2011/3/18 吉川由美子さんのHidden Story

「命」をつなぐ。
このことを 深く心に刻む日々が続いています。
今週は、小さな体で生まれた赤ちゃんを優しく包む肌着。
これを自ら作り上げたひとりのお母さんの物語です。

1998年7月31日。吉川由美子さんは第一子を出産します。
体重920グラム。小さな体で生まれました。

最初はまず3日が山と言われ、3日が過ぎたら今度は1週間。1週間が過ぎたら1ヶ月。 そういった単位で見ていきます。 その間に、未熟児網膜症とか、心臓に問題があったりとか、そういった問題をクリアしながら3ヶ月かかって退院しました。 毎日、母乳を手でしぼってあげることを搾乳というんですけど、搾乳をして冷凍パックに入れて、毎日病院に持って行きました。
うちのお世話になった病院は肌着の持ち込みが可能だったんですが、当時、そんな小さな肌着はなくて、デパートに行ったときに店員さんから「そんなにちっちゃな肌着はないから、大きくなるまで待たなくちゃね」と言われたのがものすごいショックで。 でも自分では肌着をつめることもできないし、ワンポイントの刺繍をしたり、ワッペンをつけてあげることしかできませんでした。

小さな体で頑張る息子のために、できる限りのことをしてあげたい。
でも、ぴったりのサイズの肌着すらない。
このときの行き場のない想いが、吉川さんを動かしました。

今から6年前、アメリカから小さな赤ちゃんのための洋服や肌着を輸入販売するオンライン・ショップ、「Happy Froggy」を設立。 さらに……

アメリカの肌着は頭からすっぽりかぶるという肌着が多いので、やっぱり日本の着物タイプの肌着のほうが使いやすいと思うんですね。 肌着は日本のほうがいいなあと思っていたので、いつか作りたいと考えていました。 私はお裁縫が全然出来ないので、お裁縫が上手なお友達に教えてもらって作るということを目指してやったんですが、既存の型紙を縮小して作ったら、もう袖口だけが小さくなって、とても着れるものにできなくて大失敗したんですね。 小さく生まれた赤ちゃんの肌着は、普通に生まれた赤ちゃんの肌着を小さくするのではなくて、小さく生まれた赤ちゃんの体に合うものをこちらが考えてあげないといけないなと思って、そのときは断念しました。

再チャレンジ。
しかし、さらなる困難が立ちはだかります。

赤ちゃんの肌着というのはもともとがとてもやわらかいものなので、普通のミシンだとうまくミシンが稼働しないんですね。うまく稼働しないので、2枚重ねにするとよくできるのですが、NICUは温度管理をされているので、2枚重ねにすると赤ちゃんには暑すぎる、という看護士さんからご指摘がありまして、1枚の肌着を作らないといけないというのを痛感しました。どうしよう?と困ったときに、そのときに、あ、もしかしたらミシンを変えたらうまくできるかもしれないと思って、ミシンを買いに行ったんです。

ミシンを買い替えたまさにそのタイミングで、「NICU=新生児の集中治療室に小さな赤ちゃんの肌着を寄付したいので、大量に作ってほしい」そんなオーダーが届きました。

それから3ヶ月。
病院の看護士さんからの意見も取り入れ、試行錯誤。
失敗を繰り返しながらも、ついに1枚の肌着が完成しました。

小さく生まれた赤ちゃんのための肌着を作る、吉川由美子さんのHidden Story。
何とか、肌着作りに成功した吉川さんですが、そこへ、こんなリクエストが寄せられました。

次に依頼がきたのは看護士さんからだったんですが、「赤ちゃんが点滴をしていても楽に着脱できる肌着を作ってくれないか?」っていうご依頼があったんですね。
これはまたまた難しい問題だなと思って、やっぱり私には無理ですって言ったら、「待つ」って言われて。 「あなたしかできない」って。

2ヶ月後。 インスピレーションが舞い降りました。
体温をのがさず、しかも 点滴をしたままで着替えをさせやすい形をひらめいたのです。

おむつをかえるときに、着物タイプだと、一度めくってこう、「裏すそ」めくって、「表すそ」めくって、おむつを替えるという過程があるんですけど、この点滴用の肌着ですと、ひとつ「おひも」をとっていただければ簡単におむつを替えることができるし。 看護士さんがこれまで苦労して点滴をしている赤ちゃんのお着替えをしていたことも知っていますので、これだったら、どんな小さな赤ちゃんでも、点滴をしている赤ちゃんでも簡単に安静にお着替えができるんじゃないかなと思って。

オンライン・ショップ、「Happy Froggy」を運営する吉川由美子さん。 今も、注文を受けた全ての肌着をひとりで作っています。
吉川さんを動かすのは、小さな命を守りたいという想い。
そして、小さな赤ちゃんのお母さんを勇気づけたいという想い。

私のお店に来てくださる方がたのほとんどの方がブログを見てくださってご来店いただく形なんですけども、やはり、小さく生まれた赤ちゃんが大きく育っているという情報が少ないなかで、私のブログを見て励まされた、というメールを頂戴しますと、私も嬉しくってやる気がでます。

体重920グラムで生まれた息子さんは、今や、お母さんより大きな体に成長。
この春、中学生になります。

Happy Froggy