2009年03月30日

WATCHMEN

“God bless America.”
のゴッドで誰?と普通思う。
思わない?
アメリカを祝福するのは動詞にsの付かないキリスト教の神である。
くしゃみをしても”Bless you.”とか言われてしまうが、
これも主語のGodが省略されているので、
「そういわれましても多神教信者あるいは無神論者の私としては困ります」
と申し上げたくなることもあるが、なかなか言えない。
「ありがと」とちゃんと笑顔で答えて問題を起こさないようにしている。
だが、依然としてアメリカ人であり他宗教を信仰している人達は
どういう具合に折り合いをつけているのか、非常に興味がある。

こんな風に書き始めれば、また宗教の話の映画か、
と思う方もいるかもしれないが、違う。

この映画は最初から最後までメチャクチャである。
ちょっとした冗談のヒーロー映画だと思っていたら、展開が違う。
「スーパーマン」も「スパイダーマン」もメチャクチャであるが、
最初から「そこは許してね」の前提で作られているので、
「たまにはいーじゃん」で、
私も楽しませてもらうこともある。
そんなこと言い始めたらアメリカ映画は全部そうじゃないか、
という真っ当な話を始める人もいるであろう。
しかし、そこに突っ込むと面倒なのでアメリカ映画云々は
日を改めましょう。

ウォッチマンという連中が悪い奴らをガンガン勝手にやっつけていく。
映画だから許されるよな。「24」でもそうか。
この連中はすごく強い。
何故強いかは一人を除いてはわからない。
とにかく、現在の世界の歴史を塗り替えてしまっているくらい強い。

そこで私は考え込んでしまった。
彼らはもうメチャクチャに悪人をやっつけてはいけないという法律ができるまで
メチャクチャをやっていたのだが、
どうも、スーパーマンのように崇め奉られていたわけでもないらしい。
アメリカでは無条件に「善」が「悪」をやっつけるのなら
少々いかがなものかという方法であっても、
フィクションであるならいいじゃないか、
とりあえず楽しむために勧善懲悪のフィクションとしての「神」を
認めておこうじゃないか、だったように思うのだが、
この映画では、ヒーローであったはずの連中はなんとも暗い。
画面まで暗くて、ただならぬ雰囲気である。

さらに、いくらなんでも映画であってもそれはタブーでしょ、
とされていた結末に向かう。
「人間ってしょうがないでしょ、ここまでしないと」、
と映画でそんなことまで言っちゃって大丈夫ですか、
それこそどこの神様か知らないけど、
お怒りになりませんでしょうかね。

一段上の視点から見ればこういうことになるのだよ、
と神を連想させる存在を認めてしまっている。

これをアメリカ人はどう受け止めたのだろうか、
娯楽作品の形をとっているので、まあ、よしだったのか。
私どもといたしましては、「はい、そうですか」、
とはいかないのですがね。

アメリカ人が大好きな「本物の神」が置き去りにされたこの映画、
とにかくメチャクチャなので
どのように楽しんでいただいてもいいのだが、
約3時間、私は何じゃこりゃと、
頭の体操をしながら見ていた。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 05:34 | カテゴリー:映画部

2009年03月28日

3.28 OA nasa HANZ ZIMMER THE YELLOW MONKY and more

1 STRAIGHTEN UP AND FLY RIGHT / will I am feat. NATALIE COLE 

ヒップホップ、クラブ系の人気者たちがナット・キング・コール音源を
再構築したアルバム『RE:GENERATIONS』より。
こちらの原曲はコールの人気を決定づけた1948年のヒット。
BEPのウィル・アイ・アムが娘のナタリー・コールを
使って見事に料理しています。


2 I CHANGED MY MIND / LYRICS BORN & THE POETS OF RHYTHM 

リリックス・ボーンはアメリカ西海岸で活動するラッパー。
幼少時は東京に住んでいたこともあるらしい。
ポエッツ・オブ・リズムは7人編成のソウルファンク・バンド。
こちらはドイツで活動しているようです。


3 SPIRITUAL HIGH (STATE OF INDEPENDENCE) / MOODSWINGS

1992年にリリースされた彼らのデビュー作より。
ゲストボーカルはプリテンダースのクリッシー・ハイドです。
ちなみに同アルバムに収録されている
SPRITUAL HIGH(Part 3)では、
マーティン・ルーサー・キング牧師の高名なスピーチ、
“I HAVE A DREAM・・・”がサンプリングされています。


4 MONEY / nasa

ユニット名のnasaはNorth America、South Americaを意味する。
NY出身で映像監督スパイク・ジョーンズの弟スクウィークと
ブラジル出身のDJジゴンによるデビュー作です。
新人のプロジェクトにもかかわらず、
客演陣がカニエ・ウエスト、トム・ウェイツ、M.I.A.、メソッドマン、
そしてレッチリのジョン・フルシアンテとびっくりするほど豪華なのは
彼らの志の高さと忍耐の賜物。
この曲でもデヴィッド・バーンとセウ・ジョルジが歌っています。


5  YOU’RE SO COOL / from OST “TRUE ROMANCE” 

タランティーノが脚本を書いて注目された1993年の
クライム・ムービーのサントラから。
監督はトニー・スコット、
主演はクリスチャン・スレーターでした。
ちょい役でまだ売り出し中のブラピも出てます。
音楽を担当しているのは何度となくオスカーを受賞している
ドイツ出身の巨匠ハンス・ジマー。


6 人生の終わり / THE YELLOW MONKEY  

サブタイトルに(FOR GRANDMOTHER)とあるように、
吉井和哉が自身の祖母に捧げた曲。
もっとも本人は「わたしゃまだ死んじゃいない」と
怒ったなんて逸話も。
イエモン6作目となる最大のヒットアルバム『SICKS』より。

BOOK BAR staff| 14:50 | カテゴリー:SONG LIST

2009年03月28日

動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

大倉眞一郎セレクト

    douteki.jpg

著者:福岡伸一  木楽舎

生命とは、絶え間ない流れの中にある動的なもの。
生物を構成する分子は日々入れ替わっているそうだ。
つまり私たちは「私たちが食べたもの」にすぎない。
すべての生物は分子の「流れ」の中の「淀み」なのか?

