2012/5/18 金環日食にまつわるHidden Story

今週は、いよいよ迫ってきました、金環日食にまつわるHidden Story。
国立天文台のプロフェッショナルにお話を伺いました。

» 2012年5月21日 金環日食 | 観察方法

2012年5月21日。来週、月曜日の朝に起こる金環日食。
まずは、そもそもどうやって起こるものなのか?
日本の天文学のナショナル・センター、国立天文台で、星の位置を計算する研究を行われている相馬充さんに教えていただきました。

まず日食ですけど、日食というのは、太陽の手前を月が通過して太陽がかける、という現象ですね。

そのなかで太陽のなかに月がすっぽり入って、太陽のまわりだけが光って見えるというのが金環日食ですね。世界的に見ると1年半に1回くらいは起きているんですよ。

ただ、金環日食の見える幅が狭いんですね。最大でも300キロくらいの幅なんですね、そういう狭い範囲でしか見えないので、例えば日本に限ると何十年ぶり、ということになるんです。

前回、日本で金環日食が観測されたのは、25年前、1987年9月23日、沖縄。
東京都心付近で見られるチャンスはというと、
1839年9月8日以来。今回を見逃すと、東京では……

島を入れると、29年後、2041年10月25日、これは大島、伊豆大島で金環日食になるというのが分かっています。
島をのぞいてこの本土に限ると東京では、ちょうど300年後の2312年4月8日になります。

そして、今回の金環日食では、ひとつのプロジェクトが進められます。
それは、「太陽の大きさ」をきっちり測定すること。

今回の金環日食。限界線が日本列島を通ってますよね。

金環日食が「見られるところと、見られないところの境界線」があるわけですが、それがどこになるのか。というのが興味のあるところでして、例えば一般の方が、NASAのサイトで調べてみた、国立天文台の暦計算室で調べてみた、その予報の限界線の位置が違っていたと。どうして違っているかは、はっきりしているんですが、月は山あり谷ありでデコボコしているんですが、どこを月のフチと考えるかで違ってくるんですね。
ですから、「限界線の位置がどこかを調べるには、月円の凹凸をきちんと調べないといけない」ということになるんですね。

幸い、かぐやという月の周回衛星が月の地形を調べてくださったので、それで限界線の位置が計算できた、ということになったんですけど、ただ、そのときに、もうひとつね、月の地形は分かったんですけど、太陽の大きさがどうなのか、これが問題で、太陽の大きさってちゃんと分かってるんじゃないの?とお思いでしょうが、これがきちんとは分かっていなくて、その大きさによっては限界線の位置が違ってしまう。逆に、限界線の位置を観測から決められれば、太陽の大きさがきちんと分かりますね、ということになるんで……「観測から限界線の位置を決めよう」というプロジェクトが一般の科学家の方も含めて走ってまして。

今回進められる、「太陽の大きさ」を測定するプロジェクト。
金環日食が見られる場所と 見られない場所の境界、「限界線」を一般の方と共に調べる。というものです。

太陽の大きさを知ること。それには大きな意味があります。

今後も同じように。皆既日食なり金環日食が起こるときに、同じように観測すれば、太陽の大きさが分かって「太陽の大きさっていうのが変化しているのかな?」という事が分かると。

太陽は活動が周期的に変化しているはずですよね。
黒点の数でいうと11年周期で変化していると言われていますが、大きさも変化しているのかどうか?太陽が大きくなればその分熱量が増えるはずなんで、地球の受ける熱量が増えて気温が上がるという可能性もあるわけで、二酸化炭素が増えていて温暖化が起きているというのがあるんですが、それ以外にも太陽の熱量が変化していることによって温暖化とか寒冷化が起こっている可能性があって、だから太陽の大きさを調べることには意味がありますよね。

国立天文台の相馬充さんに最後にこんな質問。
「天体観測の魅力はどこにありますか?」そして、「金環日食以外に、今年、注目の星の動きは?」

「星空の美しさを楽しむ」という事にあると思います。

今年の8月14日の朝。金星が月に隠れるという現象が起こります。
月のすぐそばに非常に明るい金星が近づいて、消えて、また現れるということで、これは見ていてかなり面白いと思います。明け方なんで三日月の反対ですね、東の空に左の下が光って見えます。

東京では金星が月に隠れる時刻は2時46分です。出てくるのが3時29分。
望遠鏡を使ってみますと、金星も欠けているんですよね。このときは金星が半月状、半分だけ光っているんですね。そういう欠けたものが、欠けた月に隠れて出てくるというのは非常にきれいです。

空が人工の光で明るくなってしまっていると星空が見えにくいので不要な電気は消すというのも節電のためにもね、やっていただきたいです。

金環日食が起こるのは、5月21日、来週月曜日の朝。
取材の最後に 相馬さんは一言。

「あとはお天気ですね」そう言って、空を見上げました。