2009年04月29日

GRAN TORINO

かつては拳銃しか信じていなかったようにしか思えなかった
この78歳の健康オタクの爺さんはどうしてこんな人になったのだろう。
もしかしたら何も変わっていないのかもしれないが、
映画に関してはあらゆる才能を持つ、素敵なおじさまに見える。

クリント・イーストウッドは
マカロニウェスタンで当てる前は「半漁人の逆襲」とか「タランチュラの逆襲」
で端役をもらっていたらしい。
私が生まれる前の話である。
かなり後になってテレビで映画を見たことがあるが、
この人のことは全く覚えていない。
その後テレビの「ローハイド」で人気が出たらしいが、
これについても全く記憶にない。
それからは「クリント・イーストウッド」を知らなくても
「ダーティ・ハリー」で通じる人になった。
とにかく拳銃を撃ちまくるNRAが大喜びするような映画に
出る人というイメージであった。
監督業はこの10年くらいに思っていたら、
72年からコンスタントに主演兼監督でコンスタントに作品を作っている。
当然良いのも悪いのもある。
しかし、このところアカデミー賞候補になる作品を立て続けに発表している。
やたらピストルを振り回すこともなくなった。
何か心境の変化でもあってのことなのだろうか。

この映画はご覧になることをお勧めする。
人種偏見の塊なのか、そんなふうにしか自分を表現できない人間なのか、
そんな、朝鮮戦争で負ったトラウマを抱えた爺さんの話である。

映画の予告編で見たときは、
重要な登場人物は移住ベトナム人だと思っていたのだが、
そうでないことが映画の中で明らかになる。
気にして見ていないと良くわからないかもしれないが、
モン族であるとはっきり答える場面がある。
べトナム戦争のときにアメリカに協力したので、
故国にいられなくなったのだと言うのである。
もともと中国にいたミャオ族が清代に漢民族に押され
東南アジア、主にベトナム、ラオス、タイ、ビルマへ移住した。
彼らは東南アジアでは自らをモン族と呼び始める。

話がややこしいのはフランスが再度戻ってきてからのインドシナ情勢である。
フランス、後に続くアメリカは東南アジアの共産化を防ぐため、
モン族を活用した。
ホーチミンルートと呼ばれた補給路はベトナム国内ではなく
ほとんどはラオスの山の中を走っていた。
東南アジアといえばメコンデルタに代表される、
平らな河の国というイメージが強いと思うが、
ラオスに行ってみると山岳国であることがわかる。
ベトナム戦争ではカンボジア侵攻が問題視されることが多いが、
実はラオスが隠れた主戦場であった。
そこでアメリカに徴兵され戦ったのがモン族である。
アメリカが撤収した後、モン族狩りがラオスでは半ば公然と行われた。
運の良かったモン族の人々の一部はアメリカへ渡ったのである。
だから、映画の中のモン族の少女は自分のことを「ラオス人」と呼ばず、
「モン族」だと答えるのである。

主人公の爺さんの住むエリアはモン族が多数を占めている。
そうか、そういうふうに固まって暮らしていたのかと
映画の内容とはまた別の角度から心を動かされた。

ダーティ・ハリーを最後には、
全く違う方法で結末にもっていく人間に変えたこの映画、
必見である。共和党が嫌いな人も是非、足を運んでいただきたい。


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                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 14:53 | カテゴリー:映画部

2009年04月25日

4.25 OA  DEPECH MODE 竹内まりや MARY J. BLIGE and more

1 PEOPLE ARE PEOPLE / DEPECH MODE 

ダークでゴスでエレクトロ。
1980年に結成したベテランバンド初期のヒットソング。
残念なのは日本における人気が低迷していること。
欧米や中南米では今もスタジアムやスーパーアリーナ級で
ライヴが行われているが、経費や採算性の問題で近年は日本公演を
行っていない。
今月リリースされた12作目のアルバム『SOUNDS OF THE UNIVERSE』、
傑作です。すでに来年2月まで80公演のワールドツアーの
スケジュールが発表されているが、日本公演の予定はいまのところない。


2 TEARDROP /  MASSIVE ATTACK 

90年代の影を象徴する最重要ユニット。
幽玄閑寂なボーカルは4ADの歌姫、
コクトー・トゥインズのエリザベス・フレイザー。
UKチャート1位を記録した98年のアルバム『メザニーン』収録。


3 天使のため息 / 竹内まりや

東野圭吾作品を映画化した『秘密』の主題歌。
映画版は『おくりびと』の滝田洋二郎が監督、
広末涼子、小林薫がキャスティングされた。


4 UNCONDITIONAL LOVE / SUSANNA HOFFS

椎名林檎もカバーしている隠れた名曲。
歌っているのは80年代に活躍したガールズバンド、
バングルスのリードボーカリスト。


5  来るべき世界 / 旭荘201

国分寺で結成されたインディーズバンド。
下北沢にあるカフェ&CDショップ&ライヴスペース&レーベルの
モナ・レコードの5周年記念アルバムより。
↑とっても和む良い店です。
今週カフェから食堂にリニューアルしたらしい。
美味しいカレーは健在かなぁ?


6 ONE / MARY J BLIGE feat U2  

U2の名曲をヒップホップソウルの女王がカバー。
本家のボノを圧倒するパフォーマンスを聞くと、
女は強し……と思ってしまうのはボクだけ?

BOOK BAR staff| 14:52 | カテゴリー:SONG LIST

2009年04月25日

オーデュボンの祈り

大倉眞一郎セレクト

    aprayer.jpg

著者:伊坂幸太郎 新潮文庫

コンビニ強盗に失敗し逃走していた主人公は、気付くと見知らぬ島にいた。
その島は江戸以来外界から遮断されており、妙な人間ばかりが住んでいた。
嘘しか言わない画家、法で殺人を許された男、人語を操り未来を見通せるカカシ。
そして、次の日カカシが殺される。
未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?
新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した2000年のデビュー作。

BOOK BAR staff| 14:32 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年04月25日

変身

杏セレクト

    henshin.jpg

著者:東野圭吾  講談社文庫

世界初の脳移植手術を受けた平凡な男を待ちうけていた運命の悪戯!
画家を夢見て、優しい恋人を愛していた主人公の青年は、
手術後徐々に性格が変わっていき自己崩壊の恐怖に駆られる。
移植された悩の持主(ドナー)はどんな人物だったのか?


玉木宏・蒼井優のコンビで2005年に映画化された。

BOOK BAR staff| 14:16 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年04月25日

東野圭吾 VS 伊坂幸太郎

今夜はベストセラー作家対決!
杏&東野 vs 伊坂&大倉の対戦をお楽しみに!