ベストセラー「生物と無生物のあいだ」の著者であり、
哲学する分子生物学者が問う「命の不思議」。

BOOK BAR staff| 14:35 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年03月28日

吉里吉里人

杏セレクト

著者:井上ひさし  新潮文庫


東北の寒村が日本政府に嫌気が差し、
突如「吉里吉里国」として独立を宣言するという爆笑風刺小説。
読売文学賞と日本SF大賞というジャンルの異なる
2つの賞に輝いている。

BOOK BAR staff| 14:20 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年03月25日

リリィ、はちみつ色の秘密

このタイトルでは50過ぎのオヤジはなかなか一人で映画館には行けない。
試写のご案内をいただき見に行った。
行ってよかった。
このタイトルからは甘っちょろい少女のファンタジーを
想像してしまう方もいるだろう。
私もそう思い込んで、
ただ、ダコタ・ファニングの成長した姿が見たくて、
重い腰を上げたのである。

小さな試写会場でボロ泣きするのは、
マナーに反するというより、嫌でしょう。
オヤジがすすり上げてるのを聞くのは。
私は映画を見て泣く派である。
簡単に泣かせどころで落とされてしまう。
そういう意味では誠に遺憾に存じます。

タイトルから想起されるような「甘い」映画ではない。
「何とか国物語」みたいなものとは対極にある太い骨を感じさせる。

アメリカで公民権法が制定された1964年の話であるが、
法律ができたから白人も黒人もみんな仲良くといった状態でなかったことは
ご存知の通りである。
その中に、DV、主人公の幼い頃のトラウマ、愛と希望が織り込まれる。
余計なカットは一切ない。
ダコタ・ファニングは現在15歳、この映画が撮られた時は14であったはずである。
子役の時に素晴らしい演技を見せた女優は、
悲しいことに歳を重ねるにつれ輝きを失うケースが多いのだが、
この女優は特殊な例外のようである。
演技がうまいのはその通りなのであるが、
見ている人間に演技であることを忘れさせるような
不思議な「流れ」を作り出す。
ただただ、見とれるばかりである。
21歳になったら一緒にお酒を飲んでみたいけど、
スッゲー生意気だったら嫌だな。
そんな機会ありますか?
ないですね。
(アメリカでは一応飲酒は21歳からですよ。間違えると警察が来ますよ)

他の出演者も素晴らしいのだが、
不思議で仕様がないのはアメリカの歌手の演技のうまさである。
ジェニファー・ハドソン、アリシア・キーズの二人も出ているのだが、
あれだけ歌で売れているのに、俳優までこなすとは何という強欲であろうか。
歌、歌うと何か演技の勘でも養われるのであろうか。

いまどき「感動」という言葉に反応して
映画に行く人はなかなかいないのではないか。
「感動」は大量消費され、叩き売りの大安売りとなっている。
そこいら中に遠くからヨン様見ただけで、
感動したといって泣いているおばさまもいるのである。
であるので使いたくない言葉、ナンバー1なのだが、
この映画には心を揺すぶられ、涙まで流してしまったのだから
やはり「感動いたしました」というしかない。
ご覧になることを強くお勧めする。

ちなみにこの映画の原題は”The Secret Life of Bees”。
全米で500万部も売れた
スー・モンク・キッドの書いた小説が映画化されたものである。

                             大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 08:48 | カテゴリー:映画部

2009年03月22日

ROCKNROLLA

やっぱりガイ・リッチー最高。OK?
どんなストーリーだったか?
関係ないじゃん。
よく思い出せないんだもん。
どんな映画だったか?
知ってどうすんだか知らないけど、じゃ、教えてあげる。
どっちかっていうと出てくる奴らはみんな悪い奴らでぇ、
いくつかのグループに分かれててぇ、
そいつらが大金をめぐって大騒動って話よ。
昔のガイ・リッチーが戻ってきたわけだから、
いつもと同じに決まってるじゃん。
本当は最初タイトルだけ聞いたときは
ロックをやるローラって娘の話かと思っちゃったんだけど、
そんなわけなくて、ただ、ロックンローラーがなまっただけでした。
だからミュージシャンのような悪いのも出て来るわけよ。OK?

変わったところが二つあった。
「ロック、ストック、アンド、トゥー・スモーキング・バレルス」
「スナッチ」
はいずれもロンドンが舞台なのに訛りのきつい下町英語だったのが
今回のは割と聞き取りやすい。
そこはマドンナにやられちまったかな。

金をめぐるドタバタなんだけど、
奪い合う通貨がユーロになっている。
なんか馴染めない。
まだ一度もユーロに触ったことがないからだろう。
ロンドンなんだからパウンド
(なぜか日本ではポンドと呼ぶがパウンドが正しい。
くだけていう時はクィッドとも呼ぶ。
ちなみにペンスは通常、ピーである。
ピーじゃ小便じゃないかと思われた方、正しい。その発音と同じである。
この際だからさらに付け加えるとイギリスではトイレのことは
通常ルーと呼ぶ。Go to the loo and pee.である。
「トイレで小便しろ」ですね。なんせロンドンの中心部でも
パブ近くの路地は小便臭くて困る)
にして欲しかったね。

そのくらいかな。
後はガイ・リッチーをお楽しみください。
ワクワクするぜ。

タイトルがロックンローラなので音楽がすごい。
最近はあまりガンガン鳴るロックは聴かなくなったのだが、
この映画見て耳が開いてしまい、サントラを買ってしまった。

もっと早く行くつもりだったのだが、
いろいろあってこんなに遅くなってしまった。
恵比寿ガーデンシネマでは27日までなので、走れ。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 13:42 | カテゴリー:映画部

2009年03月21日

3.21 OA CARLA BRUNI PIZZICATO FIVE ASOBI SEKUSU and more

1 I KNOW MY LOVE / THE CORRS feat. THE CHIEFTAINS 

リバーダンスの話題が出たところで、
アイリッシュな曲を。
ポップ畑で成功を収めたコアーズと、
アイルランドのトラディショナル音楽に新機軸を
提案し受け入れられたチーフタンズによる競演。


2 AFTERNOON / CARLA BRUNI 

北イタリアの貴族の生まれでパリ育ち。
20才のときにモデルデビュー。
90年代を代表するスーパーモデルとして、
シャネルやディオールなど一流のメゾンの仕事をこなす。
歌手に転向して2002年に出したデビューアルバムは
100万枚以上も売れたそう。
そしてもちろん現在はサルコジ仏大統領夫人。
なんだか一昔前の少女マンガの主人公の人生のようですね。


3 東京の合唱〜午後のカフェで / ピチカート・ファイブ

海外でも人気の高いピチカート。
この曲はゲストに松崎しげるとYOU THE ROCK★を
フィーチャーした彼ら流の東京賛歌。
PVの舞台になっているのは浅草や隅田川など東京の下町。
この曲を聞いていると、東京で暮らしてるのがちょっぴり
誇らしく思えてきます。


