2009年06月30日

浅草六区

アサクサロックという場所があることを知ったのは、
就職してからではなかろうか。
学生時代に東京見物する金銭的余裕はなかったし、
浅草寺が特にありがたいお寺だとも思っていなかったはずである。
多分、ただ「読め」と言われたら「あさくさでら」と答えていた。

仕事を始め、割と早い時点で、
いろいろ事情がありまして、浅草に出没することになりました。
雷門、立派じゃないですか。
仲見世、買う物はないけど、楽しい。
浅草寺、「せんそうじ」ですから。
お線香の煙を全身に擦り付けるのが大好き。
浅草寺から六区へ抜ける屋台の並ぶゴチャゴチャした通りも大変好ましい。

かつての浅草六区の賑わいを写真で見ると
イランの改革派のデモに匹敵するほどである。
さほど広くもない通りの両側には映画館、芝居小屋、演芸場、ストリップ劇場が
軒を並べ、客は空いている小屋に入るくらいしか選択肢がないように見える。
それほどの場所だったのだ。
30年近く前の六区はかつての華やかさには到底及ばないが、
まだまだ、活気があった。
六区は庶民の町ながら、
私のような田舎者にはどことなくよそよそしいイメージがあり、
ちょっとフランス座に寄って行くかとか、
そんな気軽な場所ではなかった。
多分、渥美清、ビートたけし、更には井上ひさしを
生み出した場所という伝説が重かったのだと思う。

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今はもうフランス座はストリップをやめてしまい、
残るストリップ劇場はロック座しかなくなった。
しかも、表示はROCKZAである。
一度入ってみたいのだが、こちらは綺麗に改装されすぎていて、
どうもその気になれない。

映画館もかつての歌舞伎町以上に集中していたようだが、
現在は封切館がなくなってしまった。
しかし、数軒残っている小屋はかつての面影を濃厚に残しており、
掛けている映画も心を震わせてくれるものばかりである。
たまにしか入らないが、今どきどこにもない3本立てである。
一日楽しめる。

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かつての浅草演芸場の写真を見たことがないので
しかとは申し上げられないが、
多少手は入れられているはずだが、こちらもほとんど昔のままではなかろうか、
妙な感じのトイレがあったりして、素敵である。
演目も落語からマジックまでグダグダに混ぜてあるので飽きない。
昼の部は11時40分から16時30分、
夜の部は16時40分から21時まで。
原則入れ替え制ではないので、
居たけりゃ11時40分から21時までお楽しみください。

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夜は通りの裏に大衆酒場が並んでいるので、
そちらもお勧めであるが、
私は小さな料理屋が並んでいる食通街へ行って、
夏はすっぽん、冬はあんこう鍋を食べるのが恒例である。
申し訳ないが、店の名前は教えられない。
予約を取るのがますます大変になる。

浅草、ずいぶん変わっちゃったけど、まだ持ちこたえている。
嫌なことを言うようだが、もっと変わってしまうような気がしてならない。
せっかく東京に居るんだから、是非浅草で一日遊んでみてください。
肩の力抜けますよ。

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 08:29 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年06月29日

九州ラーメンとひとくくりにするな

先週の放送では、北方謙三の小説の話をしていたのに、
いつの間にか食い物の話に変わっていた。
てっきり私のせいだと思っていたのだが、
よーく考えてみると「水炊きは食えなかった。くやしい」、
「熊本では馬刺しを食べなきゃ」と話を先導していたのは
杏ちゃんだったはずである。
私は合いの手を入れていたくらいだった。
杏ちゃん、仕事の場所は食い物で選んじゃならんぞ。

東京では九州ラーメンはすべてとんこつで、
どこで頼んでも同じようなものが出てくると思われている節があるが、
これこそ東京の地方文化軽視の代表的な例である。
東京生まれの人間が宮崎のラーメン、
博多ラーメン(同じ福岡でも場所により特徴が異なる)、
熊本ラーメン、鹿児島ラーメン、佐賀、長崎、大分のラーメンの違いを
言い当てられるようになって初めて地方と中央の対立がなくなるのである。
もっと知事さんたちはそのあたりに力を注いで欲しいところである。
食文化ほどその土地の名刺代わりになるものはない。

さて、私に書庫には多数のいわゆるラーメン本が並んでいる。
どうしても東京中心のものが多いのだが、
一冊、お宝扱いされている本がある。
「麺食いランキング 九州」がそれである。
この本はメチャクチャといえばメチャクチャで、
県ごとにラーメン、うどん、そばについてはそれぞれの県のタウン誌が
1000人〜1500人にアンケート調査を実施し、
10位までランキングをつけている。
ランク外に落ちたものも載せているのだが、
私の見たところ必ずしも納得が行くものではない。
落とされた店は悔しかろう。
それでも、ラーメン、うどん、そばの他、特別に
ちゃんぽんコーナー、スパゲッティコーナー、
どこにも分類不可能な麺コーナーがあったりで、
かなり網羅的な作りになっており、
九州の麺を求めて一年放浪の旅の出ようという人にはうってつけの本である。
私もいつか、と考えている。

せっかくなんで、ラーメンのみ各県の一位を紹介しておこう。
福岡(福岡市)一蘭 すでに東京に何軒もありますね。
  (久留米市)大龍ラーメン
  (北九州市)唐そば 渋谷に支店があります。
佐賀 一休軒
長崎 一休軒 奇しくも佐賀、長崎の一位は名前が同じだが、関係ないらしい。
大分 なべさんラーメン
熊本 黒亭
宮崎 風来軒
鹿児島 くろいわラーメン

見ているだけで身体がよじれてくるほど、切ない本である。
しかし、発行されたのが平成10年。
プランニング秀巧社から出ている。
麺食い人はどんな手段を使っても探し出すことをお勧めする。

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 09:45 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年06月27日

6.27 OA チャットモンチー BUMP OF CHICKEN  CKB and more

1 染まるよ / チャットモンチー  

SHO-YA、プリプリ、少年ナイフ、ZONEなど、
いつの時代もガールズバンドは存在するが、
いまの時代を代表するのはこの3人娘。
日に日に向上していく演奏力と深みを増す音楽性。
上京して3年が経ったいまも徳島弁が抜けない素朴さも魅力だ。
個人的には日本音楽史上最強のガールズバンド!


2 花の名 / BUMP OF CHICKEN 

今年デビュー10周年を迎えた日本を代表するバンド。
この曲は「ALWAYS 続・三丁目の夕日」の主題歌としてもお馴染み。


3 SAHARA / JUSTIN ADAMS & JULDEH CAMARA

イギリスのライ・クーダーの異名を持つジャスティンは、
現在のワールドミュージックを語る上で欠かせない重要人物。
一緒に組んだジュルデーは西アフリカの国ガンビア出身で、一弦の民族楽器
リティを操るシンガー。
最近聴いたなかでは最もファンキーでブルージーなアルバム『ウソ偽りなし』より。
これ、聞くとぶっとびますよ!