杏ちゃんと大倉さんが選んだそれぞれの作家の作品を
セットにしてプレゼントいたします。
番組内で発表するキーワードを書き添えて応募してください。
たくさんのメッセージお待ちしています。


(番組スタッフ)

BOOK BAR staff| 08:12 | カテゴリー:おしらせ

2009年04月24日

BURN AFTER READING

コーエン兄弟の作る映画に間違いはない、
と申しますか、私は例外なく楽しめるのであるが、
ときどき
「どーも、コーエン兄弟のは合わないんだよね」
とおっしゃる方もいるので油断がならない。
しかし、この映画の豪華出演陣は揃いも揃って
「コーエン兄弟の映画だぜ。出るに決まってるじゃん」的な
ことを言っているので、私の頭はハリウッドの一流俳優並みというか、
その程度でしかないというか、まあ、そんなことである。

物語は内容こそ全く違うが、まさに
“Much Ado About Nothing”である。
中身は何もないがその周辺でのドタバタ劇。
それが、ただのスラップスティックに見えないところが
コーエン兄弟の魔術である。
「これだけの俳優使ってるんだったら、誰が作ってもそうなるだろう」
と言う人は間違い。
俳優にだけ仕事を預けてしまった映画は大概こけるのである。
しかしなあ、コーエン兄弟自身が5人の主要出演者を想定して
ストーリーを組んでいったようなことを言っているから、
どういうふうに考えればいいのだろうか。

前作「ノー・カントリー」では訳のわからないまま
映画に引きずり込まれたが、今回の映画も最初はアルトマンの
群像劇みたいなものかと思って見ていたら
いきなり焦点が合って、どんでん返しと思いきや、
するりとかわして、なんだと思った瞬間にまたひっくり返される。

「人生ってなんだろう」ってアホなこと書くなと私も思うが、
このアホ映画を見ていると、俺もこんなもんかもと思わせるし、
「国家とは何か」とこれも答えようがない問いに
正面からの回答は避けながら、
後味の中に答えのようなものをうまく紛れ込ませている。
ついでに言うなら
「国家と個人の関係」も笑い飛ばしてドタバタの中に吸収している。

ややこしそうなことを書いて申し訳ない。
難しい映画の可能性もあるが、俺はそれはないと思うな。
この映画を楽しめない人は人生楽しんでないですよ。

コーエン兄弟ずーっと一緒に映画作っているけど、
顔も見たくないってことないのかしら。
それがとても気になりました。

25日から公開。

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                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 08:56 | カテゴリー:映画部

2009年04月23日

終電前後の駅でぶーたれた顔して帰れない二人

0423okura.jpg

私がタイトルで申し上げているのは、
写真のような田舎ののんびりした駅の話ではない。
一応説明しておくと、ここは養老鉄道養老線養老駅である。
荒川秀作とマドリン・キンズの作った養老天命反転地を訪れた時に
この駅で降りたのである。
あんまり風情があるので一枚シャッターを切っておいた。
養老天命反転地は不思議なテーマパークで
日常の中の我々の身体感覚は相対的なものであることを感じさせてくれる。
楽しいですよ。

今はあまり見なくなったかなあ。どうなんでしょう。
終電間際になるとたとえば渋谷、新宿、池袋のような繁華街の駅に出現する
ひたすら立ちつくしている謎のカップル。
昔は終電間際になると必ず見かけたものなんだが。
どのような事態に陥っているのか仔細に観察するのもためらわれるし、
まさか声をかけて
「よろしければ、現在の状況につきましてご教授いただけませんでしょうか」
とお願いするわけにもいくまい。
したがってお願いしたことはない。
ああいうカップルに非常に興味をそそられるのは私だけかもしれないが、
声が聞こえない、二人ともただ黙っている、むしろぶーたれている、
女性が泣いていることがある、女性が男のシャツを握って放さない、
男は手を振り払うでもなく、いきなりダッシュで逃げ出すでもなく、
されるがまま。
それで誰に迷惑をかけているわけでもないので文句はない。
が、彼らの3メートル周辺は息苦しい澱んだ空気のカーテンで覆われている。
なーんとなくなのだが、
「逃がさん」という女性の根性が垣間見れるように思うのだが、
どうなのだろう。
本当に男がダッシュで逃げ出し、女性が「ドロボー!」
とか叫んで追いかけると面白いけど、
本人たちは真剣なのだから茶化してはいけない。

さらに続けると、あれじゃ、終電絶対に逃していると思うのだが、
その場合「深夜食堂」のような場所へ二人で赴くのだろうか、
そんな関係だったらあんな具合にはなってないよね。
あのまま朝まで立ってるってことはないだろうから、
どこかで状況のコペルニクス的転回が起きているのかしら。
すごく知りたい。
「あっ、それあたし」とか「おれだ」という方がいらしたら、
絶対内緒にしますから詳細を教えていただけますでしょうか。
お礼は番組の中でさりげなく名前を出すという技をお聞かせします。

現在形で書いているが、このところ見なくなった気がするので
本当は上記の文章は過去形であるべきである。
ああいうじっとりした関係を最近は避けるようになっているのだろうか、
携帯メールで面倒なことは済ませてしまうのだろうか。
それじゃあつまらないじゃない。
行き詰った時はなかなか「深夜食堂」のような店はないけど、
恵比寿にまで行けば朝8時から朝5時までやっている
「たつや」という居酒屋へ行って酒飲んで罵り合うなり、
また仲良くなっちゃうなりすることを私は勧めるな。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 03:51 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年04月22日

おっぱいバレー

番組のディレクターが
「綾瀬はるかが『おっぱい』って言ってると思っただけで、ぐっとくるんだよね」
とうっとりしていたので、もしかしたらそうかもしれないね、
と私も出かけてみた。
結果的には私は誰が「おっぱい」と言おうが
ぐっと来ないことがわかったのだが、映画は予想以上に面白かった。

内容はダメ中学男子バレーボール部が綾瀬さんじゃなくて、
綾瀬さん役の先生のおっぱい見たさに頑張る、というだけの話。
それ以上説明のしようがないのだが、妙に面白いんだな、これが。

何が面白いんだろう。
よーく考えたら理由がわかった。

この映画の時代設定は正確なところはわからないが、
おそらく1970年代で、私が中学生だったころと近いと思われる。
状況証拠だけになるが、当時の匂いをプンプンに残した「11PM」を
ガキ共が合宿中に部屋を抜け出してみるシーンがあったこと、
週刊プレイボーイをイメージして作られたと思われる小道具の雑誌、
映画館の看板等である。
裁判では勝てそうに無いが、かなりいいところまで持って行けそうである。

早い話、私となんとなく重なったのである。
あの頃はおっぱい見たいかと聞かれれば、
「見たい!」
と断言していたはずである。
週刊プレイボーイは友人がくれたものが押し入れの一番奥に隠されていたし、
残念ながら先生に憧れたことは無いが、好きな女の子がいつも気になっていた。
それでスポーツ頑張ろうとは思わなかったが、
バンド活動に励んでいた理由の5%くらいは一度くらいもててみたい、
と色気を出していたことは否定できない。
あんなに映画の中に出てくる中学生ほどガキじゃなかった気がするが、
自宅に戻って写真を見てみたら、同じような顔をしていた。

ほとんど映画を通して「ニューミュージック」がバックに流れていた。
チューリップ、甲斐バンド、荒井由実、若い頃の永ちゃん、ツイスト、その他たくさん。
すぐに入ってしまうんだな、やっぱり。
ニューミュージックとはおかしなジャンル分けをしたものだと思うが、
実際当時はそう呼んでいた。

てな訳で軽い共感を覚えたのである。

ただ、ひとつ手を抜きやがってと惜しいと言うより腹が立つのは、
北九州戸畑三中の話なのに全員が標準語で話している。
あの当時、絶対に標準語で話すわけがない。
ちゃんと全員が方言で演じていれば苦しいところには目をつむって
星5つあげたのに、ダメじゃん。
「博多っ子純情」を読んで出直してきて欲しい。

ディレクターのために
綾瀬さんが何回「おっぱい」と言ったか勘定しながら見ていた。
カウンターを持って行ったわけではないので100%の自信は無いが、
7回のはずである。
皆さんも行って確かめてみてね。