4 MEH NO MAE / ASOBI SEKUSU

NYで活動中の男女2人のユニット。
ボーカルのYUKIは日本人。
歌詞もサウンドも実にドリーミー。


5  I HEAR YOU KNOCKING / DAVE EDMUNDS 

ウェールズ出身。
この曲は当時のロックの主流に背を向け、
50年代のサンハウス・サウンドを再現しようした
セッションから生まれたものだったが、
リリースされるや全英1位を記録。
結果的に彼の代表作となった。


6 CLOUDBUSTING / KATE BUSH  

ピンク・フロイドのギルモアに見出され、
「嵐が丘」で衝撃的なデビューを飾った彼女は、
ある意味、大人のための童話を歌い続けてきたのかも?
幻想的なサウンドと神秘的な声で魔物語を綴る名手だ。

BOOK BAR staff| 14:53 | カテゴリー:SONG LIST

2009年03月21日

大人のための残酷童話

大倉眞一郎セレクト

otona.jpg

著者:倉橋由美子  新潮文庫

ギリシア神話やアンデルセン童話、グリム童話、日本昔話などの、
世界の名作童話の背後にひそむ人間のむきだしの悪意、邪悪な心、
淫猥な欲望を、著者一流の毒を含んだ文体でえぐりだす創作童話集。

BOOK BAR staff| 14:40 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年03月21日

一度も植民地になったことがない日本

杏セレクト

    ichidomo.jpg

著者:デュランれいこ  講談社+α新書

ヨーロッパ生活の長い著者が、ヨーロッパ人の目を通した日本人評を展開。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
デュラン れい子
1942年、東京都に生まれる。文化学院美術科卒業。
女性初のコピーライターとして博報堂に入社し、
サンケイ広告大賞3年連続受賞するなど活躍。
退社しスウェーデン人と結婚後、スウェーデン、オランダ、ブラジルに住む。
1977年に英国国際版画ビエンナーレで銅賞受賞を機に、
アーティストとして活躍するかたわら、欧米の芸術家を日本へ紹介する
仕事をはじめ、特に写真およびイタリア美術の紹介に貢献する。
2000年より南仏プロヴァンス在住。
桐野夏生の『柔らかな頬』のフランス語訳に協力するなど、
東京と南仏を往復する生活。

BOOK BAR staff| 14:22 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年03月19日

ヘブリディーズ諸島、ルイス島 その3

いよいよ地獄編である。

取り立ててこの絵を撮ろうというカンプなんてものはなかったので
ロケハンで絵になりそうなところを見つくろっておいて
撮影の段でごつい男たちをあっちに置いたり、歩かせたり、
集団で火を囲ませたり、と何の撮影だったかわからなくなるような
香盤表なき香盤(撮影の段取り、役者の入り等)であった。

荒野があって、男たちさえいればいいじゃないか。
実に緩い。
しかし、この荒野は確かに行ったものでしかわからないので、
そういう撮り方しかできなかった。
雪も霙も横殴りの強風も計算はしていなかったけど、
ウェルカムである。
雪よ降れ、嵐となれ。
スコットランドの男たちは怯まない。
絵の方はそれでかまわないのだが、
こちらの身体がついていかない。
目だけを出す帽子を持っているのだが、
それでは指示を出す声が届かない、聞こえないので
ほとんどかぶっていられない。

馬鹿でかい素晴らしい岩を見つけて、
その前に男たちを集合させ気勢を上げさせ、
撮影を始めた。
しかし、車から出された男たちはやはり寒がる。
寒がられると絵になんないじゃないか。
「大倉!酒飲ませろ」
なるほど。一理あるな。
一本持って行き、
「これで身体を温めて、元気出してくれや」
と渡すと俄然みんな元気になる。
「よーし、大倉、はけろ」
カメラまで戻ると男たちはあっという間にボトルを回して
空にしてしまっており、
「もうねえぞ、もう一本寄越せ」
「しょうがねえな。大倉、持って行け」
また走る。

そんなことを繰り返し、撮影を続けた。
とにかく寒い。
カメラマンは勢いのあるうちに撮りたいので
早押しである。
それにアシスタントが追いつかない。
「何やってんだよ。すぐに用意しとけよ」
「はい、すみません」
という状態なのだが、アシスタントは小声で私に愚痴をこぼす。
「精一杯やってんだけど、手がしびれて動かないんだよね」
わかる。
わかるが私は手袋をした手をポケットの奥深くから
引っ張り出し手袋も脱ぎ捨てて手伝う気にはならない。
こっちも一杯一杯なのである。
「大倉!酒が切れたぞ」
「大倉!笑わせろ」
「大倉!焚き火を作れ」
「大倉!脚立ないのか」
メチャ言うなよ。と泣いていたら
「大倉!飲みすぎて倒れた奴がいるぞ」
えー!それは困るね。
駆け寄って
“Are you alright?”
そのくらいしか言うこともないので、
立ち上がれるよう手を貸しながらもそれを連発していたら
「こいつ同じことしか言わねえぞ」
と大笑いしやがる。
それにしても手を貸してやるといっても
向こうのほうが倍くらい重いのである。
役に立っていないことはカメラマンからは一目瞭然である。
「大倉!ちゃんとさせろよ!」
先生方、お前らもやってみろよ。

場所を変えて男たちを強風の中、なんでもないという顔をさせて
荒野の中を歩かせる。
「大倉!止まらせろ」
“Hold!”
「大倉!ゆっくり歩かせろ」
“Slowly move forward!”
「大倉!ばらけさせろ」
“Spread out!”
いかなる場合も私だけフルヴォリュームで叫び続ける。
声が枯れた。
ごつい男たちも「やんなっちゃたなもう」オーラを出し始めたので
ロケ場所を変えることにした。

0319okura.jpg

車の中で最年長のいい感じのおじいさんが怒り始めた。
「俺は第2次世界大戦中、日本軍の捕虜になってとんでもない思いをした」
と杖でコーディネーターの使えない坊やを殴る。
ベロンベロンであるが、本人がそういうのだからそうなのだろう。
なんやかんや言ってなだめるのだが、聞く耳持たんし、
本日自分が何をしているのかもよくわかっていない様子なので
爺さんはあきらめた。

