2009/1/2 「ハイアット・リージェンシー 箱根 リゾート&スパ」のHidden Story

今週は「ハイアット・リージェンシー箱根リゾート&スパ」。  人気ホテルの、女性総支配人のHidden Story。

東京から2時間弱の温泉地。 箱根。
そのホテルの出迎えは、やわらかな声。 
聞こえてくるピアノの生演奏にひかれて、エントランスのフロアから下を見下ろすと、そこには広いラウンジがあります。
座り心地のよさそうなソファーがならび、真ん中には、大きな暖炉のあたたかな火。
多くの人がすでにくつろいでいました。

「ハイアット・リージェンシー 箱根 リゾート&スパ」。
ハイアット・グループが日本で初めて手がけるリゾート・ホテル。 しかも、総支配人は日本のハイアットでは初の「女性」です。

総支配人になるというのは思っていなかったです。特に私は、セールス&マーケティングという、どちらかというと、お客様と対面しておもてなしする方ではなく、バックでPRをしたり、という裏の方だったので、総支配人になるというのは全然考えていなかったんですね。


野口弘子さんが箱根に開業するハイアットの準備室に配属されたのは、2006年の8月の終わり。
すでに進行していた建物内部のデザインと並行してコンセプト固めが始まりました。

このホテルは79室。箱根では大きなホテルなんですが、ハイアットの中では本当に小さなホテルです。 アットホームなあたたかい感じの、お客様がご自身の別荘のように帰ってきていただけるホテルにしたかったので。
ちょうど同じくらいのときに、デザイナーの杉本先生も、リビングの真ん中に暖炉を作ろうとか、お庭に緑をというところで固まってきていましたので、オペレーションする側も、名前をつけるときに、「じゃあリビングルームという名前をつけたらホテルのラウンジと違ったくつろぎ感を出せる」「レストランはダイニングルームという名前にしたらいいんじゃないか」そんな風に進んでいきました。

ホテルはエントランスから入ると、まず薪の香りがただよってきます。 壁はしっくい。
出迎えてくれる方の制服は、ハイアットスタイルの黒ではなく、作務衣のようなデザインの リラックス感の高いもの。
また、箱根ならでは、というのが、館内用に用意されている浴衣と丹前。
野口弘子さんをはじめとするスタッフが詰め込んだアイディア、コンセプトの中心となっている「アットホームな空気」が 訪れる人を包みます。

そんな「ハイアット・リージェンシー 箱根 リゾート&スパ」ですが、実は開業にたどりつくまでには 大きな壁がありました。

2006年の秋。 開業を12月に控えた「ハイアット・リージェンシー箱根」の準備室。
総支配人の野口弘子さんは頭を抱えていました。

人材募集を出さないといけないわけですよ。10月に人材募集を出してリクルートをするんですけど、こちらとしては当然11月の終わりとか12月の頭には入っていただきたいと思うんですけど、なかなかそうはいかない。そこが一番苦労しまして。東京では次の年に新しいホテルが開業するという話もあって、ホテルマンの方はいろんな選択肢もあったなかで、そこは苦労しました。

結局、オープンする12月に集まった従業員は必要な数の3分の1。
残りは、東京 / ソウル / 香港 / オーストラリアなど世界のハイアットからのサポートスタッフが集結。 何とか開業にこぎつけたのです。

2周年を迎え、「今は、すべて私のスタッフでお迎えしています」という野口弘子さん。
<ハイアットの中でも異色の、リゾートホテルを生み出すのは大変でしたね?>
という質問には、

あんまりそっちは思わずに、こういうユニークなハイアットが、しかも都心から近くにユニークなハイアットが作れるなというイメージとワクワク感のほうが大きくて、こういう風にしたら楽しいんじゃない?とか、こういうホテルにしたらお客様が来てくれるかな、とか。そういう風に思うことのほうが、大変だよなと思うこと以上にあったので、やってみようと思っていたので引き受けたというのはありますね。 今これだけお客様が来てくださって、成功しているのも、私が前向きじゃなかったら、ないと思うので。

と、答えてくださいました。

現在、ホテルで働くスタッフは130人という「ハイアット・リージェンシー 箱根 リゾート&スパ」。
総支配人自らがお客さんの荷物を持ち、あるときはシーツをはぐこともあるんだそうです。

お客様のためにどうすればいいのか、と考えるということを、スタッフに見せたいなと。総支配人を大事に、お客様よりも総支配人のほうに深々とおじぎをするようなホテルには絶対したくない。ここでしか通用しないかもしれないけれど、ここの総支配人像を造ってきましたね。
やっぱりその、密かに、お客さんの見えないところで、私も人事部長もみんなお客さんのために働いている。一丸となって働いていると。お客さんから見れば、それがどんな部署の人か分からないと思うんですけど、そうやって協力して作られた心地よさが、このホテルの心地よさになっていると、お客さんがなんとなく感じてもらえるとしたら、それは嬉しいですね。

あたたかな想いは 空気ににじみ出る。
人と人が力をあわせて作った心地よさが、訪れる人の心を癒していく。
箱根のリゾートホテルには、暖炉の 揺れる炎とともにそんなぬくもりが 満ちていました。