2011/1/28 「入浴剤」を作るプロフェッショナルの物語

今週は、寒い季節に嬉しい「入浴剤」を作るプロフェッショナルの物語。
株式会社バスクリンのスペシャリストにお話をうかがいました。

茨城県つくば市にある 株式会社バスクリン つくば研究所。
取材チームを出迎えてくれたのは、入浴剤にたずさわって20年、というベテラン杉浦満さん。
まずは、入浴剤の開発、どんな風に進むのか教えていただきました。

入浴剤って一言で言ってもいろいろあるんですけど、例えば自分が担当している温泉タイプというものですと、温泉にいかに近づけるかというテーマでやりますので、なので温泉を知って温泉を入浴剤に描写するというのが大きな流れになりますね。

杉浦さんがこの10年担当されているのが、ヒットシリーズ「日本の名湯」。
温泉にいかに近づけるか?そのためにはやはり……

入浴剤ってその機剤をつくるものと、香りをつくる調香師と、それと商品をつくるマーケティングの3名いるんですけど、その3人で実際に温泉地に行って、この商品を作るにはどうすればいいかというのを、その場で現地でつかりながらディスカッションをして、大枠を作って行く。 現場で作るっていう姿勢でいつもやっています。

2泊3日ほどの行程で、温泉を巡る。
よく投げかけられるのは、「楽しそうですね?」という質問。
しかし……

よく言われるんですけど……入浴剤に似せるってことになるとできるモノって限られてくるんですね。
出せるモノでなおかつ使用感がよくて、入浴剤としてお客様に使ってもらえるものとなると実は少なくて、一回の温泉探索で20カ所くらい行くんですけど、そのうち1カ所、あるいはゼロ。 意外とそこを見つけるまでやるので結構大変ですね。

温泉を楽しむんじゃなくて、温泉の情報を記憶するという考え方なので、一般の方とはつかり方が違うというか、「この湯触りって、このスベスベの感触はこれとこれを合わせればイイんじゃないか」とぶつぶつ言いながらつかりますし……それを出た後に「こういうの作れない?」ってみんなで相談するという作業になりますので。

入浴剤の開発について、株式会社バスクリンのスペシャリストに伺ったストーリー。 ご紹介しています。

続いては、調香師。 つまり、香りをあやつる達人、荘司博行さんに伺いました。
どんな風にお仕事をされているのでしょう?

日本の名湯の場合ですと、香りのほうになりますと、「温泉の香り=硫黄の香り」というのが一般的なイメージかと思うんですが、硫黄というものはお風呂の素材を傷つけてしまいますので安全のために使えないんですね。 香りに関しても硫黄の香りで攻めますと、全部硫黄で終わってしまいます。 実際に温泉はですね、硫黄のお湯の香り以外に「風景」とか。 露天風呂があれば、そのイメージですね。

ちょっとイメージしていただきますと、「岩場の露天風呂にはいって、遠くに山があって、山に緑がおおい茂っていて、その山までは距離があって、空気は澄んでいて、空は晴れていて、なんとなく冷たくて……」という温泉をイメージしていただいて、それを香りに落とし込む、お風呂にはいっているんですが温泉に行ったときの絵を、情景を香りで再現していただく、というのを香りでやってまして。

風景を思い描けるような「香り」を作る。
どうやって作るのかと言うと……

遠くに山があれば、緑が遠くにあるので、なんとなく木の香りが遠くから感じられるような配分で香りを入れています。

手前に冷たい空気があるんであれば、その空気が感じられる成分を多めに入れて。 岩場があれば、岩は香りでは表現できないんですが、岩のような感じがする、岩=岩についている苔であったり、植物であったり、その配分を、自分が思い描いた温泉地の情景のバランスにあわせて配合していって。
絵を描くような感じですね。

株式会社バスクリンの つくば研究所には、お風呂がずらり。
ここで 技術者たちは、入浴剤を溶かしたお湯の色を見たり、香りを試したり、さらに時に実際に湯船つかって、入浴剤を開発しています。
ちなみに、調香師の荘司さんは、ご自宅でも……

その日が終わった時は、いちばん最後に作ったものを自宅に持ち帰って、会社で見るのと、お風呂に実際はいるのと印象が違うんですよね。 家族がいますので、子どもと一緒に入ってみたりとか。 実際使って、「これはイイな」とか、「会社では良かったけど、いまいちここは違うな」とか。
それで、次の日の朝行って書き換えて。 また作って入れて。 また、その日に最終のものを持ち帰って……

多くの人を癒すために。
入浴剤のプロフェッショナルは、自宅でのバスタイムでも頭を働かせているのです。