その心配事からか、腹が冷えたのか急におなかに差込が、
早い話、激しい便意が私を襲う。
周りはというと360度果てしない荒野。
小高い丘もない。
我慢かな?我慢できる状態はとうに超えたな。
車の中で粗相をすると先生たちにどんなお仕置きを受けるかわからない。
「すみません。車止めてください」
車は止まったが先生が
「何だよこんなとこで」
「うんこです」
一言叫んで荒野を走った。
メチャクチャ走ったが、遠くから
「大倉!どこまで行っても同じだぞ。丸見え」
米粒くらいになれば何をやってるかわからないだろうと思っていたが、
足場は最悪。我慢も限界。
どちら向きになるかで迷った。
顔を連中に向けるのか、ケツを向けるのか。
ケツを向けてやった。ざまをみろ。
一息ついて戻るとみんなが和んでいる。
「大倉!普通、顔向けないか」
「俺の300ミリでケツ撮っといてやったから焼いてやるよ」
俺のうんこでこんなに喜んだか。プロデューサー冥利に尽きるな。

この後も大変だったのだが、もう面倒臭くなってしまった。
後は想像してください。

今でもこのときの大御所アートディレクターとお会いすることがあるが、
その度に
「大倉、お前、ルイス島の荒野でクソしたよな、な」
と挨拶代わりに声をかけてくれる。
30年もたってんだ。いい加減に忘れろよ。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 10:10 | カテゴリー:

2009年03月19日

酒器

新旧問わず食器、酒器を見るのが好きです。
アンティーク分野では、小さくて可愛く、
求めやすいお猪口を見る事が多いです。

自宅で日本酒を飲む時に、
「今回はどの器で飲もうかな?」と悩むのもまた一興。
器によっては、珍味や調味料、薬味を盛る役目も果たします。

先週はお酒談義で盛り上がったこともあり、
我が家の酒器コレクションの中から、変り種を一つ。

二つの杯がセットで売られていたものです。
いつの年代のものかは忘れました。

横からの見た目は、ただ重なっているだけ。

anne0319-1.jpg

それが、一つ一つに分けると・・・!!

anne0319-2.jpg

片方は、底が球形になっており、空の状態でなければ置けない仕組みに。
底には「さした酒ならのまねばなるまい」と書いてあります。

もう片方の底には穴が開いており、
指で塞いで杯を受け、そのまま飲み干さなければ置けない仕組みに。
底には「うけた盃ほさねばなるまい」


ユーモア溢れ、なんだかクスリとくる酒器です。

熱燗入れたら火傷するだろうなぁ。

                              杏

BOOK BAR staff| 01:48 | カテゴリー:from 杏

2009年03月18日

ヘブリディース諸島、ルイス島 その2

地獄のロケのことを書く前にそもそもモルトウィスキーの本を
紹介したところからこの島の話を書くことにしたのだから、
ウイスキーの小話をまずひとつ。

ロイヤル・ハウス・ホールドという偉そうな名前の
ウイスキーがある。英国王室御用達であったので
このような名前がついているから、
偉そうにしているのも仕方ないかもしれない。
このウイスキーはバブルで浮かれまくって、
日本全国お伊勢参り状態の頃どえらく流行っていた。
ごく普通のバーでもボトルを置くと
一本5万円くらいは取られていたはずである。
どんな人間が飲むんだろうと不思議で仕方なかった。
テイストはブレンデッド・ウィスキーなのでバランスが取れた
大変口当たりも香りも良い日本人に好まれる酒である。
今はどうなっているのかな、とネットで調べてみたら
いまだに根強い人気を誇っているようで
いくつものブログでとりあげられていた。
お値段は「THE」が付いているとかいないとかで
いろいろあるが2万円の下から上までの間。
うまい酒ではあるがそこまでして飲むか、
と個人的には思っている。

このウイスキー、ネタが多い。
生産本数が少ないということが大きな理由と推測されるが、
めったなことでは手に入らない。
何しろロンドンのどんなウイスキーでも揃えているという
ソーホーの酒屋でも扱っていない。
興味のある人は詳しいことがネットで簡単に調べられるので
そちらでお願いしたいが、
「バッキンガム宮殿」、ヘブリディース諸島のハリス島にある
「ローデル・ホテルのバー」、そして日本でしか飲めないとされていた。
日本の皇室との関係で...とか説明されている。
間違いじゃないだろうが、そんな高い酒をありがたがって飲むのは
日本人くらいしかいなかったからだろうと私は思っている。

イギリスで手に入れるのはほとんど不可能であったのは事実であるが、
ハリス島のバーでしか飲めないというのは嘘である。
30年位前のこの地獄のロケでルイス島を這い回っていた頃、
腹が減って小さなパブ兼酒屋でパンをかじっていたら
アートディレクターがこの酒が置いてあるのを見つけた。
「お、綺麗なボトルだな」
と手を伸ばしたら、「ちょっと飲んでみるか」と
店の親父がみんなに振舞ってくれた。
「うまい」
当たり前だ。
そこで親父がこのウイスキーのいわれを教えてくれた。
それが何故こんなとこにあるのかを尋ねると、
王室の人間が航海に出るときにこの島によって大量に仕入れていくから、
この店にはダンボール単位でいつも置いてあると言う。
「へーへーへー」
「で、これ売ってくれるの?」
「売るからおいてあるんだよ」
ということになり、アートディレクターはダンボール一箱、
私は2本、他のスタッフも何本か買っていた。
値段は忘れたが、日本で買うよりはるかに安かった記憶がある。

それくらいかな。
このロケで楽しかったことって。

もうひとつあったか。
この島の荒野はほとんどの地面がぶよぶよした
やや固まりかけた泥のようなものでできている。
これがピートである。
泥炭と呼ばれる石炭になるずーっと前のものくらいに
思っていただければいいのではなかろうか。
モルトウイスキー作りには欠かせない。
工程の中に濡らした麦芽を乾かすという、
香り付けで一番重要な作業があるのだが、
そこでこのピートを燃やして麦芽を乾かす。
燃える泥なのである。
ちょっとインドの牛糞で作った燃料に
似た感じを受ける方もいるかもしれないが、
全然違う。

0318okura.jpg

写真ではわかりにくいかもしれないが、
地面をただL字型の変形スコップのようなもので
上から押して掘り出していくのである。
写真の地面に段ができているところはその跡である。
あんまり羊羹を切るように軽々と作業をこなしているので、
どうしてもやってみたくなり、シャベルを借りたのだが、
日本で育ったヒョロヒョロのもやし男では
体重が乗らず、サクッ、サクッとリズミカルに
掘るのはとても無理で何本かいびつな塊を作っただけで
断念してしまった。
しかし、このルイス島にはウイスキーの蒸留所なんかないのに
どうしてこんな重労働をといぶかると、燃料にするのだと言う。
そりゃそうだ。