4 LOVE OF MINE / STUFF

70年代後半に大ブレイクしたNY音楽シーンの手練れ集団スタッフの
珍しいボーカルナンバー。
温かみのある歌はベースが本業のゴードン・エドワース。
楽器の達人は歌心もあるのね。
それにしてもリチャード・ティーのピアノといい、
エリック・ゲイルのギターといい、
ワンフレーズで奏者がわかってしまう音の存在感は圧倒的だ。


5  YOU KNOW MY NAME / THE BEATLES

「LET IT BE」のシングル盤のB面に収録されていた曲。
解散を目前にしたビートルズ作品としては珍しくジョンとポールが楽しそうに
共演している遊び心あふれるナンバー。


6 宇宙興業 / CRAZY KEN BAND 

落語にはよく与太者の話が出てきますが、
与太者の曲を歌わせたら天下一品というのが横山剣さん。
いつもなら横須賀・横浜エリアを舞台に与太っているのだが、
この曲では妄想が暴走して宇宙にまで飛び出してしまった。

BOOK BAR staff| 14:46 | カテゴリー:SONG LIST

2009年06月27日

落語の国からのぞいてみれば

大倉眞一郎セレクト

    rakugo.jpg

著者:堀井憲一郎 講談社新書


当代随一の落語マニアであり、統計マニアでもある著者が
落語を通して江戸時代の人間たちの生活や感性を
生き生きとあぶりだした一冊。

BOOK BAR staff| 14:35 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年06月27日

望郷の道

杏セレクト

    bokyou-1.jpgbokyo-2.jpg

著者:北方謙三  幻冬舎


物語の始まりは九州・佐賀の賭場。
主人公の男女の生き様からなにを学ぶのか?
人生について問いかける愛と感動のストーリー。

BOOK BAR staff| 14:10 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年06月25日

特異点

「特異点」というタイトルで村上春樹の小説に引っ掛けて
何か書こうと思ったのだが、
念のために「特異点」を広辞苑で引いてみると、
どうも数学用語のようで何のことだかよくわからない。
高校の最初の数学の授業でサイン、コサイン、タンジェントを
聞いて以来、綺麗さっぱり数学とは縁を切ったので、
こういう時に難儀する。

それでも、特異点に新たな解釈で勝手に意味を持たせて
がむしゃらに突っ込んでみよう。
そんなに難しく考えないでいただきたい。
「特別な場所」くらいのことしか考えていない。
中沢新一が書いた「アースダイバー」の中の
アース・ダイヴィング・ポイントともまた違う。
どこか別の世界の入り口、
あるいは別の世界を垣間見ることの出来るような場所を想定している。
わりと実存的に生きている私であるが、
ある場所へ行くと、クラッと来て別世界と接したような「錯覚」に落ちることが
50年以上生きていれば何度かある。
それはネパール、カトマンズにあるスワヤンブナートの寺の一角であったり、
ハワイの海辺の木の下であったり、
伊勢神宮の木漏れ日が当たっている結界であったり、
下関の立ち入り禁止になっていた防空壕跡であったり、
バリのウブドゥの森の中であったりする。
そこから宇宙船に乗ってどこかへ行ったわけではないが、
背筋が寒くなる、といっても恐いわけではなく、
スーと何かが脊髄に沿って流れて行ったような感覚である。

村上春樹の小説ではそんな特別な場所から
別の世界へ移動しているわけではないが、
(少なくとも私は首都高池尻大橋周辺でそんな感覚を覚えたことはない)
巧妙に仕組まれた「特異点」は存在している。
あれは私のように実際に感じたことをうまく使っているのか、
計算しつくして、その「ねじれ」感を作り出しているのか、
どちらなのだろう。

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あまりにも観光客が押し寄せる世俗的な場所で申し訳ないが、
私は光がギリギリ刺す、タイのパタヤ沖のラン島で
この溶けるような風景の中に浮かんでいる船はどこに行くのだろうと、
熱中症寸前になるまで見入っていたことがある。
あの舟はやはりパタヤに戻ったのだろうか。

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 11:10 | カテゴリー:

2009年06月24日

村上春樹の1980年代

先週の「1Q84 」特集の企画が持ち上がってからというもの、
BOOK BARチームの話題はもっぱら村上春樹になってしまった。
とはいうものの、実際に「1Q84 」を完読したのは杏ちゃんと大倉さんだけで、
スタッフでは唯一人、一番若いAD嬢がBOOK2に突入したところ。

合評を企てた張本人のぼくは読みそびれているというか、
買いそびれてしまい、なんだか不完全燃焼だ。

そんなわけで、「1Q84」が手元に届く前に、
ちょいと他の春樹作品でも読もうかと手にしたのが、
’THE SCRAP`」という80年代に書かれたコラム集です。

この本のメインとなっているのは、
1982年〜86年にスポーツ専門誌「NUMBER」に連載されたコラムで、
当時のアメリカの雑誌や新聞記事をスクラップするかのように、
村上春樹フィルターを通して紹介しているというもの。
数ある著書のなかで特筆するような類の本ではないのだが、
ぼくはなぜだかこの本が好きで繰り返し読んでしまう。

新書サイズのハードカバーという手軽さに、和田誠の装丁
というのも気に入っている理由のひとつかもしれない。
小さく軽いので、何気なくカバンの中に入れて、
移動中の地下鉄車内や人待ちの時間に
偶然開いたところを数ページ読んでみたりするのに丁度よい。
誰かに貸したままになっていたり、引っ越しの際に紛失したりで、
おそらく3〜4回は買い直しているはずだ。

それにしても世界の村上春樹が連載コラムを書いているなんて、
売行きの減少化が止まらない現在の雑誌の編集者にしてみたら、
夢のような快挙なんだろうな。
こんなこと書くと怒られそうだが、
当時の「NUMBER」はいまより数段おもしろかった。
本誌の連動企画として様々なジャンルのスポーツ名勝負を
揃えたビデオ・シリーズも出していて、
特にミドル級ボクシングの世紀の名試合「ハグラーvsレナード」は
見る度に涙ぐんでしまうほど素晴らしかったのに、
なぜDVD化されないんだろう?
権利関係???

