2011/5/27 海外サッカー週刊誌『footballista』のHidden Story

今週は、現地時間土曜日、サッカーヨーロッパのクラブチームNo1を決める、UEFA チャンピオンズ・リーグ決勝が開催されることにちなんで、日本で唯一の海外サッカー週刊誌『footballista』のHidden Story。

海外サッカー情報を扱う週刊誌『footballista』。
編集長、木村浩嗣さんは、スペイン、セビージャにいました。
取材のための出張ではありません。セビージャ在住。
『footballista』は、編集長が国内ではなく海外にいるという異例のスタイルで誌面づくりをしているのです。
実は、木村さん、スペインに渡ったのは1994年。

その前にひとりでヨーロッパを旅行した時期がありまして、そのときにスペインに行ったときにスペインの人の当たりがすごくよかったんですね。
一番印象的だったのは、地下鉄とかで人が乗り合わせると自然と会話が始まるんですよね。
スペイン人はみんな友達というか。

サラマンカという町での暮らしがスタート。
最初は、サッカーにまつわる仕事をしようという気持ちはありませんでした。
しかし、サラマンカの空気が木村さんを変えていきます。

ちょうどサラマンカのチームが僕が行った年に一部に昇格して、一部リーグに昇格すると、バルセロナとかレアルマドリードとか有名なチームがいっぱい来るわけですけど、それを見に行くようになっていたんですね、楽しみとして。見に行っているうちにサラマンカというチームのファンになって。それまではレアルマドリードとかを応援していたんですけど、一体となってゴール裏でサッカーを見て、スペイン人たちと一緒に、まあ嘆き悲しむことが非常に多かったですけど、そういう風にしているうちにサッカーっていいなと。
スペイン人を結びつけるのは、特に男性については「サッカーなんだな」と感じてサッカーを好きになったというか、「サッカーがもたらす人を巻き込む力」を好きになったというかそんな感じですかね。

「サッカーの記事を書きたい」と思うようになった木村さん。
人生は大きくサッカーへと傾いていきます。

そのあと「サッカーについて書きたい」と思うようになって、監督の学校に行くことを勧められたんですね。サッカーの知識をつけるために。
で、その監督の学校に行ってみたら、思いがけずライセンスが取れたので、コーチ・ライセンスが。
そしたら「監督をやらないか?」というオファーが近所のクラブから来始めて、で監督をやり始めたら、もう完全にハマってしまったという。

それからはほぼサッカーについて書くようになってきたという形ですね。

木村浩嗣さんが取得したのは「レベル2」のコーチ・ライセンス。

「助監督としてなら、スペイン代表のベンチにもレアル・マドリードのベンチにも入ることができる」という。
いやだから大雑把だから、3つしかないというのは大雑把すぎるだろうとは僕も思いますよ。アマチュアから代表監督まで3つしかないんですよ、レベルが。

マドリードから車で2時間。サラマンカという町でアマチュア・チームの監督をしながら、サッカーの原稿を書く日々。
そこへ舞い込んだのが、新しい雑誌『footballista』創刊の話でした。

2005年、新雑誌創刊に際して編集長への就任を打診された木村さんは、これを快諾。
帰国して準備を進めました。

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週刊であれば毎週末の試合を追えるじゃないですか。そういうメリットがあるので、だから「試合を中心にグランドで起こっていることを見せるような雑誌にしよう」と、まず最初に思いました。
他の雑誌であれば、隔週だったりすると試合は追えないので、古い情報になってしまうので。今インターネットもあるし。

海外サッカーの試合についての情報を毎週伝える。
さらにもうひとつ、こだわったことがありました。

「日本人のライターさんに書いてほしい」というのはあったんですよね。特に海外在住の。

現地語が堪能な。海外のサッカーのライターさん、現地の方を使っているところも多いと思うんですけど、僕のところは日本人から見た……その、結局日本人が海外のサッカーにどういうインパクトを受けるか?っていうインパクトの部分も大事にしたかったので、ライターさんの驚きっていうか、ここは日本と違う、というコメントが出てくるような記事を書いてほしい、ということで日本人の方を今も中心にお願いしています。
ああ、日本と違うんだな、こういうところは同じだなというのを、サッカーの試合レポートという形を通じて、日本の人に伝えてくれれば、日本の人に知らせてくれれば日本の人にモノを考えてもらうきっかけ。サッカーだけじゃなく、文化とか社会の違い、そういうことを考えるものにしたかったので、日本人という風に決めました。

キーワードは、「驚き」「ギャップ」「心の揺れ」。
サッカーという窓を通して、様々な文化を伝える。
『footballista』にはそんな想いが込められていたのです。

ちなみに、木村さん、現在はふたたびスペインに舞い戻り、スペイン、セビージャ在住の編集長。

やっぱり僕にサプライズがないと、いい雑誌が作れないんですよね。
ずっと日本にいてスペインサッカーのことをインターネットでチェックしてもダメなんですよ。
サプライズ、驚き、ギャップを表現する雑誌にしたいと言っているのに自分にそれがなくなってくるというのは矛盾ですよね。だから僕はむしろ海外にいたほうがいい!
そう都合良く解釈してますけど(笑)。

編集長 兼 特派員、そしてサッカーチームの監督、木村浩嗣さん。
率いるアマチュア・チームの今シーズンの成績は、5勝21敗4引き分けでした。