2010/6/4 マッチフラッグ・プロジェクトのHidden Story

今週からは、3週連続でサッカーのワールドカップにまつわるHidden Storyをお届けします。

今日は「対戦国同士のナショナルカラーを使って1枚の旗を作る」という「マッチフラッグ・プロジェクト」。
プロジェクト・リーダー、アーティストの日比野克彦さんにお話をうかがいました。

まずは、日比野克彦さんに教えていただきます。
マッチフラッグとは?

「サッカーを応援するフラッグをみんなで作ろう」というところで、マッチフラッグの特徴は、普通、日本を応援する時は日本のフラッグをふるわけですが、マッチフラッグは「マッチ」なので、対戦相手の国、チームの旗も織り込んでミックスした旗を作ろうと。
要は、サッカーというのは、当然、1チームだけでは試合が成り立たなくて、相手がいて、スタジアムに観客が集まって劇的空間、ひとつの表現が生まれてくる。
ですから、我々のチームも応援するけれど、同じサッカーを愛する、応援する人たちがスタジアムを応援する。
その出会った日を互いに祝う、という気持ちを込めたマッチフラッグですね。

1990年、ワールドカップ イタリア大会。
日比野さんは、現地のスタジアムで試合を観戦。
地元イタリアを応援するフラッグに圧倒されました。
その光景が、のちにスタートするマッチフラッグ・プロジェクトにつながります。

    

やはり、応援するときにはフラッグって必要だなと。

で、ナショナルフラッグだけを振るんじゃなくて、試合っていうのは90分で終わっちゃうんだけど、サッカーというのは90分だけじゃなくて、今度6月にワールドカップがあると、14日にカメルーン戦があると。
そのときにはすでに、サポーター、選手のなかではサッカーは始まってるわけですよね。
対戦国のことを考えたり、対戦する土地のことを考えたりして。
そこの部分というのが、僕に言わせれば、とても想いをはせたりとか、まだ出会ってないものをイメージしたり、見えないものを見ようとする、イメージする力が一番発揮されるときだと思うんですよね。

そこをクリエイティブとかアートの視点で言えば、まだやってこない海の向こうの、まだ始まっていない遠くの時間のことを想う。
そこを形にしていきたい、ということが、マッチフラッグを始めたきっかけですね。

まだ見ぬ対戦する相手を想うこと。
試合がおこなわれる場所を思い描くこと。
そんな想いこそが大切である。
南アフリカへ向け、マッチフラッグ作りが始まりました。

サッカーの対戦国同士のナショナルカラーを使ってフラッグを作る。
日本サッカー協会がおこなう、マッチフラッグ・プロジェクト、リーダーは 日比野克彦さんです。
今回、南アフリカへは どんなフラッグを持って行くのでしょうか?

アジア最終予選で、日本がウズベキスタンの地でアウェイで出場を決めて、そのときも日本とウズベキスタンのマッチフラッグをウズベキスタンで作って、そのあと、去年の9月にオランダで、オランダ、ガーナと試合があって、そのときも海外でマッチフラッグを作って。

いよいよ対戦相手が決まって、カメルーン、オランダ、デンマーク、3つの国とやるということで、このワールドカップに向けてMatch Flag South Africa2010というのを始めたのが、今年の4月で。 全国10地域かなで、マッチフラッグ作りを始めて。 で、今回ワールドカップ・ヴァージョンのマッチフラッグは特徴があって。 素材を古着を使おうと。参加者に古着を持ち寄ってもらって、なかなか南アフリカは遠い。

フラッグに自分の着てた洋服の切れ端とか、自分が着ていたサッカーの練習着とか、青とか、赤とか、黄色とか、白とか、それを縫い込んで、自分の想いをより濃く旗に活かせる要素として、古着を使って今回は作ってます。

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全国各地で、一般の参加者とともに作ったマッチフラッグ。
すでに、デンマーク戦の旗は、日本代表 Samurai Blueとともに飛び立ちました。
カメルーン戦とオランダ戦のフラッグは、日比野さんご自身が南アフリカに運びます。

そして現地で、最後の仕上げ。

今回、南アフリカに持って行くマッチフラッグも、初戦カメルーン戦は、ブルームフォンテーヌでありますよね。

ブルームフォンテーヌの会場、多分ホテルになると思うんですけど、日本のサポーターの来てるホテルで最後の仕上げをやって、スタジアムに持って行こうと。 カメルーンとやるときはカメルーンのサポーターがブルームフォンテーヌに来てるだろうし、ダーバンにはオランダのサポーターが来てるでしょうから、一緒に日本のサポーターと作りたいなと。

互いにサポーター同士は「明日は負けないよ」、「いや俺たちは負けないよ」ってわいわいやるわけですよ。
試合を見るのも楽しみだけど、サポーター同士の試合前の交流は、現場に行かないと体験できない時間なんだよね。

で、そういうときに、言葉も違う、ワーワー言ってるだけで終わっちゃうんだけど、そこにマッチフラッグというものがあると、互いに、「じゃあ、日本の旗、俺が作ってやろうか」、「じゃあ、俺オランダの旗作るよ」とか。 「それ、オランダ、色の順番が違うよ」とか(笑) 会話がモノを作るとできるんですよね。
そこはマッチフラッグの魅力として、もうひとつ、ありますね。

アフリカ大陸で初めて開催されるサッカーのワールドカップ。
アーティスト 日比野克彦さんは、最後にこんなことを話してくれました。

サッカーというのは、世界で最も競技人口の多いスポーツで、世界の共通言語と言っていいと思うんですよ。
じゃあ、なぜそんなに競技人口が多いかというと、いちばん自分たちの身体に潜んでいるリズムとか感性を表現してくれるのがサッカーだと思うんですよ。
道具を使わないから、一番自分の素の体の癖、動きが出てくる。

南米は南米っぽいサッカーになるし、アフリカはアフリカっぽい、ヨーロッパはヨーロッパっぽい。
それぞれの場所にそれぞれの音楽というリズムがあるように、色とかデザインという美術があるように、そこの文化を反影した、思考を反影したサッカーというのがあるからサポーターも熱狂すると思うんですよね。

じゃあ、なぜ、そんな文化が生まれたかというと、一番最初は、人類はアフリカで生まれたんですよね。

そこから移動して、その土地、風土にあわせて考え方ができて文化が生まれる。 その文化が地域の特徴が出て来て、その先にサッカーがある。 で、そのそれぞれの特徴のサッカーを、また共通言語のサッカーを持ち寄って、生まれた土地に集まって、互いに、どうだったの?最初はみんなひとつだったけど、あれから随分時間が経ったよね。 サッカーでお互いどんな状況なのか見せ合いっこしようかというのが、南アフリカ大会だと思うんだよね。
あれから随分たちました、ところでキミはどうなの? キミはこういう考え方をしてるんだ……ということをボールを蹴りながら、互いに交換する場なんじゃないかと。

アフリカで行われるワールドカップというのは、そう考えていいと思うんだよね。

世界には さまざまな音楽のリズムがあるように、サッカーにも それぞれのリズムがある。
南アフリカで、選手達がボールを蹴りながら、リズムが、そして、文化がまじわる。

2010 FIFA World Cup 南アフリカ。 開幕まで あと1週間です。

» マッチフラッグプロジェクト | 日本サッカー協会