2011/10/21 トレーナー。木場克己さんが語る、長友選手の肉体秘話

今週は、サッカー日本代表長友佑都選手が信頼を寄せるトレーナー。木場克己さんが語る、長友選手の肉体秘話。

今や、イタリア、セリエAの強豪、インテルに所属。
サッカー日本代表にも、なくてはならない存在となった長友佑都選手。
トレーナーの木場克己さんと出会ったのは明治大学のサッカー部に所属していたころでした。
当時、長友選手は、ひどいヘルニアに悩まされていました。

腰の痛み、ということで「腰が痛いのでサッカーができない。 そこからどうにかしたい」という要望ですね。
一時期は引退を考えていたんで、あいつの中でも。
(ディレクター:「やばかった?」)やばいっすよ。よくこれでやってるなという。画像が残っているじゃないですか、それを見ると、これきついな〜っていう画像なんですよね。

明治大学に通いながら、FC東京の強化指定選手になった長友選手。
しかし、腰に爆弾を抱えていたのです。
トレーナー、木場さんは、出会ってから1ヶ月半、ほぼ付きっきり。

そんときは、体はああいう感じでゴツゴツしていたんですけど、ゴツゴツはしていたけれど、腰の痛みが出ている原因を探ると、バランスが悪かったんですよ、腰の回りの。
そこから、まず「なぜ、そういう痛みが出たのか」というところから入っていくなかで、腰、体幹まわりですよね、腹筋だったり背筋だったりは強いんですけど、表と裏の筋肉は強いんですけど、横の筋肉とひねる筋肉が弱かったので、そこが原因じゃないかなということから入って、治療のほうに持っていったんですけど。

痛みがなくなるまで無理をしないで、とりあえず、ひねる筋肉、ひねったらすごく痛みが出ていたので、まずはそのひねる筋肉をゆっくりリラックスさせるやり方、ストレッチでリラックスさせるやり方から始めて、それがなくなったら次の展開に入っていこうかと。
痛みがないんだったら、筋肉を固めたりとか、一日一日の状態を見ながらやっていった感じですね。

いわゆるサッカーのエリートではなかった長友選手。
「上手くなりたい!」という一心で木場さんとのトレーニングを続けました。

もうね、野性的な感じがすごくあるんですけど、内に秘めているものが、サッカーが上手くなりたいとか、向上心があるので、そのなかで自分がサッカー選手として、どうなりたいかというのがあるなかでの治療なり、トレーニングだったので、グイグイ、上手くなるためには何かをするという選手ですよね。

なんていうんですかね、自分からグイグイ、トレーナーを引っ張って行くようなコメントが多くて、じゃそこまで言うなら俺の言う通りにやれよと持って行って、なんといっても気持ちがすごかったです。

長友佑都選手の肉体。
それは、情熱が作りあげたものだったのです。

重要なキーワードは、「体幹」。
体幹のヒミツについて伺いました。

彼は「体幹、体幹」ってよく言いますけど、そのときは体幹はそこまで強くなかったんですね。

おなかの前の腹筋と、後ろの背筋は強かったんです。で、横側の横の筋肉、脇腹の筋肉は例えば、横に倒すと弱いし、ひねるとかたいし、という状態だったので、まずはそこから固めていって、そこができたら、いわゆる連動性というやり方で、ももの引き上げ動作、足の引き上げる筋肉とおなかの筋肉が同時に縮められれば、瞬間的にももの引き上げがパッと速くなるんですよね。そういうのだったり、ターンするときに、脇腹の筋肉が強くないと速いターンってできないので、まずは基礎ベースはその前にやって、そこから細かい筋肉を作っていったという感じです。

トレーナーの木場さんが強調するのは、脇腹です。
そして、もうひとつ、体幹のトレーニングで大事なのは……

強くなる前に、固い筋肉をつけていたら、いくら体幹を鍛えても腰痛になるんですよ。
今、体幹ブームなんですけど、うちの患者さんでも「体幹をやったら腰痛になった」という方が結構いるんですけど、まず体を柔軟にしないといけないですね。
筋肉を「ゆるめて」あげないといけないんですよ。

関節っていろいろあるんですけど、首の関節もあれば、肩の関節、腰の関節、股関節、いろいろありますけど、その関節をしっかりゆるめて、「ゆるめる」というのはストレッチですね、それからやらないと、良い体幹づくりにはならないですよね。 だから、バランスのいい体幹づくりをやるようにと指導者に教えているところですね。
体幹っていうのは、体全体の胴体部分の表も裏も脇腹も含めた体幹だよってことが、まだ分かってない人が結構いるので、そこをちゃんと伝えていかないと、いいスポーツ選手なのに腰をこわして、ヘルニアだったり、佑都が抱えている爆弾みたいなものも出てくるので、育成年代からおさえていかないと。

「日本のスポーツを強くなんないのかなあ」というところで。
日本のスポーツを強くするなら、育成年代からケガをしない体を作っていかないといけないと思うので。

長友選手が、イタリアセリエAのチーム「インテル」へ移籍したあとも、定期的にその肉体をチェックする、木場克己さん。

これまでの試合で、もっとも体幹の力を感じたのは、今年初めのアジアカップ決勝。
あのシーンでした。

佑都もアジアカップで延長戦ですごいクロスを入れて。あれが体幹力ですよね。

普通倒れちゃうんですよね。

あのオーストラリア戦ですよ。 延長戦で左からポーンと上げて、李選手がボコーンと決めたやつ。レオナルド監督があれを見て「あの選手は」となったと思うんですけど、あそこでブレないでしっかりあのキックが蹴れた。一番最後の120分以上過ぎてますよね、しかも倒れてないですよ。軸ですよね。

きれいな軸が作れたのとキック力がそこで生まれて、そこが評価されたところだと思うんですよね。そこが究極だと思うんですよね。

数年前、引退を覚悟するほどのピンチを救ったトレーナーは、最後にこう付け加えました。

「その肉体は、まだ限界を知らず、進化している」

ブラジルへ、そして、世界最高のサイドバックを目指して。
長友佑都選手のトレーニングは続きます。

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