話がそれたけど80年代というと春樹氏は30代。
ET、マイケル・ジャクソン、スターウォーズ、
ゴーストバスターズなどの時代を象徴するアイコンが登場するのだが、
これが氏の目を通すとまた印象が少し変っていく。
文学の世界ではジョン・アーヴィング、スティーヴン・キング、
リチャード・ブローティガンについて書いている。

なかでもぼくが好きなのはロス五輪開催中に書いている日記。
ちなみにこの頃は千葉県の冷房もテレビもない部屋で
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を
執筆していたらしいのだが、その間に氏が観た映画、読んだ小説、
飲んだ酒、編集者とのやりとり、そして日々の細々した雑用などが
わかって実に興味深い。

それにこの日記から16年後の2000年には、
現地まで赴いてシドニー五輪観戦記を書くことを考えると、
ロス五輪への無関心ぶりにもちょっと感動する。

久しぶりにページを開いてみたけど、
やっぱりぼくはこの本が好きみたいだ。


(番組スタッフ JD)

BOOK BAR staff| 13:09 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年06月24日

小説の読み方

先週の番組は正確には合評ではなかった。
合評をするには読み込みが足りないという気もしたのも事実だが、
1Q84のどの部分に触れても、これから読む人たちの気をそいでしまうか、
重要な内容の一片を話してしまうことになるのが嫌だったのである。
杏ちゃんと「どこまで話せるか難しいね」と悩みながら、
地雷を避けながらそろそろと進んでいった。

しかし、村上春樹がすごいのか、
杏ちゃんと私の連携プレーが見事だったのか、
皆さんからの反応には驚いた。
大変な数のメール。
それもぎっしりとご自身の感想を書き込んでくださっていました。
買ったきりなかなか時間がなくて読めない人、
BOOK1が手に入らなくて読みたくても読めない人も
きっと多いと思うが、早々に読み終わり、
メールまで送ってくださる方があれほどいるとは思いませんでした。
本当にありがとうございました。
ちなみに昨日、打ち合わせで会う人間から家を出る直前に電話がかかってきて
「大倉さん、1Q84持ってる?」
って番組聴けよ、お前。
「BOOK1が手に入らないんで、貸してよ。BOOK2も」
古い付き合いの人間なので重い本を抱えて行った。
帰りに「何がこんなに重いんだろう」とバッグを覗いて、
「あっ、1Q84だった」
とのたまっていた。

それにしてもだ、この本の売り上げもさることながら、
マスコミの取り上げ方もなかなかすごい。
テレビではまだ読んでいないキャスターが、
「ここまでは話してもいいそうです」といいながら、
地雷をバンバン踏んでいる。
司会者もコメンテイターも「へー」って顔で聞いて、
「それで面白いの?」とか質問している。
決して全員に読めと言っているわけではないが、
紹介するのならもう少しデリケートにやってくれないかしら。
新聞や雑誌で紹介される分には、
読んでない人間は避けて通れるが、
いきなり「青豆は実は...」とかラジオやテレビでやられると、
何すんだよ、とどつきたくなる人も必ずいると思うのだが。
「読まずにわかる1Q84」みたいなのもあったが、
それでいいのなら、別に文句もないが、「じゃ、知らなきゃいいじゃん」
という気がする私が間違っているのかしら?

そんなわけで繰り返しになるが、
私たちはネタばれを巧妙に避けながら、話をした。
物足りなかった方もいると思うが、
お察しいただけたらと思います。
で、村上春樹について、また過去の作品について話をしたりしたのであるが、
このあたりもなかなか私としては難しい。
内容を紹介することが嫌なのではなく、
私は小説は出版された時点で作家の手から読者の手に渡り、
その解釈はあらゆる意味で読者に移譲されるべきだと考えているからである。
作者が何を言っても後の祭り。
黙っていて欲しくなる。
そう言いながら、好きな作家の本はほとんど読むという習慣のついている私は、
やはり、作家論にまで及びたくなってしまう。
読者が作家について語るのは自由だと思うのだが、
なんか余計なことまで言いたくなるのが困るんですね。

確かあれは遠藤周作だったと思うが、
国語のテストに彼の小説が使われていて
「下線部分について作者はどんな思いで書いたのでしょう」
という問題があり、先生からどれが正解でしょうか、
と聞かれ、「全然わからなかった」、と何かのエッセイに書いていた。
「勝手に解釈して」が正しい答えだと私は思った。

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 07:51 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年06月20日

6.20 OA 村上春樹の作品に登場する音楽たち

今回紹介した6曲はすべて村上春樹作品に登場するナンバー。
どの曲がどの作品に登場したのか?
すべてわかる人はかなり熱心なハルキストと言えるでしょう。
ちなみに今回は杏と大倉のトークのBGMも春樹作品から
ピックアップしたJAZZナンバーで統一してみました。


1 CALIFORNIA GIRLS / BEACH BOYS

村上春樹はビーチボーイズの名盤『ペットサウンズ』を題材にした
ノンフィクション本の翻訳を手掛けているほか、
2002年にリリースされたベスト盤『カリフォルニア・フィーリン』では
ライナーノーツを寄稿している。


2 EVERYTHING IS IN ITS RIGHT PLACE / RADIOHEAD 

レディオヘッドのトム・ヨークも村上春樹の読者。
2003年に『Hail To The Thief』をリリースした際のこと、
日本の音楽誌のインタビューに答え、
「ねじまき鳥クロニクル」の世界観に影響を受けたことを明らかにしている。


3 バクダン・ジュース  / スガシカオ 

スガシカオは村上春樹が音楽論集「意味がなければスイングしない」で
唯一とりあげた日本人アーティストである。
スガも村上春樹ファンであることを認めており、相思相愛の仲。


4 HERE COMES THE SUN / THE BEATLES

村上春樹最大のヒット作となった「ノルウェイの森」は、
文庫版を合わせると日本国内で900万部近く売れているそうです。
ビートルズも驚く数字。
「32歳のデイトリッパー」という短編もありましたね。


5  LADY JANE / THE ROLLING STONES

村上春樹は1949年生まれだから、もっとも感受性豊かな10代のときに
60年代文化のシャワーを浴びたことになる。
ストーンズの曲ではほかに「ブラウン・シュガー」なども登場します。


6 WONDERFUL WORLD / SAM COOKE 

とにかく数多くの音楽が村上春樹ワールドに登場するんですが、
ジャンル別だと、JAZZ、ロック、クラシックの順で多いのでは?
そんな中、こんなソウルの名曲がさらっと物語を彩るから、
これがまた効果的なんですよね。

BOOK BAR staff| 14:45 | カテゴリー:SONG LIST

2009年06月20日

1Q84

杏&大倉眞一郎セレクト

1q84-1.jpg1q84-2.jpg

著者:村上春樹   新潮社


番組初の試み!
2人が発売1週間で100万部をうりあげた話題の本を
合評いたします。

BOOK BAR staff| 13:30 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年06月19日

ボツ写真

「ボツ」。
最悪の響き。
冗談じゃなくて、この言葉を聞いただけで背筋が凍る。
先週の放送でも同じようなことを言ってしまった。
トラウマを抱える人間は同じことを何度も話す。

昔、某飲料メーカーの担当営業をやっていた時に、
得意先の制作の責任者が就任して最初にやったことが
直径10センチのボツマークの判子を作ったことだった。
「ダメな原稿には、これ押すんですよ。バーンと」
と気持ちよさそうに話していたが、
私には心折れるお話であった。

広告会社をやっているといろんなボツが出る。
理由がさっぱりわからないもの、
明らかにこちらがミスを犯しているもの、
ただの意地の張り合いになり、お蔵入りしてしまうもの。
どんなケースにしてもボツは辛い。
ボツになる前に皆さんはよーくクライアント様と話し合ったくださいね。
ひとつボツになると2歳は寿命が縮まるので、
私にはもうあまり長い時間残されていない。
そういう人間の言うことは聞いておくように。

