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本当に大丈夫?「刑事司法改革関連法案」3つの不安

本当に大丈夫?「刑事司法改革関連法案」3つの不安

J-WAVE平日夜の番組「JAM THE WORLD」(金曜ナビゲーター:青木理)のワンコーナー「BREAKTHROUGH!」。4月29日のオンエアでは、6月までの国会で成立しそうな「刑事司法改革関連法案」を掘り下げました。

青木理はコーナー冒頭で「参議院の法務委員会で『刑事司法改革関連法』が審議されています。あまりマスメディアが注目していないので、ご存じない方も多いと思いますが、僕はこの法案で日本社会のあり様をかなり変えてしまうんじゃないかと懸念しています」と語ったこの法案。主な柱は以下3つ。

・密室での取り調べを可視化するため、一部の取り調べを録音録画される
・司法取引制度が入る
・局限されていた通信傍受法が、ほぼ全面解禁される


この点について、日本弁護士連合会事務総長の経験もある、弁護士の海渡雄一さんにお話を伺いました。

海渡さんによると、“取り調べの録音録画”は、実際に適用されるのは全取り調べの3パーセント程であり、全過程だとは限らないため、被疑者を守ることに直接つながらず、自白した瞬間が撮られていなくても、自白の後の様子が記録されていれば自白の証拠になってしまい、冤罪(えんざい)を作り出す危惧があるとのこと。

そして“司法取引が可能になる”ことの問題点は、弁護士が立ち会うことが条件ですが、その弁護士は「証言をして罪を軽くしたい」と思う人物の弁護士のため、弁護士が証言を勧めて検察官の片棒を担ぐことになってしまう、さらには罪を軽くするために、ありもしない証言をして冤罪事件が増えてしまう…という点だそう。

最後に、青木が「個人的に一番注目している論点」という“盗聴法・通信傍受法”。現行の盗聴法と新しいものの違いを海渡さんに聞いてみました。

「今までは盗聴が可能な犯罪は薬物、銃器、集団密航、組織的殺人の4つだけだった。そして通信会社の事務所に行き、通信業者の社員が最初から最後まで立ち会うことが必要だった。そのため件数が少なかったが、今回提案されているのは、犯罪の対象が爆発的に増える。放火、殺人、傷害、逮捕監禁、誘拐、強盗、窃盗、詐欺、恐喝。この中で注目してほしいのは“傷害”“窃盗”“詐欺”。この3つは犯罪の中で最も多いため、なんでもやれるようになる。常時立会いの制度も無くなるため、通信会社は求められた通信を全部納受して、暗号をかけて警察に電送する、という制度になり、警察の施設でやっていいことになる」(海渡さん)

これまでは傍受していても、関係ない会話であればその場で切らなければいけなかったそうですが、すべてのデータが送られるため、その決まりも実質無くなってしまうことになるそう。

「こういう話をすると『悪いことをしてないから大丈夫』と言う人がたくさんいるが、これについてはどう思いますか?」と青木が尋ねると、「この国の中で行なわれている通信の大部分は警察に聞かれても何の害もない他愛もないような通信だろうが、こういう制度があることによって社会が変えられてしまう部分がある。たとえば政府や、大きな企業の中で違法なことが行なわれている時、そのことを外部に伝えようと内部告発者が電話をかけても『もしかしたら相手に電話が盗聴されているかも』と思うとかけられなくなる。社会的に明らかにしないといけない通報、通信ができなくなってしまう。そこが一番怖いと思っていて、これは表現の自由に関する問題だと思うんですよね」と海渡さん。

今、採決されるかどうかの最後の段階に来ているこの法案。「今、反対の声が少ない。こういう番組で取り上げていただいたのはとってもありがたいです。もっと報道機関で取り上げてほしいなと本当に思っています」と語る海渡さん。青木も「もちろん必要だと言う人達の立場もあるんです。それでも、このまま通しちゃって大丈夫なのかなと、ますます不安になりました」と胸中を明かしました。

【関連サイト】
「JAM THE WORLD」オフィシャルサイト
https://www.j-wave.co.jp/original/jamtheworld/

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