ピートが燃えるところをみたいかと聞かれ、
「ハイッ!ハイッ!」と手を上げたら自宅に連れて行ってくれた。
いきなり汚い格好の日本人がドシャドシャ乱入してきたんだから
家族は驚いただろうなあ。
テレビじゃないんだから事前の打ち合わせゼロだもん。
ピートはまずカチカチに乾かされる。
で、それにいきなり火をつけるんじゃなくて
木や石炭で火を作り、その上に乗せて燃やす。
家に入ったときにハムのいい匂いがするなあ。
ハム食いてえ、食いてえと願っていた。
「ハムを焼いてるの」
「ハム?」
いきなり乱入したあげく「ハム食いてえ」である。
俺ってどういう人間だ。
ハムの匂いがピートの香りであった。
ありゃ意外な展開だったな。

地獄の話を書くつもりが、ためになる話になってしまった。
地獄はその3で。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 09:57 | カテゴリー:

2009年03月17日

幕末史

これを読み始めたのは飛行機での移動中。
少し読み進め、あまりの登場人物の多さに、
「よし、いっそ書き出してみよう!」
と鉛筆を片手にページをめくり続け、
ついにはそのまま一冊読み終えてしまいました。
相関図に「まとめる」つもりが、
この人があの人と関係があって、
やっぱりこことも・・・と線を引いていったらとんでも無く
ごちゃごちゃしたものになってしまいました。
でも、この混沌が「幕末」なのかな、と。
佐幕倒幕なんて一くくりには出来ないのだな、とも。

半分まで読んで「このままだとページが人名で溢れて
最後まで書ききれない!!」と諦めかけたものの、
後半部分は意外と一定の登場人物で歴史が進んでいくのに驚きました。
まさに、「役者が舞台に揃った」と言う様な流れを感じることが出来ました。

・・・てな風に、書き連ねて始めて感じる、新しい発見がありました。
あながち無駄ではなかった・・・かも。

それにしても、勝手に落書きしてごめんなさい。

0317anne.jpg

BOOK BAR staff| 14:29 | カテゴリー:from 杏

2009年03月17日

ヘブリディーズ諸島、ルイス島 その1

またあの地獄のロケを思い出すことになる。
書けないことがいくつもあるくらい辛かった。

しかし、モルトウィスキーの本を紹介したからには
書かない訳にはいかんだろう。

スコットランドの中でも僻地と言われても仕方ない
ヘブリディース諸島の一番北の大きな島、ルイス島でのことである。

この撮影はグラフィックのみでCMはなかった。
その上極端に経費がない。
そういう場合どうなるかというと当時はメチャクチャである。
入社3年目くらいの私が誰とは書けないが
いずれも大御所のアートディレクター、コピーライター、カメラマン
それにカメラマンのアシスタントだけを連れてロケに行くことになった。
「いいか、金をかけるな。ないんだから」
金がないんだったらやめりゃいいじゃん、
という私の実に真っ当な意見には耳を貸さず、
「得意がそう言ってんだから、行きゃいいんだよ」
ケツをガンガン蹴られて
私は代理店の営業兼プロデューサー兼プロダクションマネージャー
となり10日ばかり出かけることになった。
初めての海外ロケ。
ありえない。
おかしいでしょ、代理店にお勤めの皆さん、わかりますよね。
つまりこれロケに関すること全部私一人でやるということである。
仕方ないのでいつも仕事でお世話になっていた
CM制作会社の方に海外ロケのいろはを教えてもらい、
たった一人で小さいけれど面倒な人しかいない
ロケ隊の代表者となったのである。
ロンドンからコーディネーターには手伝ってもらったが、
大きく状況が変わることはなかった。

この後も海外ロケは何度か行ったが、
CM中心のロケは代理店の営業の立場で行くのでいい気なもんである。
こちらは地獄を見たことがあったのでチョロイ仕事だと思っていたぜ。

そんなわけで本当は細々したり、非常に面倒だったりする仕事は
一通りできるのだが、自分の会社をやっていたときは
そういうことは何もわからないアホな社長で通していた。
いまや「面倒なことには手を出さない」、が私のモットーである。

そもそも何故そんな誰も知らないルイス島に行くことになったかと言えば、
アートディレクター、コピーライター、カメラマンが
荒野を撮りたいと言い出したからである。
「半端じゃない荒野でなきゃダメ。いいとこがあるんだよ、大倉」
お金の心配をしなくてすむ人はいいなあ。

ともあれロンドンからグラスゴーまで飛んで、
小さなチャーター機に機材を積んでルイス島の
まあ中心地みたいな場所ストーノウェイに降り立った。
飛行機の上から眺めていてわかってはいたのだが、
本当の荒野。
本当の荒野には何もない。
一部のみ家のある場所がある。
人が住んでいるところ以外は荒野なのである。
荒野に出れば荒野しかない。
果てしなく荒野である。
そこには風が吹いていいるだけ、どころではなく、
雪、霙が立っていられないほどの横殴りの強風に煽られ
寒いを通り越してしびれっぱなし。

0317okura-1.jpg

道路はある。
頼りないがルイス島を一周する道路がある。
が、荒野に分け入るには歩くしかない。
一片のぬくもりは羊である。
何を考えているのかさっぱりわからない羊。
村上春樹が好きだと思われる羊。
どこにでもいる。

0317okura-2.jpg

ここでロケを決行するのである。
まずモデルから集めなければならない。
お金がないので現地の酒場で探すことにしていた。
「大倉、あいつなんかごつくていいんじゃないか」
ってスコットランド人はそもそもごついのである。
その中でもごついということはとてつもなくごついのである。
本当に泣きたくなった。
私の体重はその頃まだ65キロくらいであった。
モデルについては私の泣きながらのスカウトと現地の劇団の人間でそろった。
何でこんなところに劇団が、と今でも思う。
誰にどこで見せるんだろう。

ロケハンに二日かかった。
ルイス島のほとんどを回ったような気がする。
それだけで疲れ果てていた。
会社からルイス島に一軒しかない宿に電話が入った。
「大倉、撮影終わったか?こっちも大変なんですぐ帰ってきてくれ」
「まだ一本も撮ってません」
ふざけた上司がいると苦労しますね、皆さん。

本当に大変だったのはこれから。
その2に続く。

                               大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 09:01 | カテゴリー:

2009年03月14日

アカデミー受賞作の原作!『ぼくと1ルピーの神様』

2008年、【BOOK BAR】大賞大倉セレクト部門に見事輝いた、
ぼくと1ルピーの神様』(ランダムハウス講談社)。
大倉さん大絶賛の一冊だったのですが・・・

こちらを映画化した作品『スラムドッグ$ミリオネア』は
アカデミー賞・作品賞を含む8部門で受賞!となりました。

この大注目の『ぼくと1ルピーの神様』の著者、ヴィカス・スワラップさんが、
BOOK BARにご来店!!!

okura-vikas.jpg

大倉さんと熱いトークを繰り広げてくれます・・・!