放送業界には「ダメだし」はあっても「ボツ」はないので嬉しい。

でも、原稿にはある。
原稿で揉め始めると、引けなくなってしまうことがあり、
その場合、泥沼に落ち込む。
そんなこと本当は一度だけなのだが、
10年前にある雑誌で抜き差しならないことになったことがある。
一番、残しておかないといけないところを削れとか言ってくるんだから、
プロの物書きでなくても、簡単には
「はい、そうですか」
とは言えない。
「大倉さんはいったい何が書きたいんですか!」
「オメーは何を書かせたいんだよ!」
てなことになる。
恐らく私が悪いのではないかと思うが、
具体的に書かせたいことがあるんなら、
自分で書きゃいいだろうに。
昔のことです。
今はもうない。
もうないで欲しい。

このブログは私が至らないことを書いたときだけ、
気持ちよく指摘してくれるので、
「バーカ」「バーカはお前」みたいな、
小学生の言い合いになったことはない。
写真も99.9%は自分のものなので、
選ぶのに大変な労力をかけるが、
他人からボツをくらうことはない。

私の「漂漂」(ふわふわ)という本は、
編集の方が文章については見てくださったのだが、
写真のセレクトはほとんどアートディレクターと二人でやった。
載せた写真が80数枚だったのだが、
私がラフセレクトをして300枚くらいにしておいた。
そこから削るのが苦しい。
私としては全部載せたいのだが、物理的に無理だし、
アートディレクターはそんな私に頓着なく、
「これはないね。大倉さん、いいよね」
とどんどん落としていくので、
こっそり後で落とされたものを戻したりしていたが、
結局、載せないことになる。
「伝えたい」と「伝わる」は違うのである。
最終的には売れはしなかったものの、
好きな人には好かれる本になった。
写真のセレクトが大きかったと思う。

ボツのない世界に行ってみたいが、
そこは赤ん坊の世界。
全能感だけを持った、何も出来ない一人だけが宙に浮いた世界である。
それが面白くないから、人間は摩擦を楽しんでいるのである。

「漂漂」で落とした写真を2枚だけ掲載させてくださいね。

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ミャンマーの猫。昼間は人間も動物も寝ている。

0619okura-1.jpg

ロンドン、コヴェント・ガーデンの芸人。
コヴェント・ガーデンはちょっとお金のある人のマーケット。
カムデン・マーケットはどちらかというとお金がない人向け。

ようやく日の目を見せてやれました。

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 02:32 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年06月18日

1Q84 を読み比べ!!!

今週は杏ちゃんと大倉さんが、
社会現象になりつつある話題の本、
村上春樹の最新刊「1Q84 」を読み比べいたします。

合評は番組初の試み!
いったい2人がどのように村上ワールドを論じるのか?
どうぞお楽しみに!

そして今週も先週に引き続き、
番組をお聞きのリスナー抽選で3名さまに
AMAZONのギフト券5000円分を差し上げます。

プレゼント希望の方は、
番組内で発表されるキーワードを書き添えて
応募してください。
翌週月曜到着分までを有効とさせていただきます。


(番組スタッフ)

BOOK BAR staff| 11:07 | カテゴリー:おしらせ

2009年06月18日

愛を読むひと

この映画がアカデミーの5部門でノミネートされてから、
少しずつ日本で話題になり始めたが、
主演女優がケイト・ウィンスレットだということを聞いてから、
内容も全然わからなかったのに、
ずいぶん前に読んだ「朗読者」の
映画化されたものなのではないかと直感した。
本当ですよ。
いい勘してるでしょ。

ベルンハルト・シュリンクの「朗読者」は2000年に邦訳されている。
すごく売れたような気がするが実際の数字は知らない。
気になってすぐに読んだのだが、
その時の女性主人公の印象と
ケイト・ウィンスレットがぴったり重なった。

映画は小説を忠実に再現している。
本人も話しているようだが、
ケイト・ウィンスレットがもっと若かったら、
失敗作になっていただろう。
私は「タイタニック」でうんざりして、
ケイト・ウィンスレットの映画は見る気がしなかった。
いい役者になっている節はあったのだが、
やはり第一印象は大事である。
しかし、この役を他の誰が、と考えても全く思いつかない。
いい具合に歳をとった彼女だから、私も納得がいったのであろう。
俺って生意気ですね。
いくら人気があるからといって、
二コール・キッドマン、ジュリア・ロバーツじゃ話にならん。

原作者もずっと彼女しかないと思っていたらしいから、
最近はいろんな国の人と話さえしなければ気が合うことがわかった。

実に巧妙に、ナチスの犯罪をどう裁くかということが、
すべての人間、我々自身の問題であることを問いかけている。
「愛」もあるんですけどね。
もっと根源的なことをこの映画は提起している。

本の読後感と同じ余韻が残る映画であった。
本のほうも是非読んでみてください。

映画は19日金曜日に公開。
最近は日本でも金曜封切りの映画が増えてきた。
イギリスでは映画の封切りは常に金曜である。
金曜の仕事終わりから週末が始まっているという感覚ですね。
本当のことを言うとイギリス人、
夏は金曜の午後からいなくなっちゃうんですが。

『愛を読むひと』web site

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 10:25 | カテゴリー:映画部

2009年06月17日

おと な り

思わせぶりなタイトルが嫌だった。
そう思った人も多いと思うのであえて申し上げたが、
この映画、傑作である。

人と触れ合うことはたやすく見えて、
かなりの技を必要とする。
これは「今がそういう時代なんだ」というようなことが言われるが、
実ははるか昔から私たちは同じ事で悩み続けている。
人間が生まれてから他人と妥協して共存すること、
もう少し進めば愛し合うこと、
その中で自分がやりたいと思うことを見つけ出すこと
(あるいは自分がやりたいという幻想の欲望を作り出すこと)、
また、それを実行に移す無闇な勇気は、
物語の中では、なじみのあるもので、
大方の場合、他人には余計なお世話で
説教をしたくなったりするが、自分を振り返れば、
人にあれこれ言えるほどできていない。

この映画は最初、わざと粒子を荒らした撮影方法、
音を大事にしているからといって、
いくらなんでも現実的ではない設定が気になってしまったのだが、
それが実にうまく後半効果を上げてくる。
音も、絵も、ストーリーも、出演者も、とても静かである。
ただ、水面にさざ波が立つように進行していく。
泣いたり、笑ったり、悩んだりすることはないが、
心地良い波音を聞いているようである。

岡田准一はあんなに口数が少ないのに、
何故、役にぴったりと思わせる演技が出来るんだろう。
今度聞いといてくださいね。

麻生久美子は「インスタント沼」に続き、名演である。
全然違う役どころなのだが、どちらも普通にやっている感じでとても不思議。

その他の出演者の配置、距離感の保ち方も絶妙である。
この手の映画は思わせぶりな終わり方が多くて、
そんなたいそうな映画かよ、と不満に思うことが多いのだが、
「おと な り」はちゃんとほっこりした気持ちになれます。
恋人同士で見に行こうと思っている方は、
二人別々に見たほうがいいような気がするな。
今後のためになるような気がするな。

