2008/9/19 「エキュート」の誕生物語

今週は・・・駅の中にある商業施設エキナカの代表的存在、「エキュート」の誕生物語。

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JR東日本の駅を1日に利用する人の数は、およそ1600万人。それぞれの人が求めているものは、実に多様です。そして、時代の流れも刻々と変化しています。今の時代の、新しいニーズに応えるべく始まったのが、JRの駅の中に複合商業施設を作ろうというプロジェクト。のちに「エキュート」と名付けられる商業施設です。

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そもそもの考え方としては、「駅を変えたい、駅という空間を変えたい」という想いがありました。それまではどちらかと言えば 駅というのはクイックにご利用いただくというのが駅の中の商業だったと思うんですね。ですが、、、私どもは、通過する駅から集う駅へという風に言っているんですね。単純に電車に乗るためだけにくるのではなく、駅そのものに集っていただきたい。駅が活性することによって、街全体が活性化するというところにつなげていきたいというのがありました。。。

「エキュート」を手がける、株式会社 JR東日本ステーションリテイリングの江越弘一さん、、、「エキュート大宮」の初代の店長をつとめた江越さんいわく、、、「それはまったくゼロからのスタートでした」。まず最初に取り組んだのは、手元にあるデータを立体化すること。

当然ながら駅をご利用されるお客様のデータは持っていました。でも、データは単に数字なんですよね。数字で分かることと分からないことがあって。男女比とか年齢は分かるかもしれませんが、そのお客様がどんな服装をしているのか?どんな持ち物をしているのか?改札を出て右に行かれるのか?左に行かれるのか?乗り換えられるのか?そこのところは24時間はりつきで愚直ですけどね、、、我々は24時間お客様を見ていました。

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プロジェクト・チームは、駅を利用する人々を見つめ続けました。服装は、スーツなのか?カジュアルなのか?バッグを持っているのか、リュックをしょっているのか?紙袋は、デパートのものなのか、セレクトショップのものなのか?実際に目の前を歩く人を見ることで、コンセプトを固めていったのです。

JR東日本の駅の中、、、改札を出る前にある複合商業施設「エキュート」。駅の中という特殊な場所ゆえに、出店するお店にも いくつかの特徴が求められました。

駅の中で商売をやっていくには、デイリー性。毎日使っていただけるということは欠かせないと思っていました。それから、鉄道をご利用されるお客様のためのものですので、スピード。スピーディにというのは欠かせないと思っていたんですけども、、、もう一度、お客様が駅の中で求められているニーズというのは何なのかを考え直したところ、デイリー、スピーディにプラスして、高品質と高感度というところがくっつけば。お客様のニーズに応えられるんじゃないかなと思ったんですね。

駅に求められる、「日常性」「スピード」に加えて、高いクオリティを持ったもの。すべてを兼ね備えたお店を見つけるのは至難の業でした。例えば、デパートに出店しているお店の場合、「高品質なものは出せるが、スピードという面で問題がある」あるいは、、、毎日 駅を利用する乗降客が飽きないように、定番商品だけの展開ではいけない。エキュートの1号店「エキュート大宮」への出店交渉はスムーズには進みませんでした。

駅=商売となかなか結びつかない。模型を作って、お取り引き様に「こういう風に変えていきたいんです」と説明したり。一番早いのは、こういうものなんです、とお見せできたらいいんですけど、それを作ろうとしていたんですよね。駅をこういう風に変えていきたいんだという最終的には、熱意だけだったかもしれませんね。

プロジェクトがスタートして、およそ3年後。2005年の年明けから、エキュート大宮が開店する3月まで、初代の店長、江越弘一さんは、めまぐるしいスピードで 準備作業をこなしました。お店に立つキャストの面接、指導から搬入手順の確認、商品のラインナップについての相談。あっという間にその日はやってきました。2005年3月5日、午前10時。

大声はりあげて、開店〜と言って。大宮は端から端まで長いので、走り回りながら、開店、開店と。それと同時にシャッターがあいて、その瞬間、お客様が入ってきて、中からは「いらっしゃませ」というキャストの声が聞こえてきて。鳥肌がたちましたね。

駅の中にある商業施設を表す言葉、「エキナカ」。その言葉が可能性をより大きく広げた瞬間でした。