歌舞伎ソムリエのおくだ健太郎です。
新橋演舞場では『二月大歌舞伎』。いよいよ中村勘太郎改め六代目中村勘九郎さんの襲名披露公演が始まります。今回の公演、山手線の駅などにもポスターが貼られていますが、怪しげな頭巾を被った目つきの鋭い修験者みたいな人が、ぶっとい数珠をくわえて睨みつけている写真をご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。これがお昼の部に上演される「土蜘蛛」の写真です。
このお芝居は、怪しげなお坊さんに化けていた蜘蛛のお化けが、あるお殿様をやっつけに来る舞踊劇です。お殿様が病に伏せっているところへ僧がやってきて、霊験あらたかな祈祷でその病を治して差し上げようと申し出ます。そしていきなりの申し出に家臣が訝っていると、僧はこれまでにどれだけ厳しい修行に耐えてきたかをアピールするんです。
こんな山を越えて、崖をよじ登り、冷たい滝にうたれ、吹雪の中を耐え……そのアピールが踊りになっているのがこの舞踊劇の見どころで、勘九郎さんが踊ります。しかし壁に映った影で土蜘蛛は正体を見破られてしまい、最後は舞台満面に真っ白な糸をまき散らして去っていきます。そんなオカルトっぽいお話ではありますが、能が原作の格調高い名作です。
また夜の部には襲名披露公演に欠かせない「口上」や、こちらも踊りの名品中の名品「春興鏡獅子」があります。昼の部と夜の部、どちらも見どころがあるので、どちらを見るかは悩むところです。でもどちらでも勘九郎さんならではのシャープで快活なお芝居を堪能していただけると思います。