2009/5/8 富士フイルムが手がける化粧品の開発物語

今週は、富士フイルムが手がける化粧品の開発物語。

富士フイルムが化粧品を手がける。
意外なことに思えるこのアイディア。 そもそものスタートは。。。

2004年に中期計画を発表したんですけど、その時に「医療と健康の分野を今後強化していく」ということを打ち立てて、そのなかで、もともと、レントゲンフイルムとか血液検査とかで医療の分野のことはやっていたんですが、健康の分野で何かできないか?ということで検討を始めたのがスタートになります。

富士フイルム株式会社の牧野快彦さんによると、2000年頃からデジタル化の影響を受けて、創業以来の核としてきた写真フィルムの需要が激減。
この危機的な状況を乗り越えるため、5つの分野の事業がピックアップされました。
そのひとつが「医療とライフサイエンス」だったのです。
では、その分野でいったいどのようなことができるのか?
自分達の技術をどう応用できるのか?

実際にはかなり時間がかかっていて、なかなか出口がなかったんですね。でもあるとき、お肌とフイルムが似てるよね、というところにたどりついたところからはいろいろ発想が出て来て。。。

ひらめきは、すぐには 舞い降りませんでした。

お肌とフイルムが似ている。
チームに衝撃が走りました。
それならば、フイルム作りの さまざまな技術が使えるのではないか!
社内では誰も経験したことがない、化粧品作りがスタートしました。

フイルムとお肌が似ている、という発見を原動力に富士フイルムは本格的に化粧品の開発をスタートしました。
「フイルムを作るプロはたくさんいるけれど、化粧品を作ったことのある人は 誰もいない」という状態。
しかし、開発チームには勝算がありました。

写真フイルムの半分以上はコラーゲンでできているんですね。 その「フイルムをいい状態で守る」という技術は、もう研究しつくしてきた。

もうひとつは、写真のプリントなんですが、特に昔のものは色あせてきたりするんですが、これは紫外線があたって写真の中で酸化反応して色あせるわけです。
「紫外線を原因にした酸化をいかにふせぐためにどうすればいいのか」ということを研究してきた、抗酸化ですね。

あともうひとつ、写真のフイルムのなかには色素ですとか、画像を出す成分が非常に細かくナノレベルで忍ばせてあるんですね。

というように、「目的の成分を目的の場所に非常に細かい状態で安定して届ける」という。
そういう技術も持っていた。

鍵となった抗酸化物質 = 藻から抽出した天然成分「アスタキサンチン」。
それまで 抗酸化力は強いものの、使用するのが難しかったこの「アスタキサンチン」を、ナノレベルまで細かくし、そのまわりを保護して安定させる。
そして、それを機能の異なる3種類のコラーゲンと組み合わせる。
これは、フイルム作りでつちかった技術があればこそ、実現できたことでした。

2006年に発表したシリーズに続いて、2007年9月、「アスタリフト」シリーズを発売。

そこにはもうひとつのハードル、宣伝はどんな風に打ち出すのか?
という問題がありました。 

その戦略について、富士フイルムの藤巻武亜さんはこう語ってくれました。

富士フイルムと化粧品ということで違和感を覚えるかもしれないので、メーカー名を出さない方がいいんじゃないかという意見もあったんです。 でも、ちゃんとした技術的な裏づけがあることです、写真フイルムを作って来た技術をいかして、スキンケア化粧品を開発できたんだよ、ということを堂々と言っていこうと。

最後に、当初から開発に携わった、牧野快彦さんに伺いました。
化粧品の開発によって得たもの、そして仕事の哲学とは?

「今まで、写真だけに使っていた技術を、他にも展開できた」ということでは、非常に意味があったと思います。

フイルムというのは限られた技術で、際立った技術なんです。 世界でも、一番多かったときで4社しかその技術を持っていないものでした。 その技術をそれだけで終わりにしないで、活用できたというのは大きかったです。 基本的にはいろんな人の役に立つのがメーカーだと思いますので、それを徹底していきたいですね。

富士フイルムが手がける化粧品のHidden Story。

フイルムにコラーゲンが使われていたとは!
そして、それを活用して、化粧品づくりを始めた。。。
発想の転換、素晴らしい。