2009/4/24 ななめドラム洗濯乾燥機の開発秘話

今週は、お使いの方も多いでしょう、「ななめドラム洗濯乾燥機」の開発秘話。

今や、幅広く知られる「ななめドラム」。
その源流にあったのは、ななめではない ドラム式の洗濯乾燥機でした。
では、なぜ、ななめになったのか?

パナソニック株式会社 国内ドラム洗技術グループの石原隆行さんは、開発が始まった当時のことをこう振り返ります。

ななめドラムという発想自体は過去にもあって海外で商品化された事例もありました。
目新しいわけではないんですが、当時、ユニヴァーサルデザインということが言われ始めていて、もっと使いやすい洗濯機が求められていて、ごく自然に、「投入面をななめにすれば使い勝手が良くなるんじゃないか」と、そういう発想が生まれました。

従来からある縦型の洗濯機や ドラム式の洗濯機よりも、もっと使いやすいものを作りたい。
そこから生まれた、「衣類を入れる部分をななめにしよう」というアイディア。
2002年、5人ほどのメンバーで開発がスタートしました。
しかし、ドラムを「ななめ」にすること。。。

ななめということは、ドラム洗の技術者からすると非常に無理な形なんですね。
というのは、「ななめにする」というのは、衣類が下の方に片寄って、なかなか動かない状態になるんです。

ドラム式というのは、ドラムをまわすことによって、衣類を持ち上げて落としてたたいて洗う、という仕組みなので、衣類を下の方で回転させているだけでは、機械力が加わらない状態なので、技術者サイドの発想から言うと、使い勝手がいいのは分かるけれど、それを裏付ける手段がないという。。。

ここには大きなハードルが待ち受けていました。

最初に考えられた角度は、45度。
しかし、それでは うまく洗えない。 最終的に決まった角度は、30度でした。

そしてポイントは、ドラムをゆっくりまわすこと。
スピードが速いと、衣類が 遠心力によってドラムの側面に張り付いてしまうからです。
さらに、バッフルと呼ばれる突起がドラムの中に作られました。
これも 衣類をうまく持ち上げるため。
ななめドラムの全貌が見え始めました。

hidden090424.jpg

パナソニックのななめドラム洗濯乾燥機。
開発にたずさわった石原隆行さんは、チームがぶつかった壁を明かしてくれました。

苦労しているのは、振動の部分ですね。
脱水するときに衣類が片寄っているとアンバランスが生じてドラムが振動するんですね。でも、どうしても衣類の片寄りは出てくるので、いざ脱水するときにバランスが悪いとなると、いったん止めて、アンバランス状態を解消してから動かすという方式に苦労しましたね。

モーターに流れる電流の量によって、衣類に片寄りがあるかどうかを検知。
それを解消させる機能が組み込まれました。
同時に、さまざまな性能についての作業、さらに、幾多の種類の衣類を使っての試験が行われたのです。

後に、ひとつのスタイルとして確立する「ななめドラム」。
消費者の前に姿を現したのは、2003年12月でした。

そして、その2年後2005年には、衣類の湿った空気から生まれる熱を 乾燥に利用するヒートポンプ式を搭載。 それは、ドラムをななめにしたからこそ出来たことでした。

ヒートポンプの機械自体が非常に大きく、乾燥機にそれを積み込むというのが難しかったんです。で、実用化へ加速したのは、ななめドラムです。
ドラムをななめにすることでうしろの空間があいてきた、ということで、そこにヒートポンプを埋め込む空間ができました。それと、コンプレッサー自体大きいものだと入らないんですが、除湿器に使われているコンプレッサーがコンパクトなものがあって、それを使う形で。

使いやすさを目指して作られた「ななめドラム」は、省エネ効果の高いヒートポンプ技術も導入し、エコな家電となりました。

滋賀県草津市。
開発チームの石原さんは、今日も ものづくりの最前線に立っています。
その胸に刻む、仕事の哲学とは?

やっぱり、今までの常識で考えていると打破できないものがあって、そこにチャレンジしていくことが大事だと思います。
売れる商品というのは、見た目の分かりやすさが重要でそれがないとヒットしていかないんだなと思いましたね。
あと、実際の業務のなかでは、人数も多く関わっていますし、いい結果を出したいし、そのためにコミュニケーションを大事にしていく、というのは心に決めています。