2009/10/9 IID世田谷ものづくり学校

今週は、廃校をクリエイティブな活動をする場として再生させた「IID 世田谷ものづくり学校」。
そこにはどんな人々がつどい、何を発信してきたのか?
5周年を迎えた、新しいスタイルの「ものづくりの現場」に迫ります。

世田谷ものづくり学校は、「学校」ではありません。
名前に、「学校」と付いているのは、そこが かつて中学校だったから。
統廃合となった世田谷区立池尻中学校を 再生させたのが、世田谷ものづくり学校です。
そもそもの始まりについて、広報ご担当の上砂智子さんに うかがいました。

ちょうど時代の流れもあったかと思うのですが、スクラップ&ビルドという考え方がもう古いのではないか?と言われ始めた2000年ちょっと過ぎ。 イデーの黒崎というものがいて、のちほど形をかえて「Rプロジェクト」という廃ビルのリノベーションをする会社につながっていくんですが、使われなくなったビルをこの時代、どうやって素敵に使って行くかというのを考えていたグループがいたんですね。

Rプロジェクトの元に、ニュースが届きます。
「世田谷で廃校ができてしまうらしい」
当時、都内では、民間の会社が廃校を再利用したケースは見当たりませんでした。
しかし、Rプロジェクトのメンバーは、世田谷区にプレゼンを行います。

もともと学校である、ということがありますから、学校としての特性を活かそうというのはあったんです、ハードの面では。 でも、ビジネスなので、どう活用するのかというときに、じゃあ、そこをオフィスビルにしようと。

さらに、うちの特色としては、デザインとものづくり、という2つのテーマがありまして、それをテーマに活動しているクリエイターさんだけに入居していただくという。
コンセプトははっきりしてましたね。

学校の建物をリノベーションして使う。
入居するのは、活躍中、あるいは、これから面白くなりそうなクリエイター。
準備は着々と進んで行きます。
地域の方と交流を深めるため、壁をペンキで塗り直すワークショップを開催。
エントランスや廊下に新しい命が吹き込まれました。
そして、教室がオフィスになりました。

廃校となった中学校が、2004年10月1日、Ikejiri Institute Of Design = IID 世田谷ものづくり学校として生まれ変わったのです。

廃校を再生させ、クリエイターのオフィスが入居することになった「IID 世田谷ものづくり学校」。
入居者のおひとり、テキスタイルデザイナーの有田昌史さんにも お話をうかがうことができました。
以前は、青山にアトリエを構えていたという有田さん。
ものづくり学校に入ったことで、どんな影響があったのでしょう?

ここに来る以前は、ベタな業界のテンションというんでしょうか、特有の緊張感のあるテンションのなかで生活していたし、仕事をしていたと思うんですね。 ここに入居してから、そこから外れらることができて、それは、別の亜空間のなかに来たというような。

仕事で疲れているときに音楽を聴くような、僕、ペンギンカフェオーケストラが好きでよく聞くんですが、そんな感覚がそのまま空気感としてあると。
だから、特殊な環境をここで獲得できた気がするんですね。

三軒茶屋の駅から、歩いて15分。
隣りには、小学校があって、昼間は子どもの声が聞こえます。
そして、オフィスは元教室。
そんな空間に、現在、およそ40組のクリエイターが事務所をかまえ、時にワークショップを開催したり、イベントをおこなって一般の方とも交流。
人とのつながりを力に変え、新しい「ものづくり」に挑んでいます。

この場所に求心力があって、自分自身で何かを作って行こう、あるいはそれが造形的な物じゃなくても、言葉とか、有形無形の自分らしさを表現しようという人たちが集まって来られていると思います。

ちなみに、「世田谷ものづくり学校」の共用部分には、テーブル・サッカーのゲーム台が置いてありました。

新しい会社であり、オフィスビルのあり方、もっと言っちゃえば、新しい働き方を探している方ばかりだと思うので。 うちはもう、誰が風邪をひいているのか、というレベルでの情報の共有のされ方をしています。 少なくとも私は知ってます。 廊下で会えば、こんにちは、寒いですね、とか。 昔の長屋みたいな、昔のああいう密な何気ないコミュニケーションが生み出したものって大きいと思っていて、そういったなかから新しい仕事も生まれていくんだろうし、2階にゲームが置いてあったと思うんですけど、あれは夜な夜なフィーバーしていて。 そういうのは学校ぽいなと思いますね。

広報ご担当の上砂智子さん いわく、廊下ですれ違えば、何気ない言葉をかけ、風邪をひいている人を気遣い、時には一緒に遊ぶ。
新しい「ものづくりの場」にあったのは、昔ながらのコミュニケーション。

壁に貼ってあった テーブル・サッカーのトーナメント表がすべてを物語っていました。

流れて来たのは、Devoの「Whip It」。 1980年のヒットです。

IID世田谷ものづくり学校。 さまざまなワークショップをおこなわれていて、今月は、「若きクリエイターのための80s講座」というものがあったそうです。
講師は、先ほど、コメントでご登場いただいたテキスタイル&グラフィック・デザイナーの有田昌史さん。

で、有田さん、この講座のために、Devoがレコードジャケットでかぶっていたプラスチックの帽子(?) 取り寄せたそうです。


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