2014年03月15日

BOOK STAND 太田和彦さん登場!

WEB本の雑誌とのコラボ企画『BOOK STAND』。
毎回、著名人がお気に入り一冊から印象的な一行を紹介してくれます。

今週はグラフィックデザイナーの太田和彦さんが登場。
太田和彦_01.jpg

資生堂時代は写真家の十文字美信さんと組んだ前衛的な広告で注目を浴び、
独立後は椎名誠監督の映画の美術監督を務めるなど、広告の枠を越えた仕事でも
高い評価を得ている巨匠です。また酒好きが高じて、居酒屋関連の著書も多数あり、
旅チャンネルやBSの番組での居酒屋めぐりもたいへんな人気です。

第一回目の今夜は、太田さんをアウトドアの世界へ誘った名著から
文章のお手本にもされているという一節を伺います。


これが男らしい文章


野田知佑さんの「日本の川を旅する」。
日本のカヌーイストの第一人者でもある野田さんの最初の本です。
ノンフィクション大賞も受賞された素晴らしい1冊。
これは、野田さんが日本中の川をカヌーで下った記録。
目次にあるように川の数は14本。それまで競技用カヌーがほとんどで
ツーリングカヌーは、日本でやる人はいなく知られない存在だったが
野田さんが始めて今では大人気のスタイル。
日本だけでなく世界の川を目指して出かける人もいるほどです。
いわば、それの先駆けとなった本。
川をカヌーで下るということは、こんなに素晴らしいことだと
知らしめた不朽の名著です。

書き出しの一行は


「テントの外で夜通し鳥が鳴いた。」

これはアウトドアをやっている人なら誰でも分かると思いますが
テントの中で1人で眠ったら自然と外の世界に耳を傾ける。
鳥の声、川の音、風の音。
そういう空気感がこの一行ですごく通じてくる。

 テントの外で夜通し鳥が鳴いた。
 屈斜路湖畔の第一夜。北海道の夏は午前3時には東の空が明るくなる。
 焚き火を起こし、熱いコーヒーを啜った。一面の濃霧。
 七月だが朝夕はセーターにジャンパーを着込むほど寒い。
 八時頃、雲が晴れて青空がのぞいた。

野田さんは、カヌーイストの第一人者であり
イギリス人のような本当の紳士、ジェントルマンなのに冒険家
おおらかで、とても尊敬できる人物。
中でも文章が素晴らしく上手い!
その文章の特徴は、男らしい。スパン、スパン、スパン、ときっていく。
文章は文末が大事なんだけど全部「あいうえお」の「あ」で終わったり
「う」で終わったり、「え」で終わったり。
そういう所がとても行き届いている。リズミカルで余計な修飾語がない。
これを読んでから野田さんの本が出るたび追いかけていくのだけれど
本当にすべて上手い。それからユーモアが少しある。
飾ったところはなにもないし、本当に男らしい文章っていうのは
こういうものだなと思って一生懸命真似しているんだけどなかなか
できないですね。

BOOK BAR staff| 23:36 | カテゴリー:BOOK STAND


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