オンエアは映画の日本公開に合わせてちょっと先になります。
4月4日(土)のBOOK BARをお聞き逃しなく!

BOOK BAR staff| 14:56 | カテゴリー:おしらせ

2009年03月14日

3.14 OA 椎名林檎 THE POGUES ROD STEWART and more

1 ここでキスして(実録) / 椎名林檎 

番組内でも触れていましたが、1970年のきょう3月14日に
大阪万博が開幕しました。
そして今週、万博ならぬ生・林檎博のDVDが発売されました。
Ringo EXPO 08』、昨年秋に行われたデビュー10周年記念祭の
完全映像化作品です。
これが凄い!凄すぎる!!
黒猫堂の信者ならずとも、一度は目にしておくべき!
眼福とはこの作品のためにある言葉。
唄、演奏、振り付け、演出、構成、編曲、照明、美術、撮影、
すべてが一流でなおかつオリジナル。
現時点での日本国における実録藝術の最高峰です。


2 七つの水仙 / BROTHERS FOUR 

1958年、ワシントン大学の学生4人によって結成。
60年代のカレッジフォークブームの牽引車の役割を果たす。
メンバーの変遷はあれど、いまもグループそのものは健在のようで、
昨年秋に来日してデビュー50周年記念の全国ツアーを行っています。


3 FAIRYTALE OF NEW YORK / THE POGUES

酔いどれロックといえばこの人たち。
ウイスキーそのものを題材にした曲もあるほど。
この曲はクリスマスのニューヨークを舞台にした
アイルランド移民の酔いどれ男と腐れ縁の女の物語。


4 プカプカ / ディラン

酒場の匂いのする曲。
70年代にはこの曲のように酒臭い(&たばこ臭い)曲が
たくさん歌われていた。
よく「最近の若い奴は酒を飲まない」なんて声を聞きますが、
たしかに最近の若いアーティストが酒について歌っているのは
記憶にない。
酒なんか飲んでいる暇はないってこと?
ちょっと淋しいぞ。オヤジたちは。


5  MULL OF KINTYRE / PAUL McCARTNEY & THE WINGS 

邦題は「夢の旅人」。
アメリカでは受けなかったようですが、
本国イギリスではバカ売れしたポールの代表曲。
原題はスコットランドの地名だそうで、
キンタイア半島の岬のこと。
晴れていれば、うっすらとアイルランドが見えるそう。
ポールの広大な農場が近くにあります。


6 DOWNTOWN TRAIN / ROD STEWART  

今週、13年ぶりの来日公演を行ったロッド。
サッカー好きの伊達男は、ステージの床やドラムセットに
スコットランドの人気チーム、セルティックスのエンブレムを飾り、
前後半の間の休憩時間にはセルティックスの応援歌を
会場に流していました。
微笑ましい光景。
そしてそれを温かく見守る熟年客。
この曲は酔いどれ天使トム・ウェイツのカバー。
男はいつでも孤独なのです。
そんな曲。


BOOK BAR staff| 14:50 | カテゴリー:SONG LIST

2009年03月14日

MALT WHISKY ALMANAC

大倉眞一郎セレクト

著者:Wallace Milroy


モルト・ウイスキーの銘酒辞典。
香りや味の特徴などについてガイドしている。

BOOK BAR staff| 14:38 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年03月14日

対談 美酒について  人はなぜ酒を語るか

杏 セレクト

    bisyu.jpg

著者:吉行淳之介 開高健  新潮文庫


文豪、そして酒豪でもある2人が酒、女について語る
たいへんありがたいお話。

BOOK BAR staff| 14:22 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年03月13日

DOUBT

この映画は日本語で副題が付けられている。
あるカトリック学校で
ということです。
確かに映画の中ではあえてカトリックであるという
表現が出てこないので日本人にはわかりにくい。
「告解」という聖職者を通して神の許しを得る
カトリックの儀礼があるが、
それが会話の中で出てくるくらいである。
副題も仕方なかろう。

ついでだから豆知識を先にひとつ。
私もロンドンに行くまで知らなかったのだが、
catholicという単語は
「カトリック教会の」あるいは「カトリック教徒」という意味で
使われることがほとんどであるが、
もうひとつ「心が広い、包容力がある、おおらかな」という意味も持っている。
なんとなくカトリックには厳しい、ごついというイメージがあった私には
大変意外であった。
でも面白いので同僚とおねえちゃんのいるバーで
“We are catholic in girls, anyone’s fine.” 
とか言ってみたりした。
今になってみれば、途方もなく用法が間違っているような気がする。

“doubt”はもちろん疑念、疑惑という意味である。
この映画を語るにあたっては疑念のほうが
私の中ではぴったり来るので疑念でお願いします。

基本的にカトリックの上級聖職者は妻帯を許されていない。
それ故かどうかは知らないが、
カトリックでは同性愛は厳しく禁じられているにもかかわらず、
聖職者の同性幼児への性的暴行がよく報じられる。
これは個人的な問題というよりもやはり人間の本質の問題に
関わっているように思う。

映画の中では進歩的な神父と厳格な女性校長との
激しい確執が描かれる。
疑念は妄想に変わり、妄想は憎しみに変わる。
その疑念の発端はカトリック学校に限られたことではないが、
カトリック学校が舞台になっているからこそ
物語として成立している。
疑念について神父は決して悪いことではない
と説教をするが、厳格な校長には神を疑うことは
とんでもない罪であった。
あるほんの小さな事件からから端を発する疑念は
憎しみにまで登りつめる。
その憎しみは神の道を踏み外しても消せることではなかった。
さらに物語は疑念は事実なのか妄想なのか観客にゆだねられ、
我々は混乱の中で息を詰めているしかない。

人に対する疑念は神に対する疑念にもなりうるのか。

4人の主たる役者が全員先日のアカデミー賞にノミネートされた。
メリル・ストリープ
フィリップ・シーモア・ホフマン
エイミー・アダムス
ヴィオラ・デイヴィス
前代未聞のことではなかろうか。
この4人の芝居で映画は完璧に仕上がっていた。