『おと な り』web site

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 10:21 | カテゴリー:映画部

2009年06月16日

凶々しい日常

「凶区」とは森山大道独特の表現であるが、
確かに日々見慣れた風景が、
突然初めて出会ったような奇妙なものに変わっていることがある。
下痢をしていて腹を抱えながら歩いている時に起こることも多いが、
きっかけもなく、いきなりそんなことになると
自分がおかしくなったような気がして不安になる。
何が引き金になるのかはわからないが、
日頃目に入っていなかったものが、急に存在感を増幅させて、
見えていたものにまで影響を及ぼしているように思う。
それで憂鬱になったり、晴れ晴れとした気分に変わったり、
世界が完璧な調和の中にあるように感じられたり、
まさに「禍々しい世界」が現出したりする。

森山大道はモノクロでとにかくシャッターを切りまくり、
彼の見た「禍々しい世界」を印画紙に焼き付けるが、
私は個人的にはとても異質な世界を感じることがあっても、
禍々しく見えたことはない。
見えないことのほうが禍々しく思えることのほうが多い。
でも、森山大道の肺腑をえぐるような写真には圧倒されて、声をなくす。

よく海外旅行に行ったあと、撮った写真を見てみると、
どうしてこんなものにカメラを向けたんだろう
と思われた方も多いのではないかと愚察するが、
日頃見てないものを見ているのだから当然である。
私なんか
「ゲー、すごいもん見ちゃった」
と思い、マンホールの蓋を撮ったこともある。
まあ、面白いといえば面白いんだが。

20代の頃は休みのたびにカメラを持って町を歩いていた。
下町が好きだったので、画角だけ気にして何でもシャッターを切っていた。

0616okura-tel.jpg

会社のデスクで現像したものを見ていたら
「これ、なんかいいのはわかるけど、どうすんだよ。人に見せんの?
無駄なんじゃない」
とぬかしたかなり年上の同僚がいたが、
30年近く経っちゃったけど、今ここで見せてんだからいいだろう。
発表しなきゃ写真を撮る意味がないといわれたら、
写真なんて撮れないじゃん。
俺はなんか感じたからシャッター押したんだよ。
ちなみに私を罵倒したのか誉めたのかわからなかったその人は、
今は中国で高級美容院を経営して大成功しているらしい。
「売れなきゃ意味ねーんだよ」
と今でも聞こえてくる気がする。

30代、毎週散歩に行っていたリージェンツパークでは、
定期的に花が植え替えられる。
ある日、花壇が原色の花で覆い尽くされていた。
しばらくリージェンツパークが全く違う空間に変わっていた。

0616okura-flower.jpg

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 10:16 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年06月13日

6.13 OA  Mr. Children FRANK ZAPPA 井上陽水 and more

1 OUR SONG / TAYLOR SWIFT  

今年20才になる米カントリー界のミューズ。
その歌と曲作りの才能に気付いた親は、娘の将来を見据えて
テイラーが12才のときに音楽の都ナッシュビルに転居したそう。
数多くの雑誌のカバーを飾ってきたその美貌による相乗効果を考えると、
おそらくこの先10年は彼女の栄華は安泰でしょう。


2 ATELIER / DANILO VENTURI 

今年のパリコレで使われた曲を集めたコンピから。
この曲は高級ランジェリーブランド「ラ・ペルラ」のショーで
使われていたそう。


3 デルモ  / Mr. Children 

桜井和寿が女性の視点に立って、
モデル稼業の現実と苦悩を描いた異色のナンバー。


4 WRONG OR RIGHT / BOBBY CALDWELL

70年代後半から80年代頭にかけて盛り上がったAORブームの
中心的シンガー。
いまも時おり来日してブルーノートやビルボードライブ東京で
素晴らしい歌声を聞かせてくれます。


5  I DON’T EVEN CARE / FRANK ZAPPA

すでに60作以上のオリジナル・アルバムを発表している
偉大なるギタリストであり、バンドリーダーである音楽界の鬼才。


6 傘がない / 井上陽水 

大倉さんが紹介した森山大道の作品から連想した曲。
陽水のファースト『断絶』に収録されています。
現在の世相とも響きあう詞と大胆なアレンジは、
この曲が37年も前に作られたという事実を忘れさせる。

BOOK BAR staff| 14:46 | カテゴリー:SONG LIST

2009年06月13日

凶区 / Erotica

大倉眞一郎セレクト

    kyoku.jpg

著者:森山大道  朝日新聞社


熱烈な崇拝者を持つカリスマ写真家が、
東京、ニューヨーク、サンフランシスコ、パリなど
世界の都市の「凶々しく」「エロチック」な相貌を、
鮮烈な光と影で照らし出す。

BOOK BAR staff| 14:31 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年06月13日

UNSEEN VOGUE

杏セレクト

    unseenvogue.jpg

Little, Brown Book Group

副題は”The Secret History of Fashion Photography”。
世界的なファッション誌「VOGUE」英国版の編集者が、
誌面には採用されなかった写真を1920年代から2001年という
長い期間からピックアップした写真集。

BOOK BAR staff| 14:15 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年06月12日

チョコレート・ファイター

ずーーと気になっていたんだけれど時間が合わず、
ようやく見に行けた。

この映画すごいっすよ。
ブルース・リーの「燃えよドラゴン」以来の興奮を味わった。
私は高校の時に格闘にじゃなくて、格闘映画に目覚めて以来、
どえらい数の殴り合い映画を見てきたが、
こんなの初めてなの。

設定が面白い。
主役の「ゼン」は日本人とタイ人のハーフ。
お父さんは阿部ちゃん。ヤクザである。
その上、自閉症でなかなか人とうまくコミュニケーションがとれない。
そこにきて、お母さんはどうも白血病の様子。
金が要るのである。
そこでだ。

というくらいにしておくが、通常私は映画のことを書くのに
内容をほとんど書かない。
しかし、この程度書いてもこの映画の魅力は全く失せない。
ストーリーの細かいところについては
「おんや」と思うところもあったりするかもしれないが、
気にするな。
たいしたことじゃない。

まず、やられちゃったのは「ゼン」役の通称ジージャーの愛らしさ。
タイ人ではとんでもない美人(あくまでも私の基準による)
に出会うことは稀なのであるが、昔から結婚するならタイ人がいいなあ、
と結婚してから思っていた。
柔らかな笑顔はするりと胸の内に忍び込んできて、
具体的な顔が思い出せなくても、
いつの間にか、たとえばホテルのレセプションの
女性との会話を思い返したりしている。
ジージャーもすごい美人ではないが、結婚したくなった。
もう25歳ということだが、まだ10代にしか見えない。
これ、もしかして犯罪に近いようなこと書いてます?ないよね。
英語ができなくてもかまわない。
私はタイ語の響きがたまらなく好きである。
特に女性のあのゆっくり間を取ったような話し方に魅了される。
この映画ではジージャーはほとんど会話場面がないが、
数回発せられる短い言葉で充分クラッとくる。

