2011/6/10 JAXA フライト・ディレクターのHidden Story

日本時間の8日、宇宙へと旅立った古川聡宇宙飛行士。
古川さんは国際宇宙ステーションに長期滞在します。

今週は、そんな古川宇宙飛行士を地上から見つめるフライト・ディレクター。
JAXA 宇宙航空研究開発機構 小池暁雄さんのHidden Story。

地上およそ400キロメートルの宇宙空間。
アメリカ、ロシア、ヨーロッパ、そして日本などが参加する世界規模のプロジェクト 「国際宇宙ステーション」が地球を周回しています。
そこに、これから5ヶ月半にわたり滞在するのが、古川聡宇宙飛行士です。
そして、古川さんがきぼう日本実験棟で行うさまざまなミッションを地上から指揮するのが今日の物語の主人公、小池暁雄さん。

私が会社に入ったのは1992年ですけど、ちょうどその頃はきぼうの基本設計をしていたころで、そのころに設計に対して安全性、保全性を解析評価する仕事をしていた期間が5年くらいあって、そのあと、宇宙飛行士のサポートエンジニアの仕事を5年くらいやって、そのときは今にして思うと古川飛行士ともすれ違いというか、ちょうど古川さんが99年に選ばれたあとに、基礎訓練というのを日本でやって、そのあとロシアやヒューストンで訓練をしたんですけどその最初のころ、僕は宇宙飛行士のサポートエンジニアをやっていて、当時、土井宇宙飛行士や毛利宇宙飛行士の2回目のフライトのサポートをしていたので、新しい宇宙飛行士の方が来られたなと、お医者さんというバックグラウンドで、結構今でも覚えていますけども、ヒューストンとかでも事務所で休みの日にも勉強されていて、大変なんだなと思いましたけど。

現在は、JAXAの有人宇宙環境利用ミッション 本部でフライト・ディレクターという立場にある小池さん。
フライト・ディレクターになるための関門とは?

試験というかですね、一番大きいのはシュミレーションをやるんですけど、シュミレーターというコンピューターの装置があって実際の運用と同じようにコンソールに座ってヘッドセットをつけて、宇宙とつながっていないんですけど、目の前にあるものは宇宙と運用がつながっているのを模擬するような環境のなかでここから8時間やってくださいとか、6時間やってくださいと……

実際の運用、いま認定されて1年100いくつかシフトをこなしましたけど、それほどドラマティックなことは実際起こらないんですけども、そのシュミレーションのときには、試されるのは何か起きたときにちゃんと対応できるかどうかですので、次から次からいろんなものが壊れていくんですよね。そのときに、いろんなポジションの人と協力しながら被害を最小限にして、例えば実験をやっていたら、その実験をできるだけつなげていくようにするとか。

国際宇宙ステーションを、24時間、地上から見つめるフライト・ディレクター。
小池さんの仕事場は、JAXAの筑波宇宙センター。

きぼう日本実験棟の中では、ごめんなさい、中と外ではですね、今、船外にも実験装置があるので、え〜実験が行われていますので、自動でやるものもありますし、アメリカやカナダ、ヨーロッパときにはロシアの宇宙飛行士と協力しながらやる実験もありますので、日本人宇宙飛行士いるいないにかかわらず実験を地上から指揮するということをやってきました。

みなさん、「アポロ13」なんて映画ご覧になったことがあるかと思うのですが、NASAのヒューストンのフライトコントロールは有名ですけど、あそこまでかっこいいかどうかは分かりませんが、だいたい似たような感じですね。

古川聡宇宙飛行士の長期滞在。
これまでの日本人宇宙飛行士とは少し違った側面があります。

古川さん、お医者さんなんですよね、お医者さんであり研究者である、というバックグラウンドを持って長期滞在する日本人宇宙飛行士は初めてなんですよね。

そして、フライト・ディレクターの小池さんが古川宇宙飛行士に期待することとは?

お医者さんというバックグラウンドもあるので、古川さんに使ってもらいたい装置がいくつかあって、聴診器だとか、脳波を測定する機械だとか、血中酸素濃度を測定する機械だとか、いわゆる地上の病院にあるような装置を打ち上げてあって、古川さん、それから、地上にいるお医者さんと双方向の通信をしながら診断ができるだろうか?

そのデモンストレーションをする。ここはやっぱり古川さんが参加することで、将来遠隔医療システムを構築する上で有用なコメントが得られるんじゃないかと期待しているんですけどね。

JAXA宇宙航空研究開発機構のフライト・ディレクター。
小池暁雄さんに 最後にうかがいました。
今回のミッション、どんな想いを胸に臨みますか?

何が起きるか分からないんですよ。これだけ定常的に運用を続けているとはいえ、フロンティアな世界でもあるので。逆に何か起きたときにでも冷静に対処するのが僕たちの仕事なので、すべてが順調に思うと同時に、何が起きてもいいよと、何でも来てくださいという心境ですかね。

小池さんは、古川宇宙士へのビデオ・メッセージでこう話しました。
「さまざまなミッションももちろん大事ですが、とにかく無事に帰ってきてください」。

宇宙という名のフロンティアを旅する 宇宙飛行士の任務を、そして「命」を支えるのは、フライト・ディレクターをはじめとする地上のチームなのです。