2012/5/25 オーガニック・コットンにまつわるHidden Story

今週は、オーガニック・コットンにまつわるHidden Story。
日本におけるオーガニック・コットンの第一人者、渡邊智恵子さんにお話を伺いました。

ここ最近、耳にする機会が増えた「オーガニック・コットン」。
まずは、どんなものなのか、オーガニック・コットンを扱う株式会社アバンティの代表取締役 渡邊智恵子さんに教えていただきました。

コットンというのは、農業と工業の部分に大きく分かれますよね。

農業の部分においては3年以上無農薬、化学肥料を使わないでその土地で栽培されるもの、それで、できるだけ薬剤を使わない、殺虫剤とか、化学肥料、除草剤、そしてコットンの場合はどうしても枯れ葉剤を使う、人工的に枯らしてから収穫するので薬剤が大量に使われる農産物なので「できるだけ、それを使わないようにしよう」というのが農業における大きな位置づけですよね。

それと、人道的なことというか「児童労働ですとか農民に対する搾取をやめましょう」というのが非常に大きな問題になっているので、それをやめましょうとか、遺伝子組み換えの種をやめましょうとか、農業の部分が大きいんですよね。

それから糸づくり、生地づくりの段階でも非常に多くの薬剤を使います。それが環境にダメージを与えるので「できるだけ環境にダメージを与えない方法で製品化していきましょう」というのがオーガニック・コットンで重要な部分でもあります。

渡邊さんがオーガニック・コットンに出会ったのは1990年。
全く違うジャンルの商品を扱っていた渡邊さんに運命の出会いが訪れました。

その当時、繊維。綿には全くの素人でした。

たまたま、イギリスのナチュラリストの方から「アメリカにオーガニック・コットンの生地があるのでそれを輸入してほしい」ということで依頼がありました。
ですから、頼まれて「うちのビジネスの一つになるかな?」ということで、この世界に飛び込んだんですね。

アメリカ、テキサスからオーガニック・コットンの輸入をスタート。
そして、アパレル業界への売り込みを始めます。
でも、その頃、オーガニック・コットンは、ほとんど知られていなかったのです。

「ええ、こんなの持って来てあなたさ、ファッションの世界に色のないオーガニック・コットン持って来てどうなんねん」っていうそういうのは当然ありますよね。

ファッションって色があって、いろんな素材があって、それを組み合わせて楽しい世界を作っていくわけじゃないですか。それがね「無農薬有機栽培の綿ですって。何?綿に無農薬ってあるの?」ってところからいくわけですよ。まあ、ね。でも、オーガニック・コットンという情報を差し上げるということは、ある意味で、その業界の人、アパレルさんにとっては新しい情報だった。

世界のコットン生産量全体に占めるオーガニック・コットンの割合は渡邊さんが輸入を始めた90年ごろには0.01%程度だったのが、2010年には1.2%。実に120倍になりました。
しかし……

日本は、繊維産業のなかに原綿を供給できるような綿の栽培はないんです。ゼロと言っていいです。

これはなかなか知られていないことかもしれませんが、繊維の自給率って限りなく0%に近いということなんですね。麻にしてもシルクにしても化学繊維も石油ってないですからね。綿もそうでうすよね。ということは、我々が今着ている衣類、繊維製品の供給源は海外だっていうことですよ。
日本でもともとやっていたわけです、それを復活させるというのは大事なことですよね。

第一次産業、第二次産業を大事にしない国は滅びます。
サービス業だけで国が豊かになったところってありますか?一時は良いかもしれません。未来永劫それを維持できるかというと、そうではないと思うんですね。

繊維産業の復活について、渡邊さんには、ひとつのビジョンがあります。

今年、福島のいわきを中心にしてオーガニック・コットンの綿づくりを始めることにしました。
約15農家が手を挙げてくださって、15反くらいですねの綿の栽培が今年からスタートします。

ゆくゆくはですね「福島で紡績もでき、生地作りもでき、最終製品もできという繊維の産業を福島でこれから作って行く」というのを私たちの目標にしているんですね。

何とか、今、斜陽になってしまった繊維産業を、福島からですね、復興させていく。東北の復興といっしょに繊維産業の復興もこれにからませてやっていく……夢は大きいんですが、10年20年かかるかもしれませんけど、それをやっていきたいなと思っています。

オーガニック・コットンを扱い始めて20年以上、という渡邊さん。
今度は被災地から新しい風を起こそうとしています。

「これだよ」と思って突き進んでいく事のエネルギーってすごい事だと思うんですね。

毎日毎日、失敗することがある意味で楽しかったのかな。
チャレンジするのは楽しいことですよ。で、「それが出来るというのは幸せなことだな」とも言えますよね。

人にも地球にもやさしいコットンを広めるために。
そして、まさに連綿と続く産業を東北で作るために。
渡邊智恵子さんのチャレンジは続きます。

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