2009/10/23 「sweet」のHidden Story

今週は、今、最も売れているファッション雑誌。
70万部を発行する「sweet」のHidden Story。

廃刊、休刊する雑誌が相次ぐなか、部数を飛躍的に延ばした秘密はどこにあるのか?
編集長を直撃しました。

今月発売になった雑誌「sweet」の最新号。
表紙を飾るのは、吉川ひなのさん。そこに踊る文字は、「今一番お手本にしたいのはモデル!コレ欲しい200連発」。
特別付録として、シャーロットロンソンのヒョウ柄バニティポーチとシュシュが付いてきます。 発行部数は実に70万部。

この 驚異的なファッション誌。
編集長は、渡辺佳代子さん。
「sweet」が発信するのは どんなファッションなのか?
まずはそこから うかがいました。

うちの読者って、8割は独身で、ほとんどがいわゆるOLさんで、年齢は28歳がコアなんです。 そんなOLさんが読む雑誌なのに、「通勤ファッションは絶対にやらない」と決めていたのと、、、そうですね、何を打ち出すかよりも、何をやらないかを最初に決めました。 「通勤とモテはやらない」と。

マニュアルっぽいファッション誌が好きじゃなくて。
女の子が「かわいくなりたい」という気持ちでおしゃれをするのが楽しいのに、通勤ファッションは、こういう格好をしなくちゃいけないということだし、モテは、目的が男の人にモテるため、って、つまらないですよね。

渡辺さんが編集長に就任したのは、1999年の11月。
当初から、やらないことだけは 明確にありました。
「通勤とモテはやらない」。


モテ系っていうのが個人的に嫌いだったんですよ。
そういうファッション誌も嫌いだし、そういう女性も嫌いだし、とにかく自分の雑誌ではやらないって思ってましたね。
通勤をやらないのは、sweetは私より読者の年齢のほうが若いんですが、その子たちって109世代って言われていて、自分たちでトレンドを作って来たと言われていますよね。
そういう人たちって人から強制されるのが嫌だったり、自分を変えるのが嫌だったりするらしい。。。らしい(笑)。。。友達じゃないんで分かんないんですけど。
私ですら、大学を卒業して服装変えるの面倒くさいな、って思うくらいだから、その世代の人はファッション変えたくないんだろうな、って。
その辺は狙いもあったりするんですけど。


そして、今や、多くのファッション誌がつけている「付録」。
「sweet」は、これをいち早く仕掛けます。

創刊から5年後の2004年。 「sweet」の勢いは絶好調に。
返品率が非常に低く、完売続出という状態になります。

その躍進の理由はどこにあったのか?
付録にはどんな狙いがあったのか?

雑誌「sweet」の部数は、10万から20万、20万から40万と他の雑誌では考えられない増え方をしていきます。
人気上昇のひとつのきっかけとなった「付録」。
これを始めた理由はどんなところにあったのでしょう?

なんで思いついたかというと、単純にあまりにも売れてなくて、何かやらないとやばいと思って。 中吊りやってくださいとか、新聞広告うってくださいとかいろいろ言ってみたんですけど、売れてない雑誌に宣伝費なんてないじゃないですか。 私の中では先がけ的にやったとは思っていないんですね。 子どものころ買っていた雑誌についていた付録がついていたので、今も実家に帰えるとそのころの付録がとってあるんですよ。 付録目当てで買っていたわけではなくて、でも付録がついていると嬉しくて、喜びが倍になるというか、それをふと思い出して。

逆境のなかで、渡辺編集長が思い出したのは、子どものころの楽しい記憶でした。
それが、逆転のヒットを呼んだのです。
やがて完売が続出。 社内でも部数を増やすことが検討されます。
編集、広告営業、出版営業、広報、宣伝、そして宝島社の社長が出席してのマーケティング会議。

10万部から いきなり倍増の20万部へ。
常識破りの増加が決まりました。

10万部台くらいをちょろちょろしてて、sweetが本当に調子がよくて、本当に返品がないから部数をのばすチャンスだと思うんだけどどれだけのばそうか、というときに、いきなり倍、というのは編集者にもないし、書店営業をしている担当にもないんだけど、それがその会議でいきなり決まって。そこからですね。

今年の春には、60万部を発行。
ファッション誌として、刷り部数、実売ともに日本一の部数を誇る雑誌となりました。
しかし、この時代。 いい雑誌を作るだけでは売れません。
「sweet」は、書店や、本の取り次ぎ業者の方を巻き込む作戦を考えました。

60万刷ったはいいけど、書店だったり、コンビニだったり、現場で積極的に売ってもらわないと、雑誌も端っこのほうに置かれちゃうと、日の目をみずに消えちゃうんで。 うち、凸版印刷で刷ってるんですけど、凸版印刷の見学ツアーをやったんですよ。 書店の方と取り次ぎの方をご招待して。 ご招待っぷりも笑えるんですけど、リムジンを会社の前に横付けして、リムジンで凸版印刷に行くっていう。

結局、ムード作りって大事なんだなと思って。
今、雑誌や本が売れないと強く言われている時代なので、なんとなく、「sweet調子いいんでお願いします」と言っても、「本当かよ」と、みんなが盛り上がってくれないとモノって売れないなと思っていて。
私が盛り上がっているというよりは、まわりが盛り上がってくれている、というのを強く感じていて。
社内のメンバーの「sweet売るぞ」という盛り上げ方とか、取り次ぎの人とか書店の人の売るぞ、という感じとか。

渡辺佳代子編集長が 売れている理由として挙げたのは、雑誌の打ち出す世界観でも、付録でもなく、「みんなが盛り上がってくれること」。
現場で実際に雑誌を売ってくれる人を仲間にする。
仲間に伝わった盛り上がりは、どんどん加速する。
それは、人と人とのつながりが生みだした 大ヒットだったのです。

最後に、渡辺佳代子編集長にもうひとつだけ質問を。
この秋冬、注目のアイテムは?

今年は、シーズンの立ち上がりに、ファッション関係者に何がはやりますか?というアンケートをとるんですが、そのときに、ブランドのプレスの人たちがみんな「ライダース、ライダース」って言うんですね。 だいたいそういうシーズンの始めの アンケートってはずれることが多いんですけど、今会う人に聞くと、 本当にライダースが売れているんですって。 どこのブランドも打ち出しとしては、ワンピースにライダースを着るとか全体としてはかわいくなっているんですけど、意外でしたね。 ライダース、売れてるみたいですよ。


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