まいりました。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 01:21 | カテゴリー:映画部

2009年03月12日

ヤッターマン

くっだらない、どんなことがあっても見に行くことはないだろう、
と思っていたのだが、朝日新聞の映画評に
「オヤジ的エロさに爆笑」
と心引かれる見出しが付けられていたので、
映画評を信用しない私ではあるがつい出掛けてしまった。

三池崇史が私が絶賛した「神様のパズル」に引き続き、
また監督をやっている。
しかし、この恐い顔をした監督、何者だ?
暴力を売り物にのし上がってきた監督なのに
最近は何でも撮るし、それがまた悪くない。
悪くなりそうなものでも、悪くなく撮るのである。
当たり前だが、恐い顔とは関係ないのである。

そもそも「ヤッターマン」が何であるかを理解していなかった。
1977年1月から1979年1月って私が大学生で
テレビも持っていなかった頃じゃないの。
映画を見終わった今も何だったのか
ちゃんと理解しているとは言いがたいのだが、
少なくともアニメの実写化されたものであることはわかった。
えらく人気があったそうですね。
すみませんね、オヤジで。

さて、公開二日目、豊洲ユナイテッドシネマは
1本見れば2ポイントもらえるということもあって
朝から大変な賑わいであった。
初回は10時15分からというのに親子連れでいい感じで埋まっている。
子なしオヤジ一人旅は私一人である。
この映画、「オヤジ的エロさ」がために見に来たのに大丈夫なのだろうか。

まだ筋が良くわかっていないボケた私であるから、
内容を説明することは意味がないので割愛いたします。

結果わかったことは、あなたがオヤジの場合は
この映画は子供が来る土日は避けて
春休み前の平日に一人でこっそり見に行くべきものであること。
子供がいたんじゃ「オヤジ的エロさに爆笑」したくても、
「イッヒッヒ」「ヘッヘッへ」「ケッケッケ」「ゲラゲラゲラ」
ってできないんですよ。
でも「ゲラゲラゲラ」はないな。
エロい話にそもそも爆笑はない。
本当にエロい話には大口開けて笑うことはないだろう。

確かにこの映画には子供が理解できなくても
オヤジにはわかるエロさが随所に詰め込まれている。
アニメがエロを前面に押し出していたかどうかは知らないが、
そんなこともあったであろうと想像される。
我々の世代が永井豪に狂喜したように、
子供は大人が高をくくっているうちに身体で理解を深めていく。
この映画一本でそんな刷り込みができたかどうかはわからないが、
意識的に無意識に感知されるであろうエロの挿入は伺える。

子供たちは声を上げて笑っていたが、
私はエロさを楽しみながら、いろいろ考えていた、
と言わないと格好がつかないでしょ。

                              大倉眞一郎

ヤッターマン web site

BOOK BAR staff| 02:30 | カテゴリー:映画部

2009年03月11日

ウドゥムサイ、路上の死闘

前回紹介した「東天の獅子」の戦いの表現は、
夢枕獏が渾身の力を絞りきって書いたもので、
息苦しくなるほどのものである。
あれは文章で追って自分の中にイメージを作っているので
余計に迫力を感じるのかもしれない。

私は生のガチンコの戦いは初期のUWFでしか見たことがなかった。
しかし、あれはあくまでもマットの上の試合だからな。
試合が終われば
「ウォー!両方ともよく頑張った」
みたいな事になるので、どこかに安心感はある。
しかし、本当の喧嘩は恐いよー。

何度かこのブログにも登場するウドゥムサイであるが、
本当に小さな町でマーケットも拍子抜けするほど
人がいないし、平和を絵に描いたような場所である。
町の中心には小高いプータートの丘があり、
そこにボロボロの小さな僧院とストゥーパが建てられている。
ここは夕景を見るには絶好のポイントで
毎夕10人くらいの町民がブーラブーラと集まってくる。
少年僧もすることがないので、所在なげにぼんやり夕日を見ている。
みんなほどよい距離をとりながら、自分の時間が持てる。

0310okura-2.jpg

夕陽に当たるとすべてのものは柔らかく、切なくなるが、
同時に生命の息吹があぶりだされる。

0310okura.jpg

あー、このウドゥムサイは何もないけど幸せで、
平和に暮らせる町だ、はずみとはいえ
ここで何泊かすることにした私には霊感は備わっていないが
すごい勘は身についているなあ、
と自分自慢を自分にしながら宿に向かっていたら
何やらただならぬ雰囲気が。
しかも私の宿のまん前で。

一人の長髪の若い男を二人のごつい兄ちゃん達がボコボコにしている。
誰も止めに入らない。
私も状況がつかめていないせいもあるが、
とても止めに入る勇気はない。
呆然と皆と一緒に眺めていると入る、入る。
顎に鋭いストレートが、顔の真ん中に膝が、側頭部には回し蹴りが、
倒れると腹に蹴りが踊り、再び髪をつかんで立たせると
若い男は隙を突いて逃げ出そうとするが、
そうは問屋がおろさない。
再びサンドバック状態。

殴られている男は何故かどこかふてぶてしい面構えである。
殴っている男たちは「この野郎いい加減にせいよ」の顔つきである。
そういえば周りの見物人も
「しょうもないやっちゃ」
と呆れ顔である。
何か倒れているバイクを指差して男たちが叫んでいる。
そのうち若い男は男二人に腕をとられていずこへか連れて行かれた。
様子から察するに警察に向かったのであろう。
そういえばこの町では警官を見たことがなかった。
全員私服とは思えない。
どこかに隠れているのだろうか、
人が足らないのか、
電話がないから知らなかったのか、
きっとそのうちのどれかだろうな。

私が後に勝手に総括したところによれば、
白昼堂々とバイクを持って逃げようとしたところを
店のあんちゃんたちがそれを見つけて
てめえこのやろう状態になったものと思われる。
たいした推理でもないか。

いやー、すごい迫力だったわ。
いつも優しい顔をしているラオス人も怒らせると恐いね。
それにしても驚いた。
あのストレート、蹴りは
訓練をつんでいないと簡単に出るものではない。
大体喧嘩の経験のない人間は猫パンチをへっぴり腰で
繰り出すのが精一杯である。
映画「ブリジッド・ジョーンズの日記」を見た方、
あのヒュー・グラントとコリン・ファースの
喧嘩のシーンを覚えているだろうか。
あんな感じである。