で、何が見どころかと言えば、壮絶の一言に尽きるアクションである。
ジージャーはテコンドー三段。
タイならムエタイと思うだろうが、
テコンドーなので足技がすごい。
しかも、すべてスタントなし、CGなし、なのでその迫力は半端ではない。
見ていてわかるので、撮影中3人は死んだなと思っていたら、
ラストのメイキングシーンで重傷者、軽症を負う者が続出したことがわかった。
どうも死者は出ていないようだが、
隠してんじゃないかと思うくらいメチャをしている。
ジージャーも顔に何度もまともに蹴りを入れられている。
普通やらんぞ。
ジージャー、小さい身体で、尋常じゃないくらい頑張ってるぞ。

どうすればジージャーに会うことができるだろうか。
こんな気持ちになったのは石野真子以来のことである。
石野さんには25年前、一度TBSラジオのスタジオで
握手をしていただいたことがある。
同じことはきっとないだろうなあ。
J-WAVEに来ていただくことがあったら、是非教えてくださいね。

阿部ちゃんはお尻を出して頑張っている。
そっちに興味のある人もどうぞ。

チョコレート・ファイター公式web site

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 03:30 | カテゴリー:映画部

2009年06月11日

今週のプレゼント!!!

今週は杏ちゃんと大倉さんが、
お薦めの写真集を紹介いたします。

写真集をとりあげるのは番組初の試み。
ふだんは撮られる立場の杏ちゃんと、
いまもフィルム撮りにこだわる大倉さんが
それぞれの写真への思いを熱く語ります。

そして今週と来週は番組をお聞きのリスナー、
抽選で3名さまにAMAZONのギフト券5000円分を
差し上げます。

プレゼント希望の方は、
番組内で発表されるキーワードを書き添えて
応募してください。
翌週月曜到着分までを有効とさせていただきます。

(番組スタッフ)

BOOK BAR staff| 12:28 | カテゴリー:おしらせ

2009年06月10日

唯我論

先週紹介したヘッセの「デミアン」の中で主人公のシンクレールが
悩み苦しんでいたのは、明るい世界と暗いが魅惑的な世界の間で
迷いつつ、「真の自我」を求めていたからである。

「新の自我」なんてものがあるのかないのか、
「真の」というからにはフロイトの言う「エス」の領域にまで
踏み込もうとしていたのか、そこのところはよくわからない。
(私の理解では「エス」を自覚することなど出来ないはずであるが)

シンクレールの悩みは時代的背景も理解しないと、
「若い奴は悩んで大きくなるんだよ」
ではすまないところがある。
第一次世界大戦後すぐに発表されているので、
執筆時は大戦の最中である。
そうなのである。
悩みは時代とともに移ろう。
ただし、その時代の社会的状況に表面的に影響されながらも
必ずしも表層的な悩みと無意識の中に押し込めている
悩みが一致するとは限らない。
学生運動で日本中に火がついたときに、
ゲバ棒をふるって警官隊に突っ込む恐怖と
常に党派内部で自己批判を迫られる恐怖は、
同時に心の内にあったわけで、
そこから自己の存在意義に悩みが至り、
転向して行った人も数知れない。

番組の中で「私も悩んでいた」と話したが、
なぜか杏ちゃんが、私が好きだった転校生に異常な興味を示したため、
話が「悩み」にまで及ばず、もしかしたら
「大倉はただ女子高生の手をどうしたら握れるかで悩んでいただけじゃないか」
と誤解するリスナーの方もいたと思うので一応簡単に解説しておきたい。
先に「ちなみに」の話をしておくと、
手を握ったのは文化祭の時にくだらんお化け屋敷を
3年1組の連中がやっていて、その女性と入ったときに
どさくさにまぎれて手をつながせていただいた。
その時の馬鹿友たちの唖然とした顔は忘れられない。
当時の田舎の高校生にはそこまでが限度であった。
手をつないだのもそれが最初で最後である。

私が自分の本格的な悩み、あるいは苦しみに気が付いたのは
小学校の6年生くらいの頃だったと思う。
自分を取り巻く世界がすべて「嘘」に思えてきたのである。
実在しているのは私だけ。
後の世界は私が見えているところだけ作られており、
私が「この嘘っぱちの世界、消えなさい」と号令をかけると、
一瞬のうちに私一人の意識だけが存在する。
そんな強烈な世界観を知らず知らずに作り出していた。
実際に口に出して号令をかけてみたが、
何も変わらなかったので、なかなか敵もやるもんだとまで思い込んだ。
そうすると見た目でも世界が違って見えてくる。
じっと人を見てると(授業中が多かったように記憶しているが)
急に話している人間が小さく遠ざかって行き、
話している内容がただの記号の羅列にしか聞こえなくなり、
意味が全く汲み取れなくなっていた。

中学生のときに手塚治虫の「赤の他人」という
私を苦しめていた世界観そのままの漫画を読んだ。
俺と同じ事を考えている。
しかもそれが公となる漫画になっている。
これは手の込んだ敵の陰謀だろうか、
それとも一般的にこういうことを考える時期があるという
手塚治虫の助言だろうか。
さらに私の苦しみは深くなった。
高校2年の頃まで続いていたはずである。
バンドを一緒にやっていた仲間にも打ち明けられず、
悶々としていたのだが、ある日気が付いたら、
それは頭の中から消えてしまっていた。

今でも鮮明に当時のことを鮮明に覚えているということは、
51の現在でもその不吉な変質的な思い込みは
一時的に鳴りを潜めているだけかもしれないが、
恐らくその考え方に取り付かれて、
苦しむということはないであろう。

私の抱えていた苦しみは唯我論といって、
特別おかしな考え方ではなく、
多くの人が唯我論の中にいたことがあることがわかったからである。
あえて唯我論が個人的に(唯我論は常に個人的である)
発生するメカニズムついて調べたことはない。
何かが止めさせているのであろう。
自分で分析すればそれなりに納得できる回答を得ることができる
とも思うが、何故かやらない。
もしかしたら、それをやるまでちゃんとした文章は書けないのかもしれない。

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 01:36 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年06月09日

びっくりするぜ!! 俺のラー油

先週番組でいきなり
「ラー油を作ったんで、持って来る」
と爆弾宣言した私である。
私は約束を守る。
ちゃんとスッタフにお裾分けをした。
あれだけ恩着せがましく渡したんだから、
まさか「まずかった」と言う人間はいないと思うが、
実はこのラー油、100%納得がいっているものではない。
唐辛子が思ったより辛くなくて、辛さ度が50%程度にとどまっている。
唐辛子、見かけで判断するのは大変難しい。