おっぱいバレーofficial web site

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 11:53 | カテゴリー:映画部

2009年04月22日

深夜ラーメン

私、大学までは情けないくらい痩せており、
いくら食べても太らない、
という一部の皆様には嫉妬の目で見られるほど不思議な体質であった。
そう思っていたのだが、あるとき実家に帰り血液検査をしたところ
父親に
「お前、毎日何食っとるんじゃ」
「それなりに」
「異常にコレステロール値が低いど。ちゃんと食え」
ときつく言いわたれ、
ただろくなものも食わず酒ばかり飲んでいたことが
発覚したことが懐かしく思い出される。

酒飲みに行ってもお金がないので、駒忠という激安居酒屋チェーンで
毎回酒と厚揚げばかり。
「すみませーん」と声をかけると「厚揚げね」と
店のおばちゃんとは呼吸がばっちり合っていた。
安いのにボリュームがあるので食い物の%80は厚揚げだったのである。
栄養あったはずなのにおかしな話である。

会社に入ってから上司に毎晩連れまわされるようになり、
あっという間に6キロくらい太った。
酒はうまい、まずいは別として、ほとんど同じ栄養価であるから
食い物が変わったのであろう。
学生が行くような店ではなかったはずだから、
厚揚げよりましなものであったに違いないが、
何を食わせてもらったかさっぱり思い出せない。
学生時代と一番大きな違いは深夜のラーメンであった。
さんざん飲んだ後のラーメンがうまくてほとんど毎回食っていた。
そしたら太る、際限がないくらい太る。

「深夜食堂」ではインスタントラーメンを作ってくれるが、
私は一時、渋谷の、百軒店にあったストリップ小屋、
道頓堀劇場から5秒の場所にあったマンションに住んでいたこともあり、
本格ラーメン屋には事欠かなかった。

J−WAVE開局前なんか毎深夜六本木のドラム缶ラーメン天鳳
(当時はど深夜までやっていた)で「味噌、麺固、大盛り」か、
いまは無き大八でワンタン麺大盛りに通っていた。
嫌がる奴は引きずって行った。

38歳くらいの時、ロンドンで血液検査をしたところ、
日本人医師にいきなりえらい剣幕で
「あんた、いい加減にしないともうすぐ死ぬよ」
と怒鳴りまくられた。
中性脂肪の値が尋常でないと言うのである。
若い頃は足らなくて、今度は過剰かよ、面倒なもんだぜ。
実は日本から来る客をフランス料理だ、イタリア料理だ、
と連れて行かされるのだが、
私は横飯(駐在員は西洋料理のことをこう呼んでいた)
を食っても、ごはんも麺も出ないので飯を食った気がせず、
客をタクシーに押し込むと日本式ラーメン屋か中華街に行って
タンメンやワンタン麺を内緒で食べていたのである。

ロンドンで怒鳴られても生活態度は変わらず、
会社を辞めて人間ドックに入ったら、また怒鳴られた。
「わしゃ、こんな数字見たことがない。
こういう奴の血はドロドロになっていて、
その辺にたらしとくとすぐに固まってしまう」
普通「その辺にたらしとく」ことはないと思うのだが、
あまりの怒りに初めてびびった。
それから水泳を再開し、
極力野菜を多く摂るように気を配ったのだが、
あまり変化は無いねえ。
どうも親父の血が遺伝したらしい。
仕方ないので薬を飲み始めたのだが、
薬を飲むと何してもいいような気がするので、やや考えものである。

最近は深夜に突撃することは減ったが、本格的に酔っ払うとねえ。

0422okura.jpg

下関に帰ると特別に深夜ラーメンを許してやっている。
東京じゃ食えないんだもの。
このラーメンは唐戸の一龍軒。
ここは深夜はやっていません。
食べたくなったらタクシーで豊前田(ぶぜんだ)へ向かえ。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 03:46 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年04月18日

4.18 OA  山下達郎 THE BLUE HEARTS 宇多田ヒカル and more

1 アトムの子 / 山下達郎 

高度成長期の時代、アトムは明るい未来の象徴だった。
しかし誕生から半世紀以上の月日を経て、
原作のマンガとはずいぶん異なった未来が現実となりました。
車は空飛んでないけど、ケータイでこんなに色んなことが
出来るとは想像外です。
ただ残念なことに、どんなにテクノロジーが発達しても、
人間たちの愚かな争いが絶えないことは的中してしまいましたね。


2 英雄にあこがれて /  THE BLUE HEARTS 

杏ちゃんが紹介したナポレオンを描いたマンガの
連載当時のタイトルはシンプルに「エロイカ」。
フランス語で英雄を意味する。
「エロイカより愛をこめて」なんてカルト人気の
少女マンガもありましたっけ。
そういえば、むかし男性用の化粧品のブランド名にも
使われていたなァ〜。


3 EXPRESS YOURSELF / MADONNA

マドンナ初期のヒットソング。
自己主張の塊のようなマドンナ節全開のナンバー。
女性の社会的地位がグングン高まっていった80年代の
世相を反映しています。


4 LEARNING TO FLY / PINK FLOYD

フロイドの後期の傑作。
アルバム『鬱』(うつ)からシングルカットされた曲で
邦題は「幻の翼」でした。


5  帰れない二人 / 井上陽水

メランコリックな陽水クラシックス。
共作者は忌野清志郎。
この曲はシングル「心もよう」のカップリングで、
国内初のミリオンセラーアルバムとなった『氷の世界』にも
収録されていたため、当時低迷していたキヨシローさんは
この曲の印税収入でかなり助かったそう。


6 BEAUTIFUL WORLD / 宇多田ヒカル  

「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」のために書き下ろされた曲。
アニメソングは数あれど、ここまで作品を深く理解して書かれた
曲はないのでは?
待望の新作『破』は今年6月27日の公開だそうです。
またこの曲が使われるのかは今のところ不明です。

BOOK BAR staff| 14:50 | カテゴリー:SONG LIST

2009年04月18日

深夜食堂

大倉眞一郎セレクト

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著者:安倍夜郎  小学館

開店時間は深夜零時。
メニューには豚汁定食だけ。
食べたいものがあれば注文してくれ。
材料があれば作ってやるよ。
一話一品。
タコさんウィンナー、卵焼き、きのうのカレーなどを
題材に繰り広げられるのは、
ペーソスあふれる大人の人情話。


今週は「深夜食堂」1〜3巻をセットにして5名さまにプレゼント!
読んでいるうちにお腹が空いてくること請け合いです。
ほっこりする、ちょっとイイ話、皆さんもいかがですか?

いやぁ・・・マンガ談義、とまらないですね・・・

BOOK BAR staff| 14:35 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年04月18日

栄光のナポレオンーエロイカ

杏セレクト

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著者:池田理代子  中公文庫


皇帝ナポレオン・ボナパルトの台頭から死までを
描いた歴史マンガ。
時系列的には著者の代表作「ベルサイユのばら」直後の
物語となる上、両作品に共通のキャラクターも登場するため、
ベルばらの続編的なニュアンスも含む。


↓こちらもおススメです。

BOOK BAR staff| 14:14 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年04月17日

MILK

この映画を見るまでMILKという名前の方が
いらっしゃることを知らなかった。
いい名前だし、映画のタイトルとしてもバーヴィー・ミルクを
知らなくてもインパクトがあると思う。

