2008/5/30 電球型蛍光灯の開発者たちの情熱物語

今週は・・・電球型蛍光灯の開発者たちの情熱物語。

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013t_08053001.jpg 東京、有楽町。家電量販店のビックカメラ、照明売り場には、さまざまな明かりが並んでいます。そのなかで最近 大きな注目を集めているのが「電球型蛍光灯」。 見た目には、普通の電球。しかし、近づいて目を凝らせば、その違いに気づきます。電球の内部にうっすらと見えるのは、らせん型の何か。実は、細長い蛍光灯がらせんの形となって中に入っているのです。今回、取材にうかがったのは、電球型蛍光灯のなかでも随一の性能を誇る「パルックボール プレミア」の開発チーム。大阪府の高槻市にある松下電器産業株式会社 照明社で出迎えてくださったのは、設計部門の中心、高橋暁良さん 33歳。


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もともと、同じようなスパイラル形状、ソフトクリームのような形のものは以前から発売していまして、その技術をいかしてもっとよいもの、環境にもいいものを作ろうと思ったのがきっかけで。プレミアの以前のものだと、消費電力が12ワットでした。それでも業界では随一だったんですが、さらにお客さんが驚くようなものを作ろう、ということで開発が始まりました。

013t_08053005.jpg 電球型の蛍光灯、、、その歴史の幕開けは、1980年代にまでさかのぼります。最初に登場したのは、長さが16センチ、重さ450グラム、という電球と呼ぶには 大きすぎて重すぎるものでした。このとき、使われていたのは、ふたつに折り曲げた蛍光灯。長い年月をかけ、試行錯誤が繰り返されます。やがて、中に入れる蛍光灯は、U字型のものを連結させたスタイルに進化します。そして時は流れ、2000年代。ついに「蛍光灯をスパイラルにする」というアイディアが生まれました。しかし、これを実現するには、気が遠くなるほどの困難が待ち受けていたのです。細長い蛍光灯を電球の中に入れた「電球型蛍光灯」。従来のものに比べ飛躍的に効率をアップさせた商品が2004年に発売されました。「パルックボール スパイラル」。電球の中には、らせんの形に曲げられたガラス管が入っていたのです。

小さく巻く、というのが、ガラスが言うことを聞いてくれないんですよ。大きくキュッと曲げようと思ったら、高い温度でグッと曲げてやらないと整形できない、という難しさがありまして。何回かガラスと格闘しながら。私とかが、炉の前に立って、回る装置の前にたって、ガラス管を炉に入れて、それを取り出して、バーナーであぶっている金型の上にのせて、足で踏んで巻くと。ガラスは700度‾800度にもなっていますので、非常に熱い中やっていたのが最初の状況でしたね。

最初は手作業でガラスを曲げるタイミングをはかり、それを機械化できるように、落とし込む。開発グループの岩瀬友輔さんをはじめとするチームが何本ものガラス管を割り、失敗を重ねた末、スパイラル状のガラス管が完成しました。これが、「パルックボール スパイラル」。しかし、技術者の情熱は、さらに高性能な商品を目指していたのです。開発チームが挑んだのは、ひとつの法則でした。「より長い蛍光灯を使うほうが、より効率がよくなる」。ある結論を導かれます。「もっと細いガラス管を使おう」ただ、、、細いガラス管を使うには、より高い技術が必要でした。

蛍光灯の寿命を決めているものが、電極の先に、エミッターといいまして放電を助ける物質を塗っているんです。その電極を中に入れないといけないんですけど、今までよりさらに細くなっていますので、電極も小さくしないとだめなんですよ。だけど、小さくすると寿命に必要な放電物質の量が減ってしまう、という問題が出てきます。

放電を助ける物質で、蛍光灯の寿命をにぎる物質「エミッター」。この量を減らしてはいけない。しかし、従来の設計のままでは細いガラス管には、これまでより少ない量のエミッターしか入れられない。そこで検討されたのが、エミッターを塗る場所である「コイル」の形でした。このときまで使用されていたコイルは3重コイルとよばれるもので、うずをまいている形でした。これをさらにねじって、4重コイルなるものを作ったのです。このことによって放電を助けるエミッターを 以前より多く使えたのです。さらに、、、電球の内部に組み込まれた「電子回路」にも改良が加えられ、オンオフが激しい場所で使っても、消耗を遅らせることができました。 迎えた2006年の10月、「パルックボール プレミア」が店頭に並びました。寿命はなんと1万時間。電気代も大幅にカットできる 省エネ商品誕生の瞬間。その裏側にあったのは、技術者たちの熱い想いでした。

今までにないものが出せた、というのが我々技術者としては嬉しかったです。開発していくにあたって、今までにあるものを作ることはないんで、今までにあるものの先を作らないとだめ。はじめから「できない」とは考えずに、「どうやったらできるやろう」と。世の中にないものを作るには、人がやっていないことをやる。絶対にできるんや、という気持ちを頭のなかにおいて、いろんな方向から見直す。

常に前を向く。できないとは考えない。世の中にないものを作るのは、人の情熱なのです。