味わっていただけないリスナーの皆様に
「すごくうまいんだぜ」
と威張るのもどうかしていると承知しているが、
すごくうまい。
だから、ラベルまで作って商品名が
「びっくりするぜ!!俺のラー油」なのである。

私がかつて小さな広告会社の社長をやっていた頃、
「本当の俺はなんなんだろう」
と自分探しを始めてしまい、思いついてしまったのがこれである。
本気で会社を作ってボロ儲けしようとたくらんだのだが、
自分で作っていて、あまりにも手がかかる上に、
収支がどうなるか計算したところ、
下手すると赤字が出ることがわかって断念した。
しかし、社員から、さらにお裾分けした
知り合いの方々からの依頼が殺到したため、
ただ疲れるだけなのだが、休みの日をつぶして作っていた。

レシピは門外不出である。
世界中のあちこちでワンタン麺に入れて試した
さまざまなラー油のいいとこだけを私流にアレンジしたオリジナルである。
今回私の散髪前の汚い顔と一緒に写っているラー油は、
恐らく現在流通しているラー油と比べても、一番うまいと思い込んでいる。

いいじゃないのそんなことで幸せなんだから。

大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 01:02 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年06月06日

6.6 OA 椎名林檎 MARLENE YES and more

1 あおぞら / 椎名林檎  

ミリオンセラーを記録したシングル「本能」のカップリング曲。
昨年、アルバム未収録曲を集めた10周年記念作品『私と放電』に収録。
林檎史上まれにみる爽やかさがちょっと眩しい。


2 FALLING DEEP / MARLENE 

フィリピン出身のジャズシンガー。
なんと今年は来日30周年になる模様。
この曲は今年リリースされた最新アルバム『マリーン sings 熱帯JAZZ』より。


3 MOONDANCE  / VAN MORRISON

北アイルランド出身のベテランシンガー。
1970年発表のこの曲は数多くのアーティストにカバーされ、
ほぼスタンダード化されているといってよい彼の定番ソング。
飛行機嫌いゆえ、来日が実現したことがないのが残念。


4 ばらの花(remix by REI HARAKAMI) / くるり

京都が生んだ2つの才能が結実したナンバー。
みごとに大輪の花を咲かせました。


5  CLOSE TO THE EDGE / YES

ヘッセの作品から着想を得たアルバム『危機』から。
A面まるまる使った19分弱の組曲の一部を聞いてもらいました。
このアルバムの前作にあたる『こわれもの』は、70年代前半に
ロックを聴いていた人間にとっては避けて通れない必修作品でした。


6 HELLO (TURN YOUR RADIO ON) / SHAKESPEARS SISTER 

元バナナラマのメンバーによって結成された女性2人組ユニット。
ユニット名はスミスの楽曲名からとられた。
この曲が発表されたしばらく後にソロプロジェクトとなり、
1996年に活動停止となる。

BOOK BAR staff| 14:47 | カテゴリー:SONG LIST

2009年06月06日

デミアン

大倉眞一郎セレクト

    demian.jpg

著者:ヘルマン・ヘッセ  新潮文庫


ドイツの近代文学を代表する作家。
「デミアン」は第一次世界大戦直後に発表された長編小説で、
この作品以降、作風は精神世界への傾倒と現代文明批判が
目立つようになる。
ナチス政権時には迫害を受け、大戦終了後にノーベル文学賞を受賞。

BOOK BAR staff| 14:39 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年06月06日

バー・ラジオのカクテルブック

杏 セレクト

著者:尾崎浩司 榎木富士夫   柴田書店


1972年に神宮前にオープン。
現在は青山で営業する伝説のバーの店主と、
バーラジオの世界で遊ぶ男たちが酒の美味さと楽しさを
教えてくれるカクテルブック。
レシピや写真も多数掲載。

残念ながら現在は入手困難だが、
幻冬舎から村上春樹、村上龍の両氏が寄稿した
豪華版が出されている。↓↓↓

バー・ラジオWEB SITEはこちら!!

BOOK BAR staff| 14:20 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年06月05日

ガマの油

私は本物のガマの油売りは見たことがない。
下関方面でそういう商売をやられている方はいなかったのではなかろうか。
テレビや映画で演じられているのは、何度も見ているので、
口上も薄ら覚えではあるが
「タラーリタラーリと油汗を流す」
「一枚が二枚に、二枚が四枚に...」
くらいは諳んじることができるが、
実際の「ガマの油」という商品は見たことがない。
ありゃ本当のことですかね。
実際にそんなものが存在するんでしょうか。
あるんですね。
調べてみたら数十年前のことではあるらしいが、
地元、筑波山では口上もそのまま、
刀を使ってガマの油を売っていたらしい。
もともと口上は江戸時代、浅草の縁日で始まったらしいので、
浅草出身の家人に問うてみたところ、
「いくら私が婆さんでも、さすがに見たことはない」
と不愉快そうに答えてくれた。
であるから、現在は売っていないものと推測される。
いや、自分は持っているという方がいらしたら、
一丁実演をやっていただけないでしょうか。
是非見てみたい。
ちなみに中身には諸説あるらしく、本当のところはよくわからなそうである。

役所広司初監督の「ガマの油」は、
本人はかなりうざったい役を演じているのだが、
透明感のある気持ちのいい映画であった。
プロデューサーの一人がよく鍋を一緒につつく方で、
「大倉さん、絶対好きだからさ」
と強く勧めるので見に行ったら、さすがに鍋友である。
好みをよく理解している。
本当に人に勧めたくなる出来であった。
役所さんはいいな。
才能も人望もあるのでチラシにあるとおり、
「豪華多彩なキャストと日本を代表するスタッフが終結」している。
音楽もタブラトゥーラが担当している。
20年以上前、ラジオCMで曲を使わせていただいた。
それを担当者が得意先の社内で聴かせたら、
「この音楽はいったいなんだ」と大騒ぎになったと聞いている。

役者も良い。
役所さんは小林聡美さんのファンだそうだ。
私も。
二階堂さんという若い女優がとてもいい味を出しているが、
私も大変気に入りました。
気が合うなあ。

この映画は静かなロングランになるような気がする。
公開は6日土曜から。

『ガマの油』公式WEB SITE

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 14:50 | カテゴリー:映画部

2009年06月05日

ウェディングベルを鳴らせ

95年の「アンダーグラウンド」のエミール・クストリッツァ監督の映画だとは
知らなかった。知っていたら見に行かなかったかもしれない。
「アンダーグラウンド」がつかまらなかった訳ではないのだが、
あまりにも重くて、映画を見た後の感情をもてあましたからである。
ずっとあんな映画を撮っているのだと思っていたら、
政治的に叩かれて98年に「黒猫・白猫」を撮るまで引退状態だったらしい。
「黒猫・白猫」はドタバタ喜劇らしいので、
この映画はその線上にあると思っていいようである。