東南アジアではムエタイ、
いわゆるタイ式キックボクシングが有名だが、
カンボジアでは川沿いに毎日リングが張られて
カンボジアボクシングの興業を行っていた。
ラオスに同様のものがあっても不思議ではない。
あのボコボコにした側の男たちは何らかの練習、
あるいは訓練を受けている。
前回のカンボジア、ラオス、ベトナムの旅で
喧嘩を見たのはそれ一度きりである。
普段はみんな心優しい男たちばかりである。
口喧嘩も記憶がない。

ウドゥムサイの死闘を見て、
俺もやってみるかとはやはり全然思わなかった。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 03:50 | カテゴリー:

2009年03月09日

アプサラ

舞踏と武道には共通するものがあるような気がしてならない。
発音も酷似している。
「と」が濁音かどうかだけである。
実は両者は平安の時代にまでさかのぼると...
という風に展開すれば半村良みたいになるのだが、
どう考えても無理な話なのでやめておきます。

ただ、身体の細部に神が降りるような繊細かつ大胆な動きは
やはり似ている。

私が高校生の頃「燃えよドラゴン」が公開された。
この映画は今見ればハチャハチャ叫んでいる
妙なものに思える人もいるかもしれないが、
初めて見た時には自分の殻が二枚くらい割れたかと
思うくらいの衝撃であった。
自分の前に黄金の道が開けたと思った。
身体の奥がうずいて「バーン」とか大声を上げそうになったので、
香港に行って拳法を学ぼうと思った。
極真は痛かったり、きつかったりしそうだったので断念した。
香港に行けばみんな太極拳、酔拳、蟷螂拳、
その他よくわからいない拳法を使う人間が、
年がら年中路上対決をしていると思ったのである。
「片腕ドラゴン」なんてのもあったな、
どういうわけか悪いラマ僧が空から飛んできて
善玉と戦うなんてとんでもない設定のものもあった。
とんでもない話ですぜ。

香港行きは誰も止めなかったが、
なんとなく話が消えてしまい、
仕方なく学校で鮎川という私と同じ落ちこぼれと
休み時間には必ず廊下でお互いの突きをかわし合う特訓を行っていた。
かっこいいと思っていたんだろうな。
女子学生が10%の学校だったので
どうやってアピールすればいいのかわからなかったのである。
後に私の所属する弁論部に入ってきた下級生のかわい娘ちゃんに
どう思ってたかたずねて見たら、
「どうって...、アホだと思いました」
と正直に語ってくれた。
言っておいて欲しかったな。

心を入れ替えて太極拳に取り組むことにした。
当時太極拳で不良学生をやっつける漫画が大変な人気だったのである。
その主人公は一般の中国人のおじさん、おばさんが毎朝公園でやっている
楊家太極拳でなく、より実践的な陳家太極拳の使い手であった。
当然私は陳家にあこがれたのだが、
楊家も陳家もそんなもの下関に教えてくれる教室なんてなくて、
私はあのアマゾンのない時代に本屋に行って
教習本を調べようやく見つかった楊家太極拳の分厚い本を取り寄せ、
購入したのである。
ただ、あれ先生がちゃんと教えてくれないと
呼吸という重要な課題については訳がわからんし、
型が載ってはいるものの、本当に自分の解釈で動いているものが
正しいかどうかはもはや神のみぞ知るの領域のことであった。
ただ、その本を見様見真似で何度も繰り返しめくっていると
ある程度は最後まで通せるようにはなった。
それがこれは舞踏に似ていると思ったきっかけである。

0309okura.jpg

カンボジアではアプサラという舞踊を見ることができる。
シュムリアップにそういうお店が多い。
観光客が多いからここに集中しているものと思われる。
現在のカンボジアは仏教国といっていいほど
仏教徒が多いがこのアプサラはヒンズー教の物語が
題材になっていることが多い。
実に動きの微妙な優雅な舞である。
それを馬鹿でかい会場に観光客を押し込み、
ビュッフェで腹一杯食わせた後に舞台が始まる。
私は一番乗りでしかも一人だったので、
逆に珍しがられ一番前の団体客からは隔離された
最高の条件の場所に案内してくれた。
それはまさに神に捧げられる天使の舞であった。
男も時々民謡のようないい加減な踊りには出てくるのであるが、
あくまでもアプサラは女性中心で展開していく舞踊である。
その美しさにすっかり心を奪われてしまった。
その微笑み、所作はバリやタイのものと似ていなくもないが、
私には最も純粋で美しいものであった。

ところが舞踊が終わるとドカドカ観光客は舞台に上がり、
誠に腹立たしいことに記念写真撮影会を始めている。
肩を抱いたりして調子こいている。
特に私が一番美しいと思った娘には
蝿のように馬鹿共がたかっており、
悲しくなった私はすぐにそこを後にした。
帰りに乗ったバイクタクシーの運転手に
「どうだった」
と聞かれ、素晴らしい、あの舞踊は私が見たものの中で
最も美しかった、と答えると、大きくうなづきながらも、
「あれはあのような場所で見世物にするものではない」
と悲しげに語っていた。

太極拳の話はどうでもよくなってしまった。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 06:47 | カテゴリー:

2009年03月07日

3.07 OA ANIMAL COLLECTIVE サンボマスター QUINCY JONES and more

1 MY GIRLS / ANIMAL COLLECTIVE 

日本では通称アニコレ。
万華鏡の如く煌びやかで、脱構築主義建築のように変幻自在で
精密な音のタペストリー。
気の早い音楽誌では2009年のベストアルバムとの声も
あがっている最新作『Merriweather Post Pavillion』からの曲。
グルメな耳の持ち主は必聴!
脳細胞が喜ぶこと請け合いです。


2 プライド 〜嘆きの旅 / AKINO 

テレビアニメ「創聖のアクエリオン」のサントラから。
歌っているAKINOはアメリカ・ユタ州出身、沖縄育ちの19歳。
特技はテコンドーだそうです。


3 残像 / サンボマスター

ボーカルの山口隆は会津藩ならぬ会津若松市出身。
新しき日本語ロックにこだわるストイックな姿勢は、
武士道を究めようとする侍を彷彿とさせる(?)
ちなみにバンド名になっているサンボは、
旧ソヴィエト連邦で開発された格闘技の名前。
柔道やレスリングのように投げや関節技を主としているが、
軍隊ではより実戦的なコマンドサンボを教えている。
ということで番組後半の話題につながっていくのだ!


4 SUPERSTITION / QUINCY JONES

%A5%AF%A5%A4%A5%F3%A5%B7%A1%BC.jpg


グラミー賞の受賞回数27回、ノミネート回数79回という
音楽界の