2008/12/19 家庭用浄水器「クリンスイ」の開発物語

今週は家庭用浄水器「クリンスイ」の開発物語。

『水道の蛇口に取り付けて、レバーを切り替えるだけでフィルターを通して 水をろ過する装置、家庭用浄水器「クリンスイ」。
手がけているのは、 繊維メーカー「三菱レイヨン」です。
繊維メーカーが浄水器を作る。そのきっかけは?

当時の社長がメキシコに出張したときに、現地の水でお腹を壊してしまったと。
その時に生水をろ過して、安全に飲める製品を作れないかと。
そういって開発セクションに持ちかけてきたのが開発の始まりです。

当時=1980年代前半、浄水器といえば、活性炭を使ったものがほとんどでした。
そんな 浄水器づくりに 繊維メーカーが乗り出した理由。 それは、繊維のプロならではの素材が「使える」というヨミがあったから。
三菱レイヨンが独自に開発した新しい素材をフィルターとして組み込めないかと考えていたのです。
それが、「中空糸膜」と呼ばれる素材。

中空糸膜フィルターというのは、ストロー状のものの壁面に細かな穴が開いているものなんですけど、これは当社が今から30年前に ポリプロピレン樹脂の繊維を製造する過程で生じた欠陥品が始まりです。
繊維が白化しているので、これは何だろうということで見てみたところ、細かな穴がたくさん開いていたと、でそれを何かに活用できないかということで、フィルターとして使うようになったというのが始まりです。

欠陥品をきっかけに生まれた、「中空糸膜」。
これを世界で初めて組み込んだ携帯用浄水器が発売されたのは、1984年の春。
おいしい水に対する関心も高まっていたことから 注目を集めました。
さらに1989年には、蛇口直結型のタイプを発売。
その手軽さから、浄水器ブームが巻き起ったのです。

80年代から広がりをみせた浄水器マーケット。
三菱レイヨンのスタッフはあるモノに目をつけます。
それは、海外の製品で 水差しの形をしたポット型の浄水器。

「ポット型」というのは、蛇口に取り付けなくてもいいし、持ち運ぶこともできるし、汲んで置いておくだけでろ過ができると。で冷蔵庫に入れておけば、冷やしておくことができるというような簡便性が受けて、今までの浄水器を使っていた人たちとは違う人たちにも受け入れられるような形であったものになります。
最初は「ポット型」というのは、外の製品であって、活性炭だけのものしか無かったので、中空糸膜で雑菌等全部除去できるようにしようということで、中空糸膜をどうにか組み込めないかな、ということで始めました。

外国の製品からアイディアを得て、2003年の3月、「ポット型クリンスイ」の第1号が発売されました。 そしてその後、さらなる使いやすさを求め、「ポット型」は進化していきます。

フィルターを入れることによって、ろ過スピードがかなり遅くなってしまうので、これを適度なろ過スピードにしながらも、15物質とれるスピードにならなければいけない、という、その二つを両立するのが、非常に難しくて、通常のタイプのものですと、それほど影響を受けないことでも、この形になると、小さなことが大きく影響してしまうということがあって、そのあたりがどうなるのかというのが、当時治験がなかったのでとにかくろ過を組み合わせて作ってみて、それでろ過をしてみてどうなるかということを、繰り返し実験しました。
ろ過した回数といいますと、いろんな人がやって多分、数千はいってますね。

1リットルの水を入れてからろ過されるまで、人が待てる目安はおよそ10分。
その時間で水がフィルターを通り、なおかつ除去対象となる15の物質を全て除去しなければならない。
開発者たちは、数千回にも及ぶ実験の末に、このバランスにたどりついたのです。
そしてもうひとつ。最新型のクリンスイにはこんな工夫が・・・

立って使ったり、注いだり、あと座って使ったりいろいろあるので、色んなところを持ちます。
どういう体勢であっても持ちやすいってどういうことかな、ということで、色んな人で試したんですね。その時に色んな手の大きさとかの人もいますし、力がある人とか無い人とかいるんですけど、意外に持ちやすい形ってのは、一つのところに集まってきて、で、そういったところがハンドルの角度だったり、空間の大きさだったりするんですけど。

家庭用浄水器の代表的な存在、「クリンスイ」。
今回取材にご協力いただいた 三菱レイヨンの竹田はつ美さんに開発にかける想い。最後にうかがいました。

水って生きていくために絶対必要なものなので、多分水への要求っていうのはこれから途切れることは無いと思います。
最近食の安全とか色々気になりますけど、安全であるということはもちろん最低限。
その上でさらに「おいしい水」というのができるように、開発を進めていきたいなと思っています。

美味しい水を届ける技術。
日本で 私たちの暮らしを支えてくれるのはもちろん、例えば、途上国での水の供給にも 応用できないでしょうか??
安全な飲み水を手に入れられない人の数は、世界に12億人いるとも言われています。
人と水をつなぐ技術は、人と人をつなぐ技術。
より多くの人に 安全で より美味しい水が届くことを願います。