2010/11/19 東京フィルメックスのHidden Story

今週は、明日から開幕する国際映画祭『東京フィルメックス』のHidden Story。

東京フィルメックス。
今年で11回目を迎える国際映画祭です。
その始まりを知るキーパーソン、東京フィルメックスディレクターの林加奈子さんにお話をうかがいました。

海外の映画祭に日本の監督さんがたくさんいらっしゃる。 90年代から2000年にかけて、もちろん、北野武監督、市川準監督、黒沢清監督、青山真治監督、是枝裕和監督はデビュー作がヴェネツィアですけど、そうした監督さんと映画祭にご一緒する機会がありまして、そのときに海外ではまた違った観客のリアクションを一緒に上映に立ち会わせてもらう機会がありました。 そんななかで、オフィス北野の森社長、北野武監督と一緒に海外の映画祭にたくさんいらっしゃっていて、やっぱり、東京に、若手をサポートして支援して力づけていく映画祭があったらいいんじゃないかと。

新しい才能は、応援されるべきである。
そんな想いで始まったのが、東京フィルメックスでした。

コンセプトとしては、やはり「東京でやっている」ということで、コンペティションに関しては、アジアの新鋭の監督の作品を毎年10本くらい、アジアからの若手の作品がコンペになりまして、5人の審査員に選んでいただく形ですね。 それから特別招待作品ということでは、本当に今世界では新しい映画、何が起こっているのか、新しい流れを日本のお客様に見ていただけるような機会を、それはもちろんアジア映画もありますし、これまでもパラグアイの作品もありましたし、ドイツの作品を上映したり、いろんな国の映画を上映しています。

さまざまな国から届く、さまざまな映画。
それゆえ、こんな苦労があります。

審査委員が国際審査員ですので、英語字幕が打ち込まれているプリントをお借りしてくるわけですね。 で、それに日本語字幕というのをプリントを傷つけない形で投影します。 それは、タイミングをあわせて、日本語の翻訳をしてあるものを上映とあわせて同期して上映すると。 それが本当に大変です。 プリント自体はこの期間中だけ海外から、今年の目玉の映画というのは、いろんな映画祭から招待を受けていて、で、それが通関を通って入って来たものを、テクニカルチームにタイミングを計ってもらって、翻訳を作って、それを同期させて上映するというのは、これはもう時間との戦いでもあるし、あらかじめ送られて来ているDVDとヴァージョンが違って、何分か長いヴァージョンが届いたり、何分か短いヴァージョンが届いたり……それを慎重に確認しないと大変なことになってしまうわけですね。

かつては、事前の確認よりも20分も長いヴァージョンの映画が送られてきたこともありました。
でも、作品を観客に届けたい。 素晴らしい才能を感じてほしい。 その情熱が 東京フィルメックスを 導いてきたのです。

明日から開幕する国際映画祭、第11回東京フィルメックス。
今年のオープニング作品について 教えていただきました。

『ブンミおじさんの森』というタイトルで、アピチャッポン・ウィーラセタクンというタイの40歳の監督の作品です。

ブンミおじさんというおじさんが森の近くに住んでいまして、そのおじさんが具合が悪くて、もう余命いくばくかというところから物語は始まります。 そこへ、19年前に亡くなった奥さんが戻って来たり、失踪していなくなっていたはずの息子が帰って来たり、そのおじさんが今までの自分の人生、前世を振り返っていくという映画なんですね。 本当に素晴らしいビジュアルで、素晴らしい音の入れ方で、カンヌで最高賞というのは、これが今の映画、未来に向かっている映画だいうのを感じていただける作品ですね。

今年のカンヌ映画祭でパルムドールを獲得した『ブンミおじさんの森』。
この作品を皮切りに、林さんいわく、映画の新しい流れを作るにちがいない作品が続々と上映されます。
だからキャッチフレーズは「映画の未来へ」。

私たちはマッチメーカーというか、お見合いをする場、映画祭というのはお見合いが出来る場だと思っているんですね。 見てくださった方と作った方をつなぐ。 これからに向かって、これから映画を作りたい人とそれをサポートしたい人をつなぐ。 日本と世界もつなぎたいし。 いろんな意味でのマッチメーカーでありたいと思っています。

私たちが上映することで、映画の未来に向かって、これからの映画作り、監督たちに勇気を実感してもらえたら、映画祭としてはありがたいことだと思っています。

新しい世界への扉をひらくものとしての「映画」。
そして、そんな映画をつくる 若き監督たちの扉をひらく場としての 「映画祭」。
明日から開幕する「東京フィルメックス」。 今年も、いくつもの新しい扉が開かれるはずです。