1977年48歳で射殺されたハーヴィー・ミルクの活動は
第二の公民権運動であった。
この運動はいつをもって正式に活動を開始したと言い切れないが、
こういった権利獲得運動は状況に押し出されるようにして
表面に出て来るもので、
まさに当時のサンフランシスコであったから
ミルクのような人物が登場できたのだろう。
しかし、この映画を見るまで反ゲイの活動が70年代後半も
ここまで活発であったことは認識していなかった。
全米で反ゲイの嵐が吹き荒れていたのである。
ゲイ差別禁止条例撤廃提案が住民投票で可決されたりもした。
信じられますか。
ゲイ差別を支持するということは、どんな人間であれ
自分が嫌いな連中は差別してかまわないということになる。

アメリカの嫌いなところは何度も書いたが、
素晴らしいところは多様性を深く受容することである。
移民によって成り立った価値観の違う人間が集まった国で、
同じフィールドで違いを認めながら
そこから物を作ることが出来たということである。
ミルクの活動は同性愛者を守るためだけのものではなく、
ゲイ、ストレート、人種、宗教を超えて、人間の尊厳に関わる
すべての権利を守るためのものであった。

ショーン・ペンに関してはもう言うことがない。
この映画でアカデミー賞を受賞したからではない。
映画を見ればわかる。
これ以上何をしたいのだろう、という気にさえなってしまう。

同性愛に対する偏見はアメリカに限ったことではない。
まだ理解がないというより、罪悪であり、
人間として行ってはならないこととされている国のほうが多いかもしれない。
日本では昔から衆道は盛んで、なんら恥じるところはなかったようだし、
坊さんたちは女犯が禁じられていたので、ほとんどが男色に走った。
その日本でも現在テレビで活躍するゲイの方以外は
カミングアウトしている人はごく限られているし、
結婚を認めろなどという主張さえ聞いたことがない。
何かがねじれている。

フランス人はイギリス人にはゲイが多いと馬鹿にすることがある。
本当かどうかは知らないが、当時勤めていた会社の女性社員が
「チキショー!いい男はみんなゲイなんだよね」
と大文句をたれていた。
なるほど、確かにこういう怒り方もあるのだな、と気が付いた。

18日から公開。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 13:42 | カテゴリー:映画部

2009年04月15日

フロストXニクソン

この映画のチケットを買うとき窓口でなんと言えばいいのか
イタリアで列車のチケットを買うときに悩んだくらい悩んだ。
「フロスト・ヴァーサス・ニクソン」だとヴァーサスが
気取って聞こえてしまうかも。
「フロストかけるニクソン」じゃ、馬鹿丸出しだしな。
すると前の人が「フロスト・ニクソン一枚」と言っているのが聞こえて、
なるほど、それでいいのか、確かにそのほうがかっこいいかも、
で何の揉め事もなくすんなり入場できました。
どなたか存じ上げませんが、この場を借りてお礼申し上げます。

この映画見ない奴はアホである。
もうウォーターゲイト事件と言っても
若いもんは知らない連中が多いだろうが、
アメリカでかつて大統領辞任という前代未聞の事態に
行き着いた大統領の犯罪である。
映画も作られたし、本も多く出版されているので、
興味のある人は、見たり読んだりして勉強してください。

ニクソンは1974年に辞任している。
当時、高校生だった私は詳細を知らないまま、
悪顔をした犯罪者である大統領ニクソンが嫌いで
辞任については「ざまー見ろ」くらいにしか思えなかった。
なんとなく全世界で暗殺されたケネディは最高の大統領、
辞任したニクソンは史上最悪の大統領と思われている節がある。
しかし、別にこの映画でニクソンファンになったわけでもないが、
ケネディはそんな善玉でもない。
1960年にケネディXニクソンで大統領選が行われているが、
ケネディ側に選挙で不正があったという根強い疑惑がある。
僅差で負けたニクソンがその時、
混乱を避けるために告発を行わなかったのは事実である。
また、ベトナム戦争に実質的に踏み込んだのもケネディである。

別にケネディ批判をするつもりもないのでそのくらいにして、
ニクソンである。
辞任前からウォーターゲイト事件の影響で私も嫌いだったし、
アメリカ人の大多数もすっごく嫌いだった。
だが、ニクソンは東西の緊張緩和に尽力しており、
中華人民共和国との国交を開いたし、
対ソビエト、デタント(緊張緩和)を推進したのも彼である。
また何より大きな出来事はベトナム戦争を終わらせたことである。
ケネディが始めたベトナム戦争を状況が行き着くところまで
行ってしまっていた、という事情はあるにせよ、
終結させたのはニクソンであることを忘れてはならない。

この映画はニクソンの素顔、フロストの粘りを楽しむことも出来るが、
私が一番考えさせられたのはジャーナリズムとは何か、
ということである。
ジャーナリズムはエンターテインメントでもある。
テレビのバラエティ番組の司会者がいきなりジャーナリストにもなる。
この映画のチラシにもあるが、これは
「ショウビズ界において、
いまなお語り継がれる伝説のインタビュー」なのである。
ジャーナリズムについて思うことは山のようにあるが、
私も混乱するばかりなのでやめておこう。

ともあれ、この映画を見ると気が付くことが多い。
是非ご覧ください。

日本では総理を辞めても経験者には「総理」と呼びかける
不思議な「慣習」があるが、
アメリカでも辞めた大統領に”Mr. President”と挨拶をすることを初めて知った。
大収穫であった。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 08:50 | カテゴリー:映画部

2009年04月14日

私の季節の学生運動

「されど我らが日々−」は勝手に決め付ければ青春小説であるが、
今から考えれば、共産主義革命への憧れが学生の間に
漂っていなければ成立しない物語である。

私は1976年に慶応大学文学部に入学したが、
その頃はすでに学生運動は
少なくとも慶応では消滅したに等しい状況であった。
一応、日吉の校舎では反帝学評というセクトが休み時間になると
立て看の前でヘルメットにマスクのどう見ても学生とは思えない方々が、
あの独特なアジ演説を異常に音の悪いスピーカーを通して
がなり倒していたが、うるさいというよりも、
どうして聞こえるようにやらないのかが不思議であった。
民青、中核、革マル、ブントなんてのは影も形もなかった。

しかも、反帝学評は日吉だけでしか生き残っておらず、
三田は静かなもので立て看はどこかに置いてあったかもしれないが、
記憶にないくらいだから、アジ演説などは存在しなかったのではなかろうか。
もしかしたら学校に行かず、
毎日友人の下宿を二日酔いの頭で転々としていた時期に
そんなこともあったのかもしれない。

それでも一年生の時に「学費値上げ闘争」というのが起こり、
私も第二外国語のクラスの友人に誘われ学内デモに参加したことがある。
早稲田よりも学費は安かったのだが、
その分学費を上げられると本当に困るという同級生もいたので
さぞかし盛り上がると思っていた。
集合場所に人影があるようなないような。
ショボサはいかんとも隠しがたいプラカードが10枚くらい。
「よし、いくか」
と誰かが言ったが、誰が行くのかとまわりを見渡すと
10人に満たないほどのヘナチョコ学生がプラカードを
おもむろに持ち上げ「じゃ」とか言っている。
そのままドンズラしようかと思ったが、
ここで逃げたら一生責められそうな気がして
ほとんど最後尾でついていった。
日吉の学内を回るだけなのでせいぜい10分くらい。
「シュプレキコール!学費値上げ、粉砕」
「学費値上げ、粉砕」
って10人が小声でささやくように声を上げても
蚊が鳴いているのと同じである。
体育会、お金持ち風遊びサークルのたまり場になっている
食堂の入り口で「学費値上げ・・・」とやっていたら
学ラン集団に罵声を浴びせられ、
「ま、こんなとこか」
ということにして解散となった。

あのデモの主体がなんだった当時も良くわかっていなかったのだが、
そのたまり部室に行ってみると、えらい美人さんが、
いかにもインテリ然とした学生に
「ねえ、ねえ、私たち今度偶然渋谷で会って、デートしない?」
と同じことを何度も繰り返しながら、
あたしたちってちょっと違う人なの的雰囲気を
一生懸命作ろうとしているように見えた。
なんだか、あほらしくなって外に出たのだが、
胸の奥に溜まってしまい、吐き出せない違和感から
しばらく開放されることはなかった。

こんなおセンチな話やめようかと思ったが、
書いてたらどんどん笑える話を思い出したので、
主題を笑いに置き換えて、そのうち続きを書きます。

                               大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 10:10 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年04月11日

本屋大賞2009レポ

先週4月6日に行われた、本屋大賞授賞式、
ブックバー大使として(!?)大倉さんと共に(勝手に)参加してきました!!

