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1日1人、虐待で子どもが亡くなっている…大人ができることは?

1日1人、虐待で子どもが亡くなっている…大人ができることは?

J-WAVEで放送中の番組『JAM THE WORLD』(ナビゲーター:グローバー)のワンコーナー「UP CLOSE」。6月14日(木)のオンエアでは、木曜日のニュース・スーパーバイザー、堀 潤が登場。病気の子どもたちを預かる保育園の運営をはじめ、子どもの健やかな生育環境を整えるためにさまざまな活動を行っている認定NPO法人「フローレンス」の代表理事・駒崎弘樹さんとともに、児童虐待問題について考えました。


■親の権利が強いことが問題?

東京目黒区に住む5歳の女の子が、両親からの虐待の末、今年3月に亡くなっていたことが、6月6日(水)に発覚しました。引っ越してくる前に住んでいた香川県では、児童相談所によって一時保護をされており、目黒区の児童相談所に虐待案件として引き継ぎがあったにも関わらず、なぜ女の子の命を守ることができなかったのでしょうか。

そもそも私たちは、虐待が疑われる場面に遭遇したときに、どのようなアクションを起こすべきなのでしょう。まず、虐待から子どもたちを守るために、「親権」について考えなくてはいけません。

駒崎:「親権」というのは“親の権利”なんですけれども、日本だと明治以降、子どもというのはある種、親の所有物だったんんです。特に父親の所有物という権利構造がありました。それが近年になってようやく、親の権利であると同時に義務であるというふうに、ちょっとずつ子どもの人権を大切にするように変わってきています。しかし、いまだに親の権利が強いんですね。

そのため、「親権を止める」というのは非常にハードルが高く、子どもに酷いことをする親がいても、児童相談所ではなかなか踏み込めません。

2016年のデータでは、日本での親権停止は80件超のところ、ドイツでは1万2000件以上あり、日本が圧倒的に親権停止件数が少ないことうかがえます。これを改善するには、民法を変えることです。また、児童相談所の職員たちが裁判所と連携しやすいガイドラインを作ることなど、さまざまな手法が必要になると、駒崎さんは言います。


■里親と児童相談所の数が足りない

日本の児童相談所が、問題のある親から子どもを引き離しづらい理由として、引き離したあとにどこに行かせるかという問題があります。欧米では、里親のもとに行かせることができるので安心して引き離せますが、日本では里親の数がとても少ないため、そう簡単にはいきません。

駒崎:里親がいなかったらどうするか。「じゃあ家庭に戻すか」みたいなことになってしまう。そして、子どもの命が失われてしまうっていうことがあるので、里親を増やすっていうのは、本当に重要なことなんです。

緊急性がある場合は、児童相談所が持っている一時保護所に入ることもできるのですが、その数はとても少ないそう。さらに、一時保護所が県にひとつかふたつほどしかない状況で、もとの学校に通えなくなってしまう可能性もあり、子どもにとって大きな負担になると、駒崎さんは続けました。

東京では、人口1300万人に対して、児童相談所は11カ所しかありません。

駒崎:ひとつの児童相談所で100万人以上をみるということになり、明らかに足りない構造になってしまっているんですね。なので、いま東京都が持っている児童相談所の仕組みを、区や市に下ろしていくということをやらなくてはいけません。

児童相談所の職員ひとりに対し、20人ほどの児童で手いっぱいになると言われているところ、東京ではひとりあたり120人も抱えることになってしまっています。


■虐待が疑わしい場合は「189」番に通告を

そして、警察と児童相談所の連携については、目黒区の事件を受けて、埼玉県で児童相談所が把握している虐待案件はすべて埼玉県警と情報共有する方針を明らかにしました。「これは有効」と駒崎さん。

駒崎:警察との情報共有は、高知、茨城、愛知ではすでに実施されていて、埼玉が4県目。そして、岐阜もやろうと言っているので、目黒区の事件を受けて、都道府県も動いています。

虐待は犯罪なので、本来ならば警察が知っておくべきことですが、児童虐待に関しては、児童相談所が情報をコントロールし、必要なときに警察と共有するという仕組みになっています。

駒崎:たとえば、パトロールに行って、叫び声が聞こえる。行ってみたら「夫婦喧嘩です」って言われて、「そうなんですね」って言って帰っちゃう。でも、情報が共有されていたら、「もしかしたら、そこには虐待されている子どもがいたかもしれない」、「救え出せたかもしれない」と、こういうことが起きちゃうんですね。なので、児童相談所と警察の情報共有は、すごく重要なことなんですけど、今はできてないんです。

小児科学会の推計では、虐待が原因で亡くなる子どもは、毎年350人ほどと言われており、1日に約1人の子どもが亡くなっているという状況です。これは、殺人事件で殺される人数よりも多く、非常に深刻な問題です。

駒崎:今回、目黒区の女の子がたまたま手紙を残してくれたから、我々はその残酷さや深刻さを知ることができましたが、そうでなければ「また虐待か」と、スルーしてしまっていたかもしれません。

では、私たちは「虐待かもしれない」と思ったとき、何をすればいいのでしょうか?

駒崎:児童相談所の全国共通ダイヤル「189」番に通告すると、児童相談所に受け止められて、ケースとして保存されます。「ちょっと疑わしい」と思ったものでもかけていただけると、リスクの芽を摘むことができますので、ぜひお願いしたいと思います。

通告する際には子どもの基本情報を伝え、匿名での通告も可能です。情報が確かではなくても、児童相談所が手がかりを知るという意味でも通告したほうがいいので、「自信がなくても通告していただきたいと思います」と駒崎さんは話しました。

児童虐待を減らすために、民法の改正や仕組みの改善が望まれますが、そのためには、私たちが一斉に声を上げることが必要になります。目黒区の悲劇を繰り返さないためにも、深く考えなければいけない問題ではないでしょうか。

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【番組情報】
番組名:『JAM THE WORLD』
放送日時:月・火・水・木曜 19時-21時
オフィシャルサイト:https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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