティちゃんがイチゴを食べて変身する「いちごマン」。

「いちごマンでハリウッド映画も夢じゃないですよ」と話す、山口さん。
その瞳は 輝いていました。