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平田オリザ 「これからは志を果たしに故郷に帰る時代」

平田オリザ 「これからは志を果たしに故郷に帰る時代」

J-WAVE平日20時からの番組「JAM THE WORLD」(月曜ナビゲーター:津田大介)のワンコーナー「BREAKTHROUGH!」。5月16日のオンエアでは、劇作家の平田オリザさんをゲストにお迎えしました。

今年4月に発売された書著『下り坂をそろそろと下る』(講談社)が話題を呼んでいます。この本の中で平田さんは、今後の日本と日本人のあり方について論考していますが、タイトルにある「下り坂をそろそろと下る」とはどんな意味なのでしょうか?

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津田:下り坂の先輩ってヨーロッパじゃないですか。イギリスとかスペインとか、ヨーロッパ諸国は支配したりされたり、いろいろと下り坂の経験則を歴史的に蓄積してきていると思うのですが、日本は下り坂になったのは今がはじめてですよね。初体験の事象だからこそ、いろいろこの国は対応できていないのでは?という指摘があります。

平田:日本は島国で、本当に幸運な国だし、私自身も本当に暮らしやすい素晴らしい国だと思っているのですが、戦争に負けた経験がほとんどない、珍しい国なんですね。これだけ人口的にも大きな国なのに。歴史上、はっきり負けたのは2回しかない。

津田:そうですね。あと言語的に侵食されていない。

平田:さらに東シナ海という大きな海があるので、明日すぐに難民が押し寄せるような国でもない。1億人の人口があって、こんなに安全な国はほかにないんです。これはやはり天の恵みというか“地の利”なわけですよね。しかしながら、どうやってゆっくり衰退していくか――という話で、もちろんヨーロッパモデルから学べるところと、日本が独自に考えなければいけないところと両方あります。

津田:今後、目指すべき改善策としては、やはり“地方分権”なんでしょうか。僕も興味があってよく取材するから共感する一方で、地方の問題って人材がいないことなんです。

平田:有名になった島根県隠岐諸島の「隠岐島前高校」は、卒業式に唱歌「ふるさと」を歌うのですが、「こころざしをはたして いつの日にか帰らん」という歌詞をこの高校だけは、「こころざしをはたしに いつの日にか帰らん」と歌うんです。これってすごくかっこいいんです。東京や大阪に1度出ていくのはいい。でもそこで必要な技術や情報や人脈を得たら、志を果たしに故郷に帰ってくる。

これは明治以降の中央集権とはまったく逆の方向。だから、そういう教育に舵が切れるか…なのですが、一つ問題なのが日本のほとんどの高校は県立高校なんです。県立高校だから、たとえば岡山県の県立高校は岡山大学に何人いれるかが一番のステイタスなんです。さらには大阪大学、京都大学、東京大学と、要するに全部進学が上り列車ばっかり。これを変えないといけない。県立高校であっても、地元や生まれた地区の人材になる生徒を育てていかなければいけないんです。一旦は外に出たとしても。

今までは、国のため、県のためという教育だったわけですが、そうじゃなくて自分のふるさとのための教育をこれから増やしていった方がいいわけです。

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さらに平田さんは、20歳ぐらいまでに身につけた能力で、残りの人生を生き抜けるような時代ではなくなったとも指摘。だから、今の学生には“就職する能力”よりも“転職する能力”の方が必要とも語っていました。

「まことに小さな国が、衰退期を迎えようとしている」という一文からはじまる平田オリザさんの書著が気になった方は、ぜひ読んでみてください♪

【関連サイト】
「JAM THE WORLD」オフィシャルサイト
https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

ロボット進化で、人間は不要になるのか?(2016年05月07日)
https://www.j-wave.co.jp/blog/news/2016/05/post-1534.html

『漱石のことば』の著者・姜尚中さん 「漱石の時代と現代は似ている」(2016年04月13日)
https://www.j-wave.co.jp/blog/news/2016/04/100.html

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