2010/2/26 フランス ナンシー

フランス、パリから東に約300km。 ロレーヌ地方の都市ナンシー。
噴水も凍る寒さで、まだ真っ暗な中、彼女は大きく背伸び。

そして心に決めました。郷土料理の朝ご飯を食べよう。 だって、何かいいことが起こりそうな、そんな気がするから。

今週はフランス、ナンシーです!!

パリ東駅からTGVに乗って約2時間半。
西暦10世紀ぐらいからロレーヌ公国の中心都市として栄えたナンシー。
今は静かな地方都市ですが、ドイツに近いという地理的な背景もあって、さまざまな歴史的な領土の変遷を経て今日に至ります。

もともとガラス工芸が盛んで、特に19世紀末に生まれた芸術運動、アール・ヌーヴォーで、大きな影響力を発揮した、ガラス工芸作家、エミール・ガレのふるさとがここです。
彼が中心となって、絵画、建築、家具などなどさまざまなジャンルで同時代に活躍したアーティストたちが集い「ナンシー派」として世界の美術史に大きな足跡を残しました。

今もなおナンシーの街のいたる所に、アール・ヌーヴォー建築が残っていて、歩いてまわるだけでも過去にタイムトリップ。
そんな街歩きの中で、地方都市が文化を通してドイツ支配への抵抗を主張する、当時の人々の意気込みが聞こえてきそうです。

朝食にはこの地方の郷土料理を

典型的なフランスの朝食といえば、たっぷりのカフェオレとクロワッサンというシンプルなもの。
しかしせっかく地方都市にやってきたのですから、郷土料理が食べたいものですよね。
キッシュ・ロレーヌがまさにそれ。
パイ生地やタルト生地で作った器の中に、卵、生クリーム、下ゆでしたベーコン、ほうれん草を軽く調理して加え、熟成したグリュイエールチーズをたっぷりのせオーブンで焼き上げる。
シンプルなレシピですが、素材を生かすための調理方法や、素材の割合など細かい所は、まさに千差万別。ママンの味です。
もちろん時間のない朝は作り置きしたものを暖めなおします。
出来たてと一味違う、生地にクリーミーなソースが馴染んだおいしさはまた格別です。

一緒に飲むのはコーヒーではなく紅茶です。

またナンシーは素朴なフランスの地方菓子のふるさとです。
18世紀にこの地を治めたスタニスラス公は無類の美食家でした。
マドレーヌ、ベルガモットのキャンディは、その時代に完成され伝統が受け継がれ、今もなおこの地の名産物となっています。
柑橘類のベルガモットは食用ではなく、香りづけに使うもの。
だから朝は、紅茶でその風味を堪能することにしましょう。
世界中で有名なベルガモット・ティー。 アール・グレイです。

オーブンで温めた「キッシュ・ロレーヌ」とアール・グレイ。
せわしない朝の時間でも、ゆったりと時が流れる気がします。
この「キッシュ」の語源は、ドイツ語の「クーヘン」、つまり「ケーキ」のことなんですね。メイン・ディッシュというワケではないのですが、食べやすく、栄養満点で工夫次第では野菜もたっぷり摂れる。 朝にふさわしいメニューかも知れません。