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サラーム海上が「ワールドミュージック界の古舘伊知郎」である理由

サラーム海上が「ワールドミュージック界の古舘伊知郎」である理由

【連載】やきそばかおるのEar!Ear!Ear!(vol.28)

「邪悪なお兄さん」「地獄のスナフキン」「不発の核弾頭」と聞いてピンとくる人は、間違いなく30代以上でしょう。「ボキャブラ天国」(フジテレビ)で、海砂利水魚(現・くりいむしちゅー)、金谷ヒデユキさん、爆笑問題につけられていた異名です。中でも、くりいむしちゅーは今でも「邪悪なお兄さん」というイメージだし、その人の特徴を分かりやすくしてくれるという点で、異名って大事だなと思います。

実は最近、「異名・ニックネーム辞典」(杉村喜光編著・三省堂刊)という本が発売され、暇を見つけてはペラペラめくっています。580ページにわたり、あらゆる人・物に付けられた異名が紹介されています。広く知られているところでいえば、舞の海の「技のデパート」ですが、同様に多彩な技をもつ旭鷲山は「技のデパートモンゴル支店」と呼ばれたそうです(これは知らなかった…)。しかも、旭鷲山がそのように呼ばれるようになってから、舞の海は「技のデパート本店」と呼ばれるようにもなったとか。

「異名・ニックネーム辞典」ではモーツァルト、徳川家康など、歴史上の人物に付けられた異名が多く紹介されている中、品川祐さんに付けられた「おしゃべりクソ野郎」も掲載されています。ちなみに、モーツァルトといえばキダ・タローさんが「浪花のモーツアルト 」と呼ばれているのは有名ですが(朝日放送の松本修氏が付けたそうです)、ヨーゼフ・マルティン・クラウスという音楽家は「スウェーデンのモーツァルト」と呼ばれているとか。もしもキダ・タローさんの方がモーツァルトより先に生まれていたら、モーツァルトは「オーストリアのキダ・タロー」と呼ばれていたかもしれないし、クラウスは「スゥエーデンのキダ・タロー」と呼ばれていたかもしれません。

異名といえば、ワールドミュージック専門の音楽評論家、サラーム海上(うながみ)さんを紹介しないわけにはいきません。「サラーム」とはアラビア語で「平和」という意味です。サラームさんは中東料理の研究家でもあり、著書「おいしい中東 オリエントグルメ旅」(双葉社)なども発売しています。

そもそも、サラームさんが初めて中東を訪れたのは、大学3年の時だったそうです。当時、ワールドミュージック好きの間で注目されていた北アフリカの歌謡曲「ライ」を聴きたいがために、モロッコを訪れたとか。英語がよく分からなかったため、ライが生演奏されている場所にたどり着くことはできなかったものの、旅の途中、飛行機で知り合ったモロッコ人の男性宅に泊まらせてもらったそうです。いきなり出会ったばかりの人の家に泊めてもらうなんて、なかなかのチャレンジャーです。しかも、その時が初めての海外旅行だったとか。男性の母親が作ってくれたモロッコ料理「クスクス」が大変美味しかったほか、街で食べた料理も美味しかったそうで、完全に胃袋を掴まれてしまったサラームさんは、それ以来、頻繁に中東に足を運ぶようになったそうです。

大学卒業後、サラームさんは、音楽ソフト販売、フランス留学、2年半の放浪、インディーズ系レコード会社、クラブ運営会社を経て「よろず風物ライター」として「TVブロス」「ソトコト」などの雑誌で執筆。J-WAVEでは「ORIENTAL MUSIC SHOW」(金曜 26時)のナビゲーターも務めています。番組では中東の音楽や街の様子などをサラームさんが楽しく紹介しているのですが、中でも私が注目しているのが、番組でアーティストを紹介する時の、サラームさん流の異名のつけ方です。例えば、「分かりやすく言えば、この方はレバノンの倖田來未です!」「イスラエルを代表するワールドミュージックのプロデューサーで、まさにイスラエルの坂本龍一!」と、非常に分かりやすいのです。中でも、私が聴いていて思わず「分かりやすい!」と思ったものを紹介すると…

■“レバノンの倖田來未”ことミリアム・ファリス サラームさんによると、ミリアム・ファリスは美人セクシーアイドルで、2004年にデビュー以来、ダンサブルな楽曲でヒット曲を連発。2014年には、レバノン系アメリカ人の富豪と結婚し、多くの夢みる男性たちを泣かせた…ということです。実は倖田來未さんとはデビューの年こそ違えど、倖田さんも2003年にリリースした「real Emotion」以降、大ヒットを飛ばすようになるので、同じような道をたどってきたことになります。倖田さんが結婚を発表した時も、泣いた男性が多かったのでは。

■“トルコの及川光博”ことタルカン 1990年初頭に登場し、中性的な容姿が人気のアイドル歌手。全編英語詞のアルバムをリリースするなど、トルコのアイドルの常識を超えて、ヨーロッパなどでも活躍…とのこと。及川光博さんも海外でどんどんライブを…という訳ではないようですが、それでも、ファンクラブの皆さんと海外旅行に行っているそうです(なんて、良い人!)。

■“トルコのきゃりーぱみゅぱみゅ”ことエジェ・セチキン 25歳のアイドル。セクシーな衣装とピンク色の髪の毛で、背は小さく、個性的なルックス…とのこと。きゃりーぱみゅぱみゅさんは現在24歳。同じ世代ですが、エジェ・セチキンは言いやすい名前なのでホッとしますね。

このような感じで、サラームさんは、毎回という訳ではありませんが、中東のアーティストを日本のアーティストに当てはめて紹介しています。もしもサラームさんに異名をつけるとすると、異名作りのうまさからして、「ワールドミュージック界の古舘伊知郎」といったところでしょうか。(古舘伊知郎風に)「お〜〜〜〜〜っと! 確かに異名をつけるのはうまいけど、サラームさんは喋り方がおっとりしているから、雰囲気はベラベラ喋る古舘伊知郎には似てないんじゃないか」と、まるで中東のミックス・スパイス「バハラット」のように、ピリリとした意見を言われてしまいそうな気配が漂ってまいりましたので、私はこのあたりで失礼致します。

ORIENTAL MUSIC SHOW https://www.j-wave.co.jp/original/dc3/

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