ああ、もう今日は緊張のあまり目眩が。
なぜって、今夜のゲストは噺家の立川志らく(たてかわ しらく)さんだからです。高座ではわりあいと間近に拝見することがあっても、こんな風に向かい合ってお話できる機会が、こんな私にもあるなんて。
だってもし私が何か聞いたとしたら、答えて下さるんですよ!何を言ったって、とりあえず聞いて下さるんですよ!目の前で!(当たり前ですけど。)
でも私ときたら、「緊張してしまいました…」とか、そんなことしか言えないんです。もう今夜ほど自分はバカだなと思った事は…まあ、32年の人生で幾度もありますが。
まあいいんですそんなこと、とにかく今夜のゲスト、立川志らくさんのお話をしますね。
立川志らくさんと言えば、古典落語はもちろん、映画を題材にした落語「シネマ落語」に執筆活動、おまけにお芝居の執筆・脚本までと、現在幅広い活動をされていらっしゃる噺家さんです。
もともとご両親が落語をお好きだった影響もあって、小さな頃から落語に慣れ親しんでこられた志らくさん、でも大学生くらいまでは「落語家になりたい」というのがかっこわるいんじゃないかと思っていたので、そのかわりに「映画監督になりたい」と仰っていたとか。か、かわいい…。
(でもね、初恋の女性は落語の中の登場人物なんですよね!志らくさんの著書「らくご小僧」に書いてありました。)
だから、ずうっと落語は趣味としてお好きだったけれども、落語家になろうとは思われなかったんですって。
ところが、志らくさん大学生の時に、金原亭馬生さんの亡くなる10日前の高座をご覧になって、その気迫にいたく感動され、やっぱり落語家になろう!ぜひこの人に弟子になろう!と心に決めたところで馬生さんは亡くなられてしまう。
さて、落語家になる決心だけがとり残されてしまった志らくさん、今度はたまたま入った寄席で、立川談志さんに出会います。
落語なんかろくすっぽやらずに、馬生さんの思い出話をえんえんとやっている談志さんに、志らくさんは「この人は落語に愛情が深い人なんだな」とピンときたわけです。
さて、日芸の落語研究会に所属しておられた志らくさん、先輩には放送作家の高田文夫さんがいらしたそうで、この高田さんという方が(ご存知の方も多いと思いますが)立川藤志楼(たてかわ とうしろう)を名乗る、れっきとした真打ち。
「俺を笑わせたら落語家にしてやる!」と高田さんに言われた、志らくさんをはじめ落研のみなさん、我先にとばかり頑張りましたが、結局高田さんを笑わせることができたのは志らくさんだけだったとか。
そうして、談志師匠のところに連れていってもらった志らくさん、立川流に晴れて入門。
ところが…。
見習いの前座さんは当然お給料なんてありません。
その上、住み込みでもなければバイトもダメ(!)。なのに、立川流には上納金制度というのがあって、お弟子さんは月々1万円ずつ納めなければなりません。
で、収入はゼロなのに、師匠のところに通うための電車賃はどうしたってかかるわけです。
そして師匠に呼ばれたら、どんなことがあってもスグ駆けつけなくてはならない。
師匠に迷惑をかけなければ何をやってもいいから、どうにか食いつないでいくことが、後々の味になってくる、という方針だったそうです。
なんというスパルタ!永田農法も真っ青です。
志らくさんも、本当にお金がない中でどうやって食いつながれたのか…記憶にないと仰っていましたが、本当のところは、もう今となっては思い出したくもないようなことがたくさんあったのでは…なんて勘ぐったりして。
ちょうどその頃、談志さんは落語協会を飛び出して立川流を立ち上げたばかりだったし、談志さん自身ももともと厳しい方というのもあって、今よりずっと大変だったんですね。
そんな中でも、2年半で二つ目に昇進、10年後には真打ち。
それも、噺を50席覚えたら二つ目にしてあげるよ、と言われて1年で50席覚えられたのだとか。ということは、1週間に1席は覚えないと間に合わないわけですね…?うーん、熱が出そうです。
でも噺を覚えただけじゃ、真打ちにはなれないんです。
見習いの間にすることは、いかに師匠を快適にするか。そんな中から師匠の技を吸収し、最後は師匠とおんなじ価値観になれないと、真打ちにはなれない。それを立川流では、「価値観を共有できるのが、子弟である。」という言い方をするのだそうです。
年がら年中、師匠の一挙手一投足に目を凝らし、高座に耳を澄まし、日常でも師匠は何を読んで何を聴いて、何が好きで何を考えて…よっぽど好きだって言っても、もうこれはそういう次元じゃあない。
そりゃもう、自分って何だとかかんだとか自分探しだとか、自分のことを四の五の言っていたら真打ちには到底なれないわけですね。
今では11人のお弟子さんを抱える志らくさんは、さすがにバイト禁止!とまでは言えないそうですが…。
自分では到底追いつけない分、こういう胸がすくような苦労話を聞くのが大好物なのは私だけじゃあないと思いますが…みなさんは、いかがでしょう?
明日も、志らくさんに引き続きお話をお伺いします。お楽しみに!