2009/11/27 「クックパッド」のHidden Story

今週は、大人気のレシピ投稿サイト、「クックパッド」のHidden Story。
今や「月間3.9億ページビュー」というとてつもない数字を記録するウェブサイト「クックパッド」。
立ち上げたのは、佐野陽光さん。

    
僕自身が何をやりたいかというときに、苦笑いではない心からの笑顔を増やしたい、というのが僕の価値観として、自分が死ぬときに、いい人生だったなと思うかそうでないかはそこにあるというのは大学生の段階で見えていて。 それをどうやったら、ひとりでも多くの苦笑いではない笑顔を増やせるんだと?

心からの笑顔をふやすには どうすればいいのか?
大学卒業後まもなく、1997年10月。
その目標を実現するために、佐野さんは会社を設立しました。
そして、笑顔を増やすための方法を模索します。
思いついたのは、「料理を楽しくすること」。

じゃあ、どうやったら料理が楽しくなるんだ?と考えたときに立てた仮説がふたつあって。

ひとつは、料理は食べると無くなるじゃないですか。
他のものづくりは、何か形に残るわけですよね。 これを写真とかにとってちゃんとアーカイブできて、あとから見ることができれば、ものづくりとしての料理を楽しくできるんじゃないかなと。

もうひとつは、「おいしい」って言ってもらうこと。
「いやそんなことないよ、と言いながら、そうかな(笑)」みたいな。
でも実際、料理の現場を見てみると、食べさせる相手って決まっているわけじゃないですか。 子どもとか旦那とか。
かなり閉鎖されたなかで自分のクリエイティビティというか、よしばっちり!と思ったものができたときでも、何にもフィードバックがかからないときもあるわけじゃないですか。
でも、それをレシピという形に変換して共有できれば、それを再現した人から、「作っておいしかったよ」とフィードバックがかかれば、料理は楽しくなるだろう。

写真などで記録して過去の料理をさかのぼって見ることができる。
さらに、その料理を「レシピ」という形で多くの人が共有できる。
インターネットを使えば、この2つを同時に満たすことが可能である。
1998年 ひとつのレシピ投稿サイトがネット上に姿を現しました。
しかし、当時はまだ、ブロードバンドが普及していない時代。

しかも、有料だったんですね。収益モデルをどうするんだ?というのは最初からあって、じゃあというんで。 実際に価値を提供している、料理を楽しくしている相手から料金をもらうのが一番いいだろうと。 だから直球で有料だと。 月500円。 料理レシピを載せるのは500円、見るのは無料。 というサービスでスタートしたんですよね。

<反響はどうでしたか?>
全然だめでしたね。
でも今から思い返すとあの時代で、実は100人以上使っている人がいたんですよね、お金を払って。1998年当時に。
今、冷静に考えるとすごいことなんじゃないのって。
でも、100人だと、5万円にしかなんないわけですよ。
そうすると、サーバー代も回線代も出ないと。
これでは続けられないなというのはあって。

サイトを閉鎖するしかない。
佐野さんは、すでに登録をしたユーザーにメールを出しました。
しかし、返信されてきた文面は。。。

ほとんどの人がやめないでくださいと。値上げしてもいいですと。 実際、料理が楽しくなったというフィードバックがあったんですね。 これは事業としてはうまくいかなかったけれど、確実に料理を楽しくしてるじゃないかと。 すごく悩んだあげく、無料サービスとして継続する。 コストがかかる部分は全部切って、無料でひっそりと継続することにしたんです。

料理レシピ投稿サイト「クックパッド」。
代表の佐野陽光さんいわく、「有料でのスタートは、失敗」。
無料でひっそりと継続することを決めました。
しかし、無料化すると、クチコミで利用者はどんどん増えていきます。

そうすると、回線がたりなくなったり、サーバーが足りなくなったりということがどんどん起きてきて、なんとか回線代を払う。サーバーを増やす。 そのために、受託の仕事ですよね、アルバイトのような仕事を受けて、なんとかこっちにあてるということをしばらくやっていた時期がありましたね。

クックパッドはここで決断します。
「Goodなことはやらない、Bestなことだけをやる」

さらに、広告ビジネスに長けた人物が会社に加わりました。
時は2003年から2004年。 インターネットも幅広く普及。
いよいよ、機は熟したのです。
広告事業に加えて、食品メーカーのマーケティングを支援する事業も始まりました。

美味しい食べ方を中心に、食品メーカーのマーケティングを支援するということですね。 僕らは、家庭の主婦達がどうやって料理をしているか、悩んでいるかを見ているわけですよね。 そことメーカーさんのギャップ。

一番大きいのが、特に20代30代の若い女性というのは、料理が伝承してないんですよね。
その商品をどうやって使ったらいいかというのがメーカーさんが思っている以上に分からないんですよ。
梅酒みたいなものがあったときに、どうやって楽しめばいいのか?というのが分からないんですよ。
60代くらいの方のばあい、おばあちゃんから手巻き寿司の酢めしはこうやって作るんだよというのが伝承しているんですけど、今の20代30代というのは、伝承していないんですよね。
だから、商品を開発する際には、美味しい食べ方をつけないと売れないんですよね。

時代の変化によって 世代から世代へ伝わらなかった料理もクックパッドでつながります。

料理をもっと楽しくすること、それは、もっと美味しく食べること。
もっと美味しく食べること、それは、心からの笑顔が増えること。
料理レシピ投稿サイト、「クックパッド」は、月間816万人が利用しています。
    


僕らが目指しているのは「すべての家庭のあらゆるシーンに、料理を楽しくするきっかけがある」ということなので。
本当にごくごく一部にしか料理が楽しくなるきっかけを提供できていないし、あらゆるシーンということでいえば、今は2つのシーンにしか提供していないんですね。

こんだてに悩んだシーン、あともうひとつは美味しいものができたときに、それを共有することで料理がもっと楽しくなる。
でも、買い物とか旅行とか、いろんなシーンがあると思うんですよね。
だから、もっともっと加速させたいなというのはありますね。

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