2009/6/5 TOKYO 油田 2017の情熱

今週は、環境の日にちなんで、エコ活動の物語。
「2017年までには、使用済みの天ぷら油をすべて回収して再生する仕組みを作ろう」というプロジェクト、「TOKYO油田 2017」。
この活動に込められた情熱に迫ります。

廃食油=使い終わった食用の油を再生して、ディーゼル燃料を作る。
この技術の開発に世界で初めて成功したのは、東京 下町にある小さな会社です。
看板にある名前は、染谷商店。

新品では作ることができたんですが、使い終わった油で作ったのは世界初だったんです。使い終わった油ですから、よごれていますし、かすも入っていたりします。 だから、車の燃料にするというのは、みなさんの発想の中になかったんでしょうね。もったいない精神みたいなものがあって、これは使えるものは何とか使う、とても日本的だし、そういう文化が底辺にあったんでしょうね。

こう語ってくれたのは、染谷商店の3代目、染谷ゆみさん。
現在は、株式会社ユーズの代表として、TOKYO油田プロジェクトを展開する、その人です。
染谷商店は昭和24年創業。当時から天ぷら油を回収する事業をおこなっていました。
リサイクルの精神はすでに息づいていたのです。

そして。。。

私が1991年に、「TOKYO油田」という言葉を見つけるんですね。 バイオディーゼル燃料を開発したから「TOKYO油田」ではなくて、言葉を先に見つけたんです。 油を回収する仕事をしていたときなんですが、あれは結構、重労働で大変なんです。 なんでこんなに大変な仕事をしているだろうな、と考えたときに、これを資源化する仕事をしているんだと思ったんです。 東京っていうのは、これだけ油があふれているわけですから、ここは油田なんだと。 それで「TOKYO油田」という言葉を思いついて、燃料の開発に向かうわけなんです。

使い終わった油を再生して もう一度使うことができれば、東京は油田になる!
「TOKYO油田」その言葉が何よりの力となりました。
そして実は、開発開始からわずか半年あまりで試作品が完成することになるのです。

研究員がいるんですね、まずはその人に話して、こういうことの実験をやってみようと。 でも、いろんな分からないことがありますよね、そういうことを大学の先生とか機関に聞くわけですよ。 そうすると、少しずつ分かってくるんですよね。

で、いろんな人がふ〜っと集まってくれて、それでできちゃったんですよ。
「作ったというよりは、できちゃった」という感じなんですよね。

使い終わった植物油をディーゼル燃料化した「Vegetable Diesel Fuel」=VDF。
1993年、東京 墨田区の染谷商店が世界で初めて開発に成功しました。
その4年後、VDFをめぐる状況が一気に加速し始めます。

1997年に京都議定書の会議があって、そのころから、この燃料のことも知る人ぞ知る存在になっていくわけです。 それで私たちはプラントの開発を始めるんですね。

例えば北海道で廃油が出ますよね、それを東京に送って再生するとか、そういう燃料じゃないんです。
やはり地産地消のエネルギーだろう、という考え方がありましたので、地域で出た油で地域の車を走らせる。
循環する社会っていうのはこういうものだと示すことができたわけです。

京都議定書が生まれた97年。
染谷商店の3代目、染谷ゆみさんは、新たに株式会社ユーズを設立。
以後、油を回収するシステムづくりに力を傾けています。

集めた油は一滴残らず再資源化できるんです。 でも、今、状況がどうなっているかというと、「集めるシステム」がないんです。 社会のインフラがないんです。

ご家庭で使い終わった油をどうしようかなとなったときに、固めるとか、新聞紙にすわせて捨てるとかね、そういうことしかないんですよ。
回収ルートがしっかりないので。

そうすると、どこが難しいかというと、エネルギーにすることよりも、「集める」ということが大変なんですね。


「廃食油」という言葉をなくしたい。
なぜならそれは 捨てるものではなく、再び使うことができる資源だから。
回収ルートさえあれば、必ず全てを再生できる!
2017年には 使ったあとの油が一滴残らず 燃料に生まれ変わる。
そんな未来を目指すのが、「TOKYO 油田 2017」。

今、我が社が回収便を持っていてお店などに回収に行くんですが、それ以外に、街の小さなお店に回収ステーションになってもらっています。

すでに40軒くらいあるんですけど、面白いのは、「東京油田せんべい」。
これは近所のおせんべい屋さんが作ってくれていて、最初はおせんべいだけ作ってくれていたんですけど、東京油田の仕組みが面白いということで、回収ステーションになっていただいて、そこに油を持って行くとおせんべいをもらえるということになっています。 近所のお花屋さんも油持って行くと花一輪もらえるという。
つまり、ゴミ集め、廃油の回収ということだけじゃなく、地域のコミュニケーションにいかしていただいているんです。

だから、廃食油なんて言わずに、地域の潤滑油と呼んでいるんですよ(笑)

エコの輪を広げることは、人の輪を広げること。
東京の下町から 気持ちのいい風が吹き始めています。