会場は既に大勢の出版業界の方が・・・。

発表まで少し時間があるので、
会場の展示を見て廻ると、
こんな部門もありました。

「ジャンルを問わず、2007年12月1日以前に刊行された作品の中から
『2009年本屋大賞』の1次投票の際に募集し、得票された作品。」
とあります。
その数、50冊以上。
ラインナップは実に多ジャンルに渡り、
恐るべきマニアックさ?!(笑)
どれも魅力的で読んでみたくなるものばかり。

その他、本屋大賞から発行されるフリーペーパー、
絶版の本を復刊させる運動のコーナーなど、
当たり前ですが本にまつわる展示のみ!!

多くの展示を見終わる前に、発表会が始まってしまいました。
焦りながら舞台の近くまで移動。

「本屋の、本屋による、本屋の為の賞」
司会も勿論、書店員の方です。
舞台中央にはベールを被った大賞作品が控えています。
受賞作品は・・・

ジャジャン!

『告白』湊かなえさんでした!!

前年度の受賞者、伊坂幸太郎さんからのお祝いの言葉。
お二方とも、独特のユーモアがあって、聞いていてとても面白かったです。

舞台上に作品と共に飾られているのは、
書店に飾られていた『告白』のPOP。
どれも手が込んでいて、愛情が感じられました・・・

会場は再び、歓談の場に。

ノミネート作品『のぼうの城』を書かれた、
和田竜さんもいらっしゃいました!!
以前私は僭越ながら、『のぼうの城』の帯を書かせていただきました。
のぼうの城は待望の映画化だそうです。
水攻めのシーンなど、映像になったら大迫力な場面が多いので今から楽しみです。
採算度外視で作ってくださいっ!!楽しみにしております。

会の中締めは、湊かなえさんの出身地、尾道からいらっしゃった本屋の方。
本屋ネットワークの絆を感じるスピーチでした。
「明日から、また本を、売るぞーっ!!!」
こぶしを高く掲げての決起。
書店員である司会の方が若干冷静ですが、会場には鬨の声が響き渡りました。

本日の主役、湊かなえさんは終始大勢の方に囲まれており、
お話しする機会は難しいかな?!と思っていたのですが、
幸運にも少し話す事が出来ました!

『告白』と言えば、大倉さんが以前、ブックバーで紹介した作品。
思えば、ノミネート作品『テンペスト』も紹介していたし、
去年の大倉さんBOOKBAR大賞はスラムドッグミリオネアの原作だったし、
恐るべき先見の明!!

ちなみに、私が昨年BOOKBARで紹介した作品は、
1次予選の中に。「食堂かたつむり」「田村はまだか」がありました。
他のものも読んでみたいものばかり。

大規模且つアットホームで、とっても良い会でした。
普段中々お目に掛かれない方々にも、
沢山出会うことが出来、
実りのある夜となりました。

これからも、ブックバーを通して、仕事を通して
沢山の本を読み、吸収、成長しながら皆様にも素晴しい作品を紹介、
感動を共有していきたいなぁと思いました。

これからも、頑張ります!!

BOOK BAR staff| 14:55 | カテゴリー:from 杏

2009年04月11日

4.11 OA アン・サリー、THE BYRDS、OASIS and more

1 YOU MAKE ME FEEL LIKE DANCING / LEO SAYER 

思えば70年代は洋楽ワンダーランドでした。
そんなワンダーランドから全米1位を記録したレオ・セイヤーの代表作を。
邦題は「恋の魔法使い」。


2 星影の小経 /  アン・サリー 

現役の医師であり、二児の母でもある女性。
歌には彼女の優しさと強さが映し出されている。


3 からだのV / THE ARROWS

名古屋出身の5人組。
サウンドには心地よい浮遊感が漂い
歌詞には妙にリアルなのに、
どこか不条理な世界観が展開されている。
この曲のPVは必見!はまります!
ボーカルの坂井が偶然NHKで見た学生のダンス大会の
映像がそのまま転用されている。
ちなみに踊っているのは岡山大学モダンダンス部で、
「井の蛙」という作品です。

4 LIVE AND LET DIE / DUFFY

音楽界の伝説と化しているオリジナル曲の作者が、
現在シーンで活躍している中から、
自分の曲をカバーして欲しいアーティストを指名するという
たいへんユニークで企画性に富んだアルバム『WAR CHILD』。
リスペクトしているビッグネームからの指名だけに、
かなりの力作の揃った一枚となったが、
なかでもサー・ポール・マッカートニーの007ソングを
まったく異なる解釈で表現したこの曲の出来は秀逸だ。
なお、このチャリティーCDの収益は戦争被災によって傷ついた
子供たちを救うために使われる。


5  TURN! TURN! TURN! / THE BYRDS

旧約聖書を題材にしたという1965年のヒット。
バーズは60年代後半のフラワー・ムーヴメントを語る上で、
欠かすことの出来ない重要バンド。


6 STAND BY ME / OASIS  

先月来日したUKロックの雄。
早くも7月のフジロックへの参戦が発表された。
フェスでは数万人が彼らの曲を大合唱することになる。
まさに青春は爆発だ!

BOOK BAR staff| 14:50 | カテゴリー:SONG LIST

2009年04月11日

されどわれらが日々ー

大倉眞一郎セレクト

    saredo.jpg

著者:柴田翔   文春文庫


1964年の芥川賞受賞作品。
後に著者は母校である東大の教授となり、
文学部長を務めている。

物語の舞台となっているのは1950年代。
日本共産党の武装闘争、分裂で激動の人生を
余儀なくされた主人公の懸命に生きる姿が、
当時の若者に強く響いた。

BOOK BAR staff| 14:40 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年04月11日

武士の娘

杏セレクト

    bushinomusume.jpg

著者:杉本鉞子  ちくま文庫

著者は、1873年、越後長岡藩の家老の家に生れた武士の娘。
まだ江戸時代の風習を引きずった中で厳格に育てられた幼少時。
上京によって新しい世界と出会った文明開化の東京生活。
そして結婚により住むようになったアメリカでの暮らし。
変化していく環境の中で「武士の娘」として身につけたものを失うことなく、
みごとに自立した考えを身につけたちその生き方とは?

