2010/4/9 西村雄一さんの情熱物語

今週は、2010FIFA World Cup South Africa
ワールドカップ 南アフリカ大会のピッチに立つ審判、最終候補30組に残っている西村雄一さんの情熱物語。

西村雄一さんが日本サッカー協会の4級審判員の資格をとったのは18歳のときでした。
サッカーのプレーヤーとして、地元のクラブチームに所属していた西村さんが審判の資格をとろうと思ったきっかけ。それは。。。

指導をしているときに、教えているチームの子どもたちの夢を奪うような判定にであって、あまりにも子どもたちの夢がこわれてしまって、それが許せなくて、だったら自分がやろうと思って始めたのがきっかけです。
自分のクラブチームの公式戦で、小学生のチームだったんですけど。
たしか、レフリーが一度笛をふいて試合を止めたんですけど、レフリーが間違ったと思って、そのまま続けていいよ、ということになって、ゴールが決まってしまったんです。
一回笛をふいたので、もし間違えたと思ったらドロップボールにしないといけないんですが、それがゴールにつながって、負けてしまったんですね。

18歳の少年が4級審判員の資格を取る。
当時、それは稀なことでした。

若い審判員を育てたい。
東京都サッカー協会は、社会人リーグの試合や、大学リーグなど 主催試合に西村さんを派遣。
毎週のように、どこかのピッチで笛を吹く。
そんな日々が始まりました。

多くの審判員は、審判をするということは趣味でやるということで、生業ではなくて、自己研鑽の場所というか、サッカーをするプレーヤーのために下支えをする、ということを理解して、審判をしている。
という、僕もそのうちのひとりでした。
別に仕事をして、そのなかで、自分で審判をする時間を作って、ピッチに立っていたということです。

10数年間、別の仕事をしながらサッカーの審判を続けました。
2004年、転機が訪れます。
日本サッカー協会から、「国際主審」そして「スペシャル・レフェリー」としてやってみないか、という打診があったのです。

最初は、やっていける自信がなかったので、どうしようかな、というのはかなり悩みました。
最終的には、働いているところの会社の社長に「男だったら人生に一回は勝負してみるときがある。 それは今じゃないか?」と言われて、決心をしました。

男なら人生に一度は勝負するときがある。それは今じゃないか?
社長の言葉が西村さんをアシスト。
西村雄一さんは、プロの審判としての第一歩を踏み出しました。

2010FIFA World Cup South Africa
南アフリカ大のピッチに立つ審判、最終候補30組に残っている西村雄一さん。
プロの審判とは、普段、どんなことをしてらっしゃるのでしょうか?

選手と同じで、その週末の試合に向けて、一番自分で努力しないといけない体調のこと、精神的な面でも試合において選手が活躍できるための努力をやりました。
水曜日木曜日に関して言えば、サッカー協会がプロフェッショナル・レフェリーに対してフィジカルトレーニング、試合の分析を用意してくれるのでそれに参加して、それ以外の日はセルフ・トレーニングで体調を整えて、週末、あるいはそのゲームに対してベストを尽くしていく。

西村さんは Jリーグのほか、アジアでの試合をはじめとする国際試合を担当。
年間100日は海外に滞在。
ワールドカップ予選のピッチにも立ちました。
これまでの試合で印象的だった試合。それは、

2009年の3月、南アフリカワールドカップ予選、イラン対サウジアラビア。
これが非常に厳しい試合でした。イランにとっては、ホームで、サウジアラビアを下せばサウジアラビアの敗退が決まる試合だったんですけども、先制点をイランがとって10万人の観衆がこれでいけるぞ思ったんですが、後半2点とられて逆転されてしまったんですね。

スタジアムの雰囲気はすごき騒然としていて、いろんなものが投げ込まれて、自分の身の危険を感じつつ危ない試合でした。
ただゲーム自体はイランは負けたんですが、翌日、イランの街で、僕たち審判員の顔を見たイランの国の人々が「いいジャッジだった」と言ってくれたのをよく覚えています。

ワールドカップ予選というのは、選手のひとつのキック、トラップがとても重いです。
そのひとつひとつの重いプレーに対して、我々のジャッジっていのは影響が大きいので、正確にジャッジすること。
あとは、選手のためにどれだけ走れて、いいポジションに行けて、納得してもらうことができるのか、それを強く思って判定していました。

選手のためにどれだけ走ることができるのか?
これが、西村雄一さんが、いつも自分自身に問いかけていることです。
それは、世界の注目を集めるワールドカップであろうと、地球の片隅で行われるサッカーの試合でも同じこと。

ワールドカップですけど、サッカーの試合は同じですので。
大舞台ではあるけれども私たちがやることは同じですね。
うまい選手が多いんだろうなと思いますが、我々がやることは変わらないですから、それに対して誠実にやろうと思っています。
私がレフェリーを始めたときに抱いた想い、子どもたちの夢をこわさないように。 その想いは今も持っています。

2010FIFA World Cup South Africa
試合を担当する審判は、5月に発表されます。