2011/11/04 スープストックトーキョーのHidden Story

今週は、スープ専門店「スープストックトーキョー」のHidden Story。

今や、全国に50店舗以上を営業する「スープストックトーキョー」。
手がけるのは、株式会社スマイルズの代表取締役社長、遠山正道さんです。
遠山さんが そのアイディアを思いついたのは、今から10年以上前のことでした。

あるとき、女性がスープを吸っているシーンが頭に浮かんできたんですね。「あ、これなんか面白いな。」……そのとき、私は外食チェーンみたいな新しいブランドをやりたいなと思って想像をめぐらしているときに、あるとき、その女性がスープを吸っているシーンが浮かんで……こういうのが好きな人の世界観があるなと思ったんです。それで企画書の名前も「スープのある一日」というタイトルなんですけど……

その時点で、遠山さんには飲食業の経験がありませんでした。
問題は山ほどあったのです。

まっとうな議論で言うと「夏は売れるのか?」とか、「それで腹はいっぱいになるのか?」とか、あと、スープってあとでやってみて分かったんですけど、すごい手間がかかるんですね、手間とコストがかかる。その割りにまさに形がなくなっちゃうわけです。それまで形のあった野菜とか肉とか魚とかボリュームのあったものが、ただの「つゆ」になっちゃうわけですから、「ありがたがられない」っていうかですね(笑)

しかし、遠山さんは最初の直感を信じ、スープ専門店オープンへ動きました。
1999年、お台場ヴィーナスフォートに1号店を開店。
手間ひまかけて作られた、あたたかいスープが人々の胃袋を満たすときがきたのです。
メニューに施された工夫について、教えていただきました。

当初からあるものなんですけども『東京ボルシチ』というのと、『オマール海老とワタリガニのスープ』。
今、ビスクっていう名前になってますけど、ご家庭で自分で作れないようなもの、あとリッチな感じがするものというかね。

実際、オマール海老のスープは本当に手間がかかっていてですね、カナダのプリンスエドワード島というすごく綺麗な海で、猟師さんが木のトラップ、木のかごを海に沈めるんですね。一晩すると2匹くらい入ってるんですよ。おっきなオマールを全部引き上げて、生きたオマールヘッドをその場でもいで急速冷凍して日本に持って来て、それをブランデーでフランベ、それから野菜と一緒にいためて、それをこし器でこして……という、すごく手間がかかってですね、よくやってるなという感じですね。

オープンから12年。スープストックトーキョーでは、これまで、さまざまなメニューが登場しましたが、そのひとつひとつに、長い時間が溶け込んでいます。

だいたい1個のスープを作るのに最低2年くらいかかるんですよ、だいたい2〜3年かかるんですね。なぜかというと、それぞれ旬の素材を使っていくと、春に出たものは春にしかないわけですよね。そうするともう間にあわない。どうしても最低丸1年はかかるということですね。あと、食材を集めてくるということ、それで、我々チェーン店という意識は薄いんですが、それでも50店あると、味を均一化していないとどうしてもお客様からご不満をいただいたりするので、やはり同じ素材、産地を変えずに50店舗分が確保できる素材を調達しようと思うとそれはそれで大変なんですね。

「スープストックトーキョー」の遠山正道さんは、今、フランスへ出張中です。
その理由は……

ニースに、松嶋さんという、松嶋啓介さんという星付きのレストランをやってらっしゃる日本人のシェフがいらして、その松嶋さんと、あるトコロで知り合ったんですが、今回の震災を経て、彼が、フランスでいろいろ「チャリティ・ディナー、ガラ・ディナーみたいなことを各地でやろう」と、「そこで集まったお金で スープストックでスープを作って被災地に配ってくれないか」と。
松嶋さん側からそういう申し出をいただいて、とてもいい話なので、ぜひやろうと。

実際には、1回目、こないだ試作をしたんですけど、スープっていろいろ味が微妙だったりするので、被災地のことを考えるとカレーにしようと。

遠山さんに 最後に伺いました。
スープストックトーキョー。
どんな想いで営業されているんでしょう?

我々、会社全体で、世の中の体温が少しでも上がれば、という言い方をしていて、抽象的ですが、世の中が少しでもよくなればいいなと思っているんですけど……スープって、ただの液体のはずなんですけど、そこから派生するイメージとか得られるものって、すごくいろいろあると思うんですね。
あたたかさとか、ホっとするとか栄養とか、あとスープを飲んでるシーンとかも、ただの何でもない食で済ませちゃってるってことではなくてね、ちゃんと自分自身の体とかスタイルとか気をつけて、すごく能動的な行為だと思うんですよね。
そういうものを重なっていくというか、スープを通じて伝播していくといいな〜という。

一杯のスープに込めたのは、やさしい素材とあたたかな想い。
世の中の体温を上げるべく、今日もスープ作りが続きます。