なお本書はもともとは英語で記したのを、著者監修のもとで日本語に訳したもの。

BOOK BAR staff| 14:20 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年04月10日

グルジア語とマラヤーラム語

前にも書いたし、番組でも話したのでまたかと思う方も多いと思うが、
インドのケララ州で使われているマラヤーラム語の文字は
グルジア文字にそっくりである。
少なくとも私にはそう見える。

杏ちゃんが前回紹介した「世界の言語入門」では
グルジア文字について「唐草模様のような」「美しい文字です」
と解説されている。著者の黒田さんも映画で見たグルジア文字が
印象に残っているという。
残念ながらマラヤーラム語については触れていないのだが、
同じ南インドのテルグ語についてのエッセイは書いている。
文字は「丸まった面白い形をしている」と書かれているが、
似ているじゃないですか、グルジア文字と。
マラヤーラム文字のほうが似ていると思うけど。
調べて教えてくださいよ。お願い。

皆さんもちょっと調べてみれば
似ていることはすぐにわかりますから、
文字フェチの方は是非。

0410okura.jpg

写真はコーチンで撮ったもの。
マラヤーラム文字なのだが、こういうふうに描かれるとまた印象が変わる。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 10:33 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年04月09日

ヴィカス・スワラップさん その2

「スラムドッグ・ミリオネア」は素晴らしい映画であることは
誰も否定できないが、
原作と大筋は同じでも「おや、ここも変えたのかい」
と言いたくなるパートもある。

原作と異なるところがありますが、映画の出来には満足していますか。
「小説と映画が別物であることはわかっていたので
『何だ、これは』と大声出して立ち上がるようなことはなかったよ」
じゃ、やっぱり気になるところはあったんだ。
「いや、クリエイティブ・コントロールには参加していたので、
脚本家としっかり話はできていたからね。
最初に『小説と映画は分けて考えなければ。
ただし、この本の魂を変えることだけは絶対にしない』
と言われていたけど、大きな流れに変更はなかったな」
でも、小説では非常に重要な要素となっている部分が抜けたりしてますよね。
私も3回読んでいるのでしつこい。
「それはあるが、映画という枠の中に入れるために
話をシンプルにする必要もあった、ということでしょう」
面白い言い方で答えてくれた。
「有名な小説家がこんなことを言っている。
『自分の小説を映画化するのは、娘を嫁にやるようなものだ。
そして大事なのは義理の息子の悪口は言わないことだ』
いずれにしても素晴らしい映画に仕上がっているのは間違いない」
はい、その通りです。
「それにダニー・ボイルがインドにやって来て撮影をしたが、
これまでの欧米人の撮ったインドを舞台にした映画とは
全く違うものになっている」
そうだな、ミラ・ナイールの「モンスーン・ウェディング」も良かったけど、
彼女はインド人だしね。
ひとつだけスワラップさんが映画と小説の違いについて
「映画はデスティニ(運命)について描かれており、
小説はラック(運)について書いた。そこは違うな」
とおっしゃっていた。
なるほどと思える急所を突いた指摘である。
だからといって映画がつまらないというわけではない。
小説を読んだ方は映画も、
映画を見た方は小説も2回楽しめるということである。

これまでトルコ、アメリカ、エチオピア、イギリス、南アフリカに
それぞれ3年くらい赴任されていますが、
一番気に入っている国はどちらでしょう。
「どこの国、文化からも学ぶものがある。
理解をすればどの国でも楽しめる。
最悪の場所でも最高の人に出会うことが出来るものだよ」
おっしゃる通りで。
「それはそうと、すっごい偶然なんだけどね、
昨日本国から連絡があって、今年から大阪に赴任することになりました」
冗談ですか。
「冗談ではありません。今回日本に来ているのとは何の関係もないよ」
ほほう、そうなるとまたお会いすることが出来ますね。
「もちろん、大阪に来てくれればいつでも会えるよ。
ご馳走しますよ」
ご馳走しますよ、とは本当は言わなかった。
が、いつでも会えますよ、と言いましたよね。
ランダムハウス講談社の方、ちゃんと聞いてましたよね。
ということで、もうマブダチ気分である。
スワラップさんは外交官で私は「旅人のような人」であるが、
「世界的な作家の友人」という肩書きもできた。

「インドは歴史がある国ではあるけれども、
モダナイズされていく環境の中でいかに伝統を保つかということを
第2次大戦後の復興を成し遂げた日本に学びたい」
あのー、そこんとこはご期待にそえるかどうかわからないですけど。
「じゃ、お互いに学びあうということにしましょう」
そうしましょう、と私が日本を代表してお答えしておきましたので、
皆様そういうことでよろしくお願いいたします。

0409okura-1.jpg

0409okura-2.jpg

他にも宗教、政治、経済、哲学にわたるまで短い時間の中、
食事をしながら右に左に話題をかえながら
お話をさせていただいたのだが、とても書ききれない。
また機会があれば紹介させていただきたい。

牛の写真2枚はインタビューとは何の関係もない。
スワラップさんがヒンズー教徒だということで、
私も大好きなインドの放浪牛の写真があったので貼り付けてみました。
場所は両方ともやはりヒンズー教の聖地、リシュケシ。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 08:41 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年04月08日

ヴィカス・スワラップさん その1

スワラップさんからは写真からも伝わるであろう
身体の内側から湧き出てくる力強いオーラが発せられている。
精神的にも肉体的にも充実の極みにあるように見えた。
外交官の仕事をしながら、小説を書いて、
プロモーションにも嫌な顔をすることなく世界中をまわっているのである。
「ぼくと1ルピーの神様」は41カ国語に翻訳されているが、
英語で書いた本なのでヒンズー語の翻訳も手がけたそうである。
下訳は別の人にやってもらったそうだが、
忙しかったのであろう、
最初に書いた英語のものは16日で書いたのに
ヒンズー語に訳すのに4ヶ月かかったそうである。

主人公は英語も話せるのだが、実際のインド人同士の会話は
当然ヒンズー語で話している設定なので
より自然な形になったと思うと話していた。
そう聞くとヒンズー語でも読みたくなってしまう。
このところ数ヶ月間は世界中の映画賞ほとんどで
「スラムドッグ」が何らかの形で賞を取っているので
そりゃ大変だった、と楽しそうに話をしていた。
楽しいだろうなあ、そんなことになったら。
ピークは当たり前だろうが、コダック・シアターでの
アカデミー賞授賞式でスピルバーグが受賞作品を読み上げた時で、
スワラップさんも壇上に上がられたそうである。
最初の小説でねぇ。

スワラップさんはバラーナス(ベナレス、ヴァーラーナーシー、
みんな同じ場所を指す)から西へ約100キロの場所、
アラハバードの出身だそうである。
ヤムナ河とガンジス河が合流するする場所でヒンズー教の聖地となっている。
ご自身もヒンズー教徒であるが、ヒンズー教の素晴らしいところ、
問題点も認識されている。
だから「ぼくと1ルピーの神様」のような本も書けたのであろう。
すでに発売されているスワラップさんの次作品「SIX SUSPECTS」の
本に書かれているコピーでも
“There’s a caste system even in murder”
と書かれている。
番組でもスワラップさんのおっしゃったことを申し上げたが、
問題を認識しなければ解決できないのである。
それを学術書のような形でなく、エンターテインメントにして
多くの人が読めるようにしているというところが
スワラップさんのすごいところである。

映画「スラムドッグ・ミリオネア」の話にもなったのだが、
それはその2で詳しく触れることにして、
インド映画について気になっていた質問をしてみた。

ボリウッド・ムーヴィーはお好きですか。
「そりゃ、ボリウッド映画見ない人間はインド人じゃないでしょう」
私はあのハンサムなシャー・ルク・カーンにやられちゃってるんですが、
スワラップさんはお好きですか。
「だって、大スターだよ。嫌いなわけないでしょう」
その彼はイスラム教徒ですよね。
インドの奥の深さを見るようですごいことだと思うんですが。
「それはシャー・ルク・カーンに限ったことではなく、
インドのトップスターにはサルマーン・カーンをはじめ
多くのイスラム教徒がいる。
宗教は全く問題ではなく、彼らがインド人の俳優ということだ」

