2008/11/14 星付きレストランを営業する日本人シェフの情熱物語

今週は・・・ 「ミシュランガイド東京2009」の発売を前に、東京とパリで星付きレストランを営業する日本人シェフの情熱物語を お届けします。

今年の9月、東京・銀座に1軒のレストランがオープンしました。「レストラン タテルヨシノ 銀座」。ビルの12階、、、ニューヨークのレストランを意識したという店内は天井が高くモダンな内装で、、、窓から見えるのは銀座の街。今の東京が感じられる空気の中、フランス料理を楽しめるまさにレストラン最前線。 オーナーシェフは、昨年発売された「ミシュラン」の東京版でも星を獲得した吉野建さん。実は、吉野さんが フランス パリに持つお店「ステラマリス」は 本国の「ミシュランガイド」で一つ星。 パリと東京、いずれもで星を持つシェフなのです。 吉野建シェフの情熱物語、まずは、時代をさかのぼり今から29年前、1979年。。。 この年、吉野さんは初めてフランスを訪れます。

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このときは見聞を広めるというか、フランスに行ったことがないので、向こうの本場を見て、旅して、料理を食べる。これが目的だったんですね。修行をする予定はなかったんですね。最初はすぐ帰ってくる予定だったんですが、実際行ってみたら、レベルが違うなと気がついてこれはいかんと。できるなら残って仕事しようと。そう切り替えたのが、向こうに行って3、4日後ですね。

まもなく、パリのサンジェルマン・デプレにあるビストロで職を得た吉野シェフ。 一日300人のお客さんを受け入れるお店で目一杯 忙しい日々が 始まりました。その後、、、、いくつかのお店を回って あっという間に4年半。帰国の日が近づきました。飛行機のチケットも手配完了。荷物を詰めようとしたそのとき、、、

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実はロブションさん宛に手紙を、紹介状は持っていたんですよね。でも恥ずかしいから使わないでトランクの中に入れておいたら、帰る間際に「あれ?手紙があるな」と。それでロブションのところに食べに行って、キッチンに挨拶に行って手紙を見せたら、「だいぶ古いじゃないか」と。もしよかったらお邪魔させてくれませんか?と言ったらいいよいいよと。帰る間際になってからジョエルロブションのお店に行くと、あれ?今まで何していたのかな?というくらい、他のお店とは比較にならないほどでしたね。

「今の自分があるのは、このときの出会いがあったからだ」吉野シェフは そう振り返ります。それは 情熱の炎が 胸の奥に宿った瞬間でした。

フランスで過ごした日々のあと、小田原にフレンチ・レストラン「ステラマリス」をオープンした吉野建シェフ。お店は人気を博し、順風満帆。しかし、パリで シェフの中に宿った情熱の炎がしだいに熱く燃え始めたのです。

人生一回だし、自分の料理を証明するっていったらおかしいけど、日本にいたら証明できない。それはもちろん食文化も違うし、日本にいたら評価してくれる人もいないし。ということで、自分の人生をかけて、フランスに勝負に行くんですよね。

1997年の4月、パリの8区に レストラン「ステラマリス パリ」を開店。「自分が つちってきた料理のすべてを賭ける」そんな想いを込めたレストランでしたが、オープン当初は、思うように客足が伸びませんでした。実績がないため 銀行から融資を受けられず、吉野シェフは苦境に立たされます。春にオープンして、夏が過ぎ、、、このままだと あと数ヶ月持つかどうか。秋が深まるころ、、、シェフは決断しました。

そのとき、僕の得意な料理って肉料理なんだよね、って思い出したんだよね。やはりここで、自分の得意な肉料理、ジビエ料理をつぶれても構わないから、目一杯披露してみようと。ダメだったら帰ればいいからと。誰にもそんな負けないぞっていうのがあるから、とにかく出そうと。オンパレードしましたね。そしたら、反応速かったね。「食べたことのない料理」と言われたり、三ツ星のシェフとか何回も食べにきてね。そこからシュ〜ッとのぼったのかな。

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ここ一番、信じたのは、最も得意なジビエ料理。鴨、シカ、キジ、野うさぎ、、、吉野シェフの作る一皿一皿が街で噂になりました。その年のクリスマスには、ある雑誌の編集長から「来年のミシュランで 星をとるだろうから そのお祝いに」とプレゼントが届きました。メディアでも多く取り上げられ、名誉ある賞も与えられました。 月日は流れ、2006年度、、、「ミシュラン」で 一つ星を獲得。今は、フランスと東京を行き来する日々。

大事なのは、お客さんに喜んでもらって、また行きたいね、と思ってもらうお店であることでしょうね。これが一番大事だと思います。人間の基本にかえった、作り手と食べ手、そのラインで生きるほうが僕は幸せだと思いますね。

パリと東京で レストランを営業する吉野建さん。常に、想いはひとつ、、、「自分の信じる一皿を 思う存分味わってほしい」今日もテーブルに 自信の一皿が運ばれます。