2008/9/12 公共セキュリティの今

今週のテーマは「公共セキュリティの今」。世界の枠組みが大きく変わった2001年9月11日から7年。アメリカではPatriot Dayといういい方で、カレンダーなどにも記されるようになりましたが、テロとの戦いという見えない敵に公共の場でのセキュリティも大きく変わりました。今日も世界とコネクトしていきます。

●NYでテレビディレクターをされている中村英雄さん

グランドセントラルのような終着駅や、地下鉄構内、空港、バスターミナルなどには迷彩服に身を包んだ州兵が、マシンガン片手に警備にあたっている。いざという時に犯人を即、射殺できるように、彼らは常に指を引き金に掛けている。これが、在住18年なる未だに銃に慣れない僕なんかには、とってもイヤな感じです。何か、おふざけでもして通行人がパニックでも起こそうものなら、有無を言わさず射殺です。「公共の場での冗談は通じない」これがテロ以降のNYの新しい常識となりました。とにかく、テロは差し引いても年間1000件の殺人事件が発生する街ですので、昼夜構わず公共の場では、変なことはできません。飲酒なんてもってのほか。抱擁、接吻、喫煙、放尿、放屁、立ち食い、嘔吐、唾吐 一切ご法度。そのような素行不良を監視する隠しカメラが、全市内に10000台ぐらい配備されています。おかげで、最近は軽犯罪や交通違反も映像記録を使って検挙率が上がっているとか。
その他、企業ビルへの入館はセキュリティチェックが厳しいです。ヤンキースタジアムのような象徴性が高く人の集まりやすい場所も厳重警備。小さなポーチ以外球場内持ち込み禁止です。そのあおりで、周辺のスポーツバーが一時預かり用ロッカー業を始め、これが大繁盛。ビルのセキュリティは、よくハリウッド映画に出てくる通り、ぼけたヤツが多く、融通も利かないので、しょっちゅうテナントと揉み合いしていますが、一度顔を覚えられれば、あとはナイスガイ。
テロ以来、知らない人を警戒する風潮は強いですね。エレベーターや廊下でも「知らない人を見たら、すぐ通報...」とまではいきませんが、アメリカ人は「すぐ声をかけ」ます。大抵は下らないジョーク。しかし相手がジョークの才能のあるテロリストだったら、難なく侵入されてしまう弱点がありますが、、、


●ロンドンでコーディネータをされている竹沢祐子さん

駅に必ずポリスか警備が立っていること、CCTV(closed-circuit TV有線テレビ)カメラがすごく増えてきているという噂(公式には発表がないので、正確な数は不明です)、バスが現金では乗れなくなっていてびっくりし。これもセキュリティ対策の関係と聞いたことがありますが、真相は不明。
先日パスポートの更新で日本大使館に行ったところ、大使館に入るのに、空港の手荷物検査に使うX線の機械が導入されていた。
近くに美術館があるので覗いてみましたが、ここでも特にセキュリティが厳しくなったという印象はなし。
ロンドンではCCTVカメラの他に、車のナンバープレート読み取り機もたくさん設置してあって、ちょっとした交通違反(Uターン禁止とか)でも、すぐに違反切符が郵送されてくるので驚く。この機械は、もともとは市内に入る際に払う混雑税を、払った車か払ってない車かを見分けるために、市内に導入する道路にはすべて設置したもの。今ではセキュリティー対策として市内にも沢山つけられているよう。

●ジャカルタで現地の日系企業にお勤めの規矩田せいじさん

インドネシアでは、2002年10月にバリ島で、2003年8月にはジャカルタのアメリカ系ホテルで、2004年9月にはジャカルタのオーストラリア大使館、と毎年連続して爆弾テロが起きている。いずれも小型自動車に爆弾を積んで標的に突っ込むいわゆる“自爆テロ”。これらのテロを教訓に、外資系ホテルやショッピングモール等外国人の集まる場所では、入り口で車に爆弾を積んでいないかのチェックするようになった。2005年10月に起きたバリ島での爆弾テロでは、車を使わず犯人は自ら爆弾を詰め込んだザックを背負って“標的”へと向かいテロを遂行。これ以降、外資系ホテルやショッピングモールではそれまでの車のチェックに加え、空港にあるような金属探知機を入り口に設置し、客の手荷物一つ一つまで調べるようになった。そんなこともあって、日本からの出張者のためにホテルを手配する時はアメリカ系は使わないことにしている。ちなみに我々が手配するホテルには車のチェックや金属探知機の他に、麻薬犬ならぬ、爆弾の火薬を嗅ぎ分ける“火薬犬”まで導入。
それでもファーストフード店や小さいお店などは金属探知機を置いていないので、こういう場所には行かないようにしている。
私の住むアパートでは、住人の私でさえも、毎日帰宅するときには車のトランクや室内を調べる徹底ぶり。当初は、不便だな、と思うこともあったけれど、テロを防ぐ、テロから身を守る、という目的のためには仕方のないことと、最近では割り切っているので、特に不便は感じない。
むしろ、インドネシアでのこのような生活に慣れてしまうと、たまに出張とかで日本に帰った時に、山手線や地下鉄に乗ったり、デパートに行ったりすると、インドネシアでは当たり前のこういったチェックが全くないので、逆に怖く感じる。

実は過去にインドネシアで起きたテロはすべて断食の前に起きています。イスラム教徒にとって断食は神聖な修行ですので、犯人グループも一応はこの時期は避け、その前に犯行に及ぶ、と聞いています。で、今年の断食は9月1日から30日まで。まさに今断食の真っ最中。ですから私も今年は断食前の7月8月はちょっとピリピリしていましたが、今はちょっとホッとしているというのが正直なところです。