年末にムンバイでイスラム過激派と見られるテロリストの起こした
同時多発テロが起こったが、あの事件がきっかけでインドでイスラム教徒に
危害が加えられたという話は聞いていない。
インドでさまざまな宗教対立がないとはいえないが、
普段の生活の中で相互不信を感じることはない。
オールドデリーの路地に迷い込んで、
楽しくも困りかけていた場所はイスラム教徒が多く住む場所であったが、
境目に気が付くことはなった。

0408okura-1.jpg

ようやく大通りに抜けるとすぐそばにジャマー・マスジットという
巨大なモスクが出現した。
私も入れてもらって写真も撮らせていただけた。

その2に続く。
その2ではもっとちゃんとスワラップさんのお話を紹介します。


                             大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 08:30 | カテゴリー:from 大倉眞一郎

2009年04月07日

THIS IS ENGLAND

この映画はいわゆる日本でいうところのイギリスという国の
映画ではない。
タイトル通り、あくまでEnglandのことであり、
「Scotland, Wales, N.Irelandなんて関係ない、
England愛国でつながっているんだ」という若者たちの映画である。
イギリスは日本の正式呼称も「連合王国」であり、
Englandという単語は全く出てこない。
中学校で教わった時はイギリスはEngland,
イギリス人はEnglishだったはずだが、
間違いである。
「じゃあ、なんて呼んで欲しい?」
と部下のウェールズ人に聞いてみたところ
Britishだそうである。
ただし、これでは北アイルランドが含まれないので、
問題は解決しないままである。

この映画に登場するような若者たちと親しく話をしたことがない。
親しくじゃなくても話したことがない。
機会がなかったのである。

サッチャー政権の下でそれまでは手厚く保護されていた労働者が、
炭鉱閉鎖であったり、医療予算削減であったり、
今の日本と似ていなくもない状況に置かれた。
メイジャー首相の後の労働党政権も大きな路線変更をしなかったので、
私はここでサッチャー批判をする気はないが、
当時イギリス全土に労働者の不満が鬱積していたのは事実である。
その頃の不満をぶちまけた映画は「ブラス」をはじめ非常に多い。

もともとイギリスは階級社会である。
同じロンドンでも階級によって話す言葉が大きく異なることは
前にも書いたことがあるが、
この映画を見てもらえればどのくらい違うかはすぐにわかる。

スキンヘッドの若者たちは過激な行動に走りやすく、
既成の政党を支持せず右翼の民族主義者に煽られて、
他民族排斥、同性愛者攻撃、愛国(イングランドの)を謳い、
暴力的になっていく。
90年からイギリスにいた私もやたらあちこち
公衆電話や、トイレが破壊されているのを見て、
これは何なんだと聞くと、
「フーリガニズム、ヴァンダリズムだ」
と言われたが、こういうのも「イズム」なのね、
と妙な感心の仕方をしたことがある。
行き場を失った怒りはそういうふうに吐き出される。

あるいはイギリス名物といえばフーリガンである。
しばらく国際試合に出場できなかったくらい
イギリスのフーリガンは暴れまくる。

私は決して乗り気ではなかったのだが、
得意先を連れてFAカップの決勝戦をウェンブリーまで
見に行かされたことがある。
駅から競技場まで騎馬警官、警官が一メートルおきくらい
びっしり両側に並んでいて、ごついスキンヘッドの若者が
こぶしを振り上げて応援するチームの歌を歌うと
4人ほどの警官が飛び出してきて
有無を言わさず首を押さえつけて連れ出して行った。
本当にここでサッカー見るんでしょうか。
お得意様もビビッているがどえらいプレミアムを払って手にした
チケットである。
行くしかない。
行ったのだが、最上段で選手は豆である。
まわりは予想通り、いかつい男たちばかりなのだが、
困ったのは我々の前の席の若い娘二人がほとんど立ちっぱなしで
熱狂的な声援を送っていることである。
最上段なのでこちらは頭がつかえて立つこともできない。
試合が見えない。
お得意様も我々が置かれている状況はよく理解していて、
小声で
「見えないねえ...」
とこぼすが、座らせてくれとは頼んでこない。
そうでなくても何でこんなとこに日本人がいるんだ、
という痛い視線があらゆる場所から飛んできている。
「座れ」といえる人がいたら申し出て下さい。
カビラさんなら言ってるかもな。

話はぶれまくったが、
当時の郊外労働者(映画では場所は特定されていない)の
置かれた環境が手に取るように理解できる映画である。
お勧めである。

この映画ももうすぐ公開終了かもしれない。
お急ぎください。
渋谷シアターNでやってます。

0407okura.jpg

おまけのようにつけたこの写真は
ロンドンから南へ電車で1時間くらいの場所、ブライトンである。
ここは比較的裕福な階層の住むのんびりしたところ。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 08:49 | カテゴリー:映画部

2009年04月04日

4.4 OA QUEEN, WILLIAM ORBIT,NAJIMA and more

1 GO / COMMON 

シカゴ出身のラッパー。
スキンヘッドにスタイリッシュな顔立ちという容貌を生かし、
俳優としての活動も年々盛んになっています。
同郷のカニエ・ウエストをプロデューサーに迎えた
2005年のアルバム『BE』より。


2 TEO TRIATTE / QUEEN 

いまでは伝説のバンドとなったクイーンですが、
その人気は極東の地、日本から火が付いた。
1975年の初来日の際、本国イギリスを遥かに上回る
熱狂的な歓迎に感謝の意を表して書かれた楽曲。


3 WORDS / F.R.DAVID

1982年にリリースされた世界的ヒットソング。
全世界で2400万枚も売れたそうです。
もちろん日本のラジオ、有線やディスコでもガンガン流れてました。
いま聞くとなんともチープなシンセの音が
逆に新鮮に響きます。


4 PURDY / WILLIAM ORBIT

マドンナのプロデュースやU2のリミックスなど、
その手腕が高く評価されている音響の魔術師。
こちらは2年ほど前にアパレルブランドH&Mの広告のために
作曲された彼の最新曲です。


5  Jai Ho / from OST “slumdog millionaire”

今年のアカデミー最多となる8部門を受賞した注目作、
スラムドッグ$ミリオネア」のサウンドトラックから。
音楽を担当したのはインド映画音楽シーンの若き巨匠、
A.R.ラフマーンです。
日本にもファンクラブがあったりと、その人気は
世界的なものになりつつあります。
外盤ですがアカデミー賞受賞に便乗したベスト盤も出ました。
これは買いかも。


6 DIL LAGA YA THA / NAJIMA  

NAJIMAはイギリスで生まれ育ったインド系女性シンガー。
ワールド・ミュージックに注目が高まっていた
J-WAVEの開局当時にはずいぶんお世話になりました。

BOOK BAR staff| 14:51 | カテゴリー:SONG LIST

2009年04月04日

ぼくと1ルピーの神様

大倉眞一郎セレクト

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著者:ヴィカス・スワラップ   ランダムハウス講談社

当書を原作とするアカデミー賞8部門受賞作品
「スラムドッグ$ミリオネア」は4月18日より全国ロードショー公開!

BOOK BAR staff| 14:40 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年04月04日

世界の言語入門

杏セレクト

    sekainogengo.jpg

著者:黒田龍之介  講談社現代新書

NHKのロシア語講座の講師を担当する言語学者である著者が
英語、仏語などメジャー言語から、ベルベル語、ゾンカ語など
知る人ぞ知る言語まで。90言語の魅力をひとりで語った楽しいエッセイ。

BOOK BAR staff| 14:21 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年04月04日

インドから素敵なお客様がBOOK BARに来店!

