こんばんは。今夜は Mac ファンにはおなじみ IT ジャーナリストの林 信行(はやし のぶゆき)さんをお迎えして3日目ですが、今日は昨日からのお話の続きをもう少し詳しく伺ってみましょう…。
昨日までのお話からは、Apple の製品によって、市場のトレンドがそのまま移っていってしまうような印象すらありますが、それにしても Apple はなぜ、こうして次々とこのような画期的な商品を出す事ができるのでしょうか?
Apple のすごさとは、本質に切り込んでいくところだと思います、と林さん。
日本のメーカーさんが何かを作ろうとされても、「ここまではキャリアさんの領分で、ウチはここまでしかできない…」というような、もしかしてそれは実際には存在しないのかもしれない無言の了解のようなものが、製品をいびつにしてしまっていることがあるのでは、と仰います。
そこを Apple は、理想の製品に突き進んでいく途中で、その線引きを軽々と飛び越えてしまう力を持っているのだそうです。
そして面白いのは、例えば「iPhone」。
日本でもアメリカでも多少の違いはあれども、メーカーさんが端末をお作りになったら、それを売って下さいとキャリアさんにお願いするものなのだとか。ですから当然、立場的にもキャリアさんのほうが上なのです。
それはどういうことかというと…メーカーさんも「この製品ならあのキャリアさんで売ってもらえるかな…」というような、顧客よりもキャリアさんを向いた物作りをしてしまいがちになってしまうという危険があるということなのだそうです。
ところが…ですよ、今回のこの「iPhone」のキャリアさんは「AT&T」なのだそうですが、その普通とは逆にその「AT&T」から Apple に対して1人当たり基本料金のうちの幾らかが支払われているという、逆転現象が起こっているのだとか!
更に Apple 製品は、この「iPhone」に限った事ではなく、実は数年前にも音楽業界でも同じような逆転現象を引き起こしていたというのです…と言えばもうお判りですね。
実は当時、インターネット上での音楽の違法コピーがアメリカでも問題になっていたのだとか、そこで Apple が、音楽を違法コピーするよりも、購入したほうが楽しくなるような仕組みを作ろうということで提供されたのが、その逆転現象を引き起こすことになった「iTunes Store」だったわけです。
アルバムではなくて、一曲ずつが安価で購入でき、更に「この曲を買った方はこんな曲も買っています」というリストを出されると、あ、これもいいな…なんてついつい買い過ぎてしまう楽しさ、それに加えて、iPod でそれを簡単に持ち歩ける手軽さ…。
アメリカでは今や、3番目に売れている音楽販売ルートにまで成長しているのだとか。
実はこの「iTunes Store」、Apple 自身はほとんど儲けは出ていないとか。つまり iPod の販売数を伸ばすための外堀りなわけです。
こうして Apple の製品は、ただ「かっこいい」だけでも終わらずに、一つ一つの影響力が考えられないくらい大きいというところが、一番すごい所なんですね、と林さんは仰います。
それを象徴するような出来事で、林さんが「Macworld Expo」で毎年面白いと思われているのは、そこに訪れるジャーナリストの面々。
まず '90 年代初めは Mac 関連雑誌の方々のみ。そして、'90 年代半ばには Apple が潰れそうだと経済誌の方々が。それからしばらくして iPod が発売されると、今度は音楽関係の方々。そして iPod mini が出る頃にはファッション関係の方々まで。
そして今回は、テレコム系の方々もそれに加わり、毎年やって来られる業界の方々の層がどんどん広がりを見せているのだそうです。
それだけ生活のいろいろな分野に Apple が切り込んでいる、ということなんですね、と林さん。
それはジョブズ氏がすごいのはもちろん、その周りを固める世界的に優秀な人材が Apple にあってこそ。
そして林さん曰く、その能力を存分に引き出すジョブズ氏の能力というのがまた、Apple が成功した秘訣なのだとか…その詳しい内容は、林さんの著書「スティーブ・ジョブズ 偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡」と昨日もご紹介しました「iPhone ショック」をご覧下さい!
林さん、興味深いお話を3日間、ありがとうございます。またもうひとつ、Mac と Apple のことが好きになってしまいました…。