歌舞伎ソムリエ・おくだ健太郎です。
9月の新橋演舞場の歌舞伎公演は、
初代中村吉右衛門にちなむ秀山祭。
夜の部にも、初代にとてもゆかりの深い
「俊寛」という演目が出ます。
平清盛を倒す反乱に失敗して、
鬼界ヶ島という孤島に流された、
高僧・俊寛。。。平家物語にも登場する人物ですが、
この一節は、いまも学校の教科書にも出てくるのでしょうか。
(ぼくのころは習いました。国語だったはず)
この原典で描かれているのは、
反乱の同士たちは恩赦で帰してもらえるのに、
自分だけが島に残される俊寛の絶望した姿です。
反乱の首謀者ゆえ、罪が重かったんですね。
これを、かの近松門左衛門が、俊寛は
「自分の意志で、島に一人残った」という幕切れに脚色したのが、
このお芝居です。
なぜ俊寛はそうしたのか。。。
詳しくは実際の舞台をご覧いただきましょう。
そこには、原典には登場しないヒロイン、
すなわちこの島の海女・千鳥(ちどり)の存在が、大きくかかわってまいります。
俊寛も、はじめは、本土に帰りたくってたまらないんです。
京に残してきた愛妻が、なつかしくて仕方ない。
だから、役人を乗せた船が、
沖合からだんだん浜辺に近づいてくるときなどは、狂喜乱舞します。
それが、横暴な役人のふるまいやら何やら、
さまざまな現実に直面することで、
「島に残る」という結末へと変わっていく。
この感情の起伏・うねりは、とにかく演じていて「すごい」そうです。
人間としてのリアル感が、きわめて強い。
当代の吉右衛門さんは、以前、このことを
「演じれば演じるほど、俊寛が、
初代の自画像・初代自身に思えてくる」と、しみじみと
教育テレビの歌舞伎の入門番組で語ってくださいました。
舞台をつとめることが、おのずと、
初代と当代、ふたりの吉右衛門の対話になっている。
舞台を見ることで私たちは、おのずと、その対話に耳を澄ます。
「俊寛」は、そういう芝居です。
ディス・イズ・秀山祭。必見。
9/2〜26の公演。夜の部は16時45分開演です。