しかし、この映画の出鱈目、暴走、アナーキーさには
喜劇と言われても、どこで笑っていいのかわからないほどである。
セルビアが舞台であることはわかる。
全編私が今一番、はまっている
バルカン・ブラスバンド・ミュージックで埋め尽くされている。
哀愁あるメロディのはずなのに、あまりにも大音量で鳴りっぱなしなので、
私には珍しく「うるさーい、けど気持ちいい」と怒鳴りたくなった。
初めから終わりまでどういうユーモアなのかよくわからないのだが、
全員が大騒ぎしながら127分が過ぎていく。

私には笑えるところが数箇所しかなかったが、
あまりの馬鹿馬鹿しさに逆に目を覚まし、
気が付いたら楽しんでいたから不思議なものである。

ヤスナという役で登場する、
若くてとても綺麗な女優が目が釘付けになるくらいいい。
前からバルカン半島を抜けてコーカサスに行ってみたいと思っていたのだが、
この映画を見て覚悟を決めた。
次にしばらくいなくなるときはその辺りをうろついています。

もうすぐ終わっちゃうかもしれないから、
見たい人は大急ぎでシネマライズまで。

ウエディングベルを鳴らせ公式WEB SITE

                         大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 04:45 | カテゴリー:映画部

2009年06月04日

福岡からチベットへ

先日、初めて福岡へ行って参りました。

時間を見つけて是非行きたかったのが
太宰府天満宮、そして隣にある、九州国立博物館。

0604anne-1.jpg

今回は聖地チベット展をやっておりました。

"コレ"系を見ると、いつも思い出すのが大倉さん。
これ好きそうだなぁ。
一緒に見たら色々と教えてくれて、さぞ、面白かろうなぁ。

・・・聞くと、この展覧会は九州国立博物館から始まり、
その後全国を回るんだとか。

大倉さんはきっと、東京に来た時に見にいらっしゃるだろうから、
詳しく、難しいところはその時大倉さんにお任せする、と言うことで!

ほとんど知識の無い私が一足先に、勝手にレポートします。

タイトルは「聖地チベット」
サブタイトル「ポタラ宮と天空の至宝」

この展覧会では主にチベット仏教に関する
仏像、法具などが展示されています。

並ぶ、仏像。仏像に次ぐ仏像。
一つ一つ、じっくり解説を読みながら見ていっても面白いのですが、
そんな沢山ある仏像を混乱せずに楽しく見られる、ユニークな展示方法。
それは、おみくじ。
「一人一枚、誰でもどうぞ」と、おみくじの箱には書いてあります。
誰でもと言われちゃあ引かない訳にはいきやせん。

引いてみると、私はどうも、「緑ターラー」と言う女神でした。
なんでも、苦しみを取り除く、癒しの神なんだとか。ヤッタ!!

来場者の方々は皆、それぞれ引いたおみくじを片手に、
自分に当たった神様を探しながら楽しんでいます。
実際に、自分の神様と思ってその像を見ると、
親近感も沸くから不思議なもんです。

東京も同じ展示かな?と思ったら、
展示方法はそれぞれの学芸員の方が工夫を凝らして変えていくので、
必ずしも同じ展示になるとは限らない、とのこと。

肝心の中身は、と言うと・・・・
いやはや、何といいますか、
本当に素晴らしかったです。
カラフルで人間っぽさの残る仏像。
千手観音の手の細かさ。
ダーチャクラという、父性と母性の神々が抱き合う像。

知人が、チベットに行って、魅せられたまま帰ってきませんでした。
そのくらい魅力があるのだろう、と
今回の展示を見ただけで思いました。
ああ、いつか、本当に行けたら良いなぁ。

詳しい事は忘れちゃいましたが、
杏の名産地がチベットにあるそうです。
そこの景色の素晴らしいこと、素晴らしいこと。
・・・とのことでした。何処のことだったんだろう。
アニメか映画か、映像作品がモチーフにした街なんだとか・・・・?

この展覧会、東京には北海道を経て、
9月から来年の1月まで開催するそうです。
東京の展示も楽しみです。また行きたいと思います。
九州のを見る場合は、今月14日まで。
九州国立博物館には、この後は阿修羅が来るそうです。
東京での展示は見られそうにもないので、
もう一度、阿修羅狙いで福岡に行くぞーっ!!

0604anne-2.jpg

                           杏

BOOK BAR staff| 07:52 | カテゴリー:from 杏

2009年06月04日

インスタント沼

三木聡のいつもの映画である。
って書いちゃうとつまんないイメージが出てしまうので、
三木聡の相変わらずの間抜けならぬ、間だらけの映画である。
あんまり変わんないか。

映画が始まる前に三木聡が画面で
「くだらないことを(といったかどうか。でもそんな意味のこと)
一生懸命やりました」
と解説するのも普通じゃない。
麻生久美子まで出てきて「こんな風に生きるのがいいなあ」
とか言っている。
変なの。
こっちはこれから見るというのに、監督と主演女優が映画が始まる前に
「楽しんでね」って聞いたことないけど、三木聡だからしょうがないか、
と思ったが、映画と「時効警察」以外見たことないので、
本当はどんな人なのか全然わからない。
あのままの人だったら仲良くなりたいな。

だいたいチラシからしていい加減だよな。
「これぞ三木聡の集大成」なんて小さく書いてある。
あの若さで集大成ってなんだよ。
やる気出せ。

「衝撃的なラストは秘密厳守」
う〜ん、衝撃的ねえ。
まあ衝撃的か。

「これは面白いと思う人しか面白くない映画である」
ってキャッチフレーズ今私が考えたんだけど、どうかな。
私はくっだらないけど、メチャクチャ面白かったな。
6月1日の映画の日に渋谷まで出て行ったら50分前なのに
一人チケット売り場が開くのを待っていた。
俺が暇なのはわかるけど、1000円だからといって
平日から働き盛りの若者が並んでて大丈夫なんだろうかと、
日本の行き先に不安を覚えながら、座り込んで本を読んでいたら
いつの間にかダーッと行列が出来ていた。
本当に大丈夫かね麻生君。

今度の麻生久美子は三日月君じゃなくて、沈丁花君。
「時効警察」だけじゃなくて「転々」でも三日月君だったんだから、
ずっと三日月君でいいんじゃないかな。

三木聡は「くだらないこと」といっていたが、
「ちゃんとしている人」には「意味のない映画」に思えるかもしれない。
「意味のあること」に囲まれていると「意味がないこと」は、
生きるのに意味のないことのように思えてくるが、
それは間違い。
「意味がある」と胸を張ってやっていることが
意味がないことの方が多いような気がする。
どちらかといえば、そちらのほうが有害である。
「意味ないんだけど」と断っておいて、
映画なんか作ってずるいが、
それが結構私には面白いから、
それはいい事だということにしておく。

それにしても三木聡、いったいどんな演出をしているんだろう。
「そこ一拍おいてね」
「そこはそっけなく」
「そこは口開けといて」
とかやっているんだろうか。
やっぱり変である。

インスタント沼公式WEB SITE

                          大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 04:12 | カテゴリー:映画部


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