今夜のBOOK BARには、
な・な・なんと、アカデミー8冠を達成した話題の映画、
スラムドッグ$ミリオネア』の原作『ぼくと1ルピーの神様』の著者、
ヴィカス・スワラップさんが登場!!

    

大倉さんの愛が伝わりました・・・!
興奮の大倉さん。

vikas-okura-st.jpg

どんな話がでてくるのでしょうか!?
お楽しみに。

BOOK BAR staff| 09:59 | カテゴリー:おしらせ

2009年04月02日

いのちの戦場

ロンドンにいた頃、パリは近くて遠い都市で
頻繁に出張する場所ではなかったが、
それでも年に何回かパリに行くと、
「何と明るくて、色に溢れた粋な街だろう」
と羨ましくて仕方がなかった。
何しろロンドンが暗いもので。

フランスはグチャグチャの革命を
経てきたにもかかわらず、
第2次世界大戦では早々にヒトラーにパリをあけ渡し、
レジスタンスがゲリラ活動を続けているくらいだった。

フランスは多くの哲学者を生み、
血なまぐさい国歌を歌いながらも、
労働者保護に非常に手厚く、
ほとんど社会主義国といってもおかしくない政策で
現在もその存在感は大きい。

しかし、その自由、平等、博愛のフランスも
一旦植民地、侵略地から得られるうまみを覚えると
普通の神経ではいられなかった。
日本の敗戦後すぐにインドシナに再び展開し、
インドシナ戦争を引き起こし、
1954年のディエンビエンフーの戦いで敗北し、
56年に完全撤退するまで、アジアでの植民地確保の戦争を続けていた。
アメリカはその後を引き継ぐ形でベトナムの泥沼に両足を突っ込むことになる。

ここまでは日本の教科書にかろうじて掲載されていることであるが、
同時期にアルジェリアで出鱈目をやっていたことは
日本ではあまり知られていない。

フランスは1830年にアルジェリアを支配下におさめ、
内地化を進めていた。
誤解を承知の上で言えば日本の朝鮮併合、満州国独立政策に似ている。
アルジェリアを内地化するということは
北アフリカ支配を確固たるものにするということである。
モロッコ、チュニジアはその流れの中で支配下に置かれることになった。

アルジェリアは内地化されたということになっていても
アルジェリア人に対する差別は当然あるわけで、
第2次世界大戦で彼らはいいように使われ、
インドシナにも派遣され、第一線で戦った。
挙句の果てが1954年から始まったアルジェリア戦争である。
この戦争は基本的には独立戦争であり、
アルジェリア民族解放戦線(FLN)とフランスの戦いであるが、
フランス軍にもアルジェリア人は組み込まれ、
最後には日本の関東軍にも似た
現地フランス人による秘密軍事組織(OAS)も
戦いに入ってきて三つ巴のひどい状況であった。

この映画は1959年、まさにフランス軍とFNLが壮絶な戦いを
繰り返していた時の状況を描いている。
それは驚くほどインドシナでの泥沼戦争、
イラク、アフガニスタンで続いている現在進行形の戦争に酷似している。
結局62年にアルジェリアの独立を認める形で終結したが、
この戦争について我々はあまりにも知らなすぎる。
理由がある。
フランス政府が1999年まで「アルジェリア戦争」を
認めてこなかったからである。マスコミも鈍感であった。
当時はアルジェリアではイスラム過激派によるテロが頻発しており、
外国人はもとよりアルジェリア人も毎日のように
多数テロにあっており、アルジェリアの治安悪化に気をとられていて
その原因と言えなくもないアルジェリア支配とその終焉、
アルジェリア戦争のフランス政府認定にまで気が回らなかったのである。

このフランス映画が2007年に公開されたことは
ある意味画期的なことである。
が、何故これだけの時間を必要としたのか、
それが知りたい。

なかなか時間がなくて見に行けなかった。
東京ではシアターTSUTAYAで4月10日まで。

現在のアルジェリアの状況はかつてと比べれば格段に良くなってはいるが、
いまだにテロは続いている。

特にアルジェリアの状況について書かれた本ではないが、
現在のムスリム・アラブ圏の状況について知りたい方は
下記の本が参考になると思う。

脱植民地国家の現在」アルベール・メンミ
りぶらりあ選書/法政大学出版局

『いのちの戦場 −アルジェリア1959−』official site

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 06:20 | カテゴリー:映画部

2009年04月01日

多様性の不思議

前回紹介した「動的平衡」では福岡先生は
生命は流れの中の淀みのようなものである、
と非常に明快に解説してくださっているのだが、
それはそうだとして、
どうしてもこの30年すっきりしなくて、
考え始めると寝られなくなるかもしれない
もやもやが胸につかえている。

一度このブログで「妖星伝」について書いたときにも
ほんの少し触れたのだが、
この地球に溢れる数限りない多様な種についてである。
確かに絶滅した、あるいは絶滅に瀕した種が激増していることは
認識しているが、その保護の問題とは別に
何故、これだけ多くの種がこの地球では発生したのか、
という根本的な疑問である。
進化論でさまざまなことが明らかになってきているようであるが、
何度説明を聞いても
「あー、これですっきりした」
という気分になれない。
かといってアメリカのキリスト教原理主義的な神の創造物説も
信じられないし、その代替物として浮上してきた
誰だかわからない高度な知性が介入して生物が作られたという
インテリジェント・デザインも説得力がない。

進化論も一致団結しているわけではなくて、
かつての日本の左翼運動のように百花斉放・百家争鳴状態で
根本的とも思えるような大きな違いだったり、
どうでもいいようにしか思えない違いについて激論が戦わされている。

あらゆる種は環境に対応、順応するように進化してきているはずである。
しかし、たとえば食われないようにさまざまな工夫がされてきているはずなのに
やっぱり食物連鎖は起こっている。
キリンは首が長くて高いところにある葉をうまく食えるが、
その他の動物は首を長くする方法を選ばなかった。
進化論では進化は遺伝子の突然変異によって起きている
というふうに解説されたことがあるが、
その変化を促した環境の中でだんだん形を変えたのか、
イッセーノーセでみんな一斉に変わっちゃたのか、
その辺もわからない。
ある心理学者は種が進化するときには集団的な決心があったと
ニューエイジ論者が喜びそうなことを言っていたが、
それもねぇ。

だいたいみんなが幸せになりたいんなら、
すべて同じ種に集約されていくことにならないのかしら。
そんなことになったら直感的にすごくまずいし、気持ち悪いと思うのだが。
それぞれの種は何を考えて現在の形態を選択したのか、
是非聞いてみたいものである。
しかし、人間のことさえわからないことだらけなのだから、
将来にわたっても100%の答えは出ないことを私が保証しましょう。

私は多様性は絶対に保たれなければならないと信じている。
それは生命であれ、人の考え方であっても同じである。
そうでなくては面白くないからである。
面白いともっと面白いことが起きてくる。
違いこそが次のページをめくらせる原動力である。
それが必ずしも人間にとってありがたいことかどうかは
わからないのではあるが。

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花はエロティックである。
人をもそういう気分にさせる理由は何なのであろうか。
たまたま昆虫が寄ってくるように進化したら、
人間も寄ってきたということですか?
そうかなあ。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 07:48 | カテゴリー:from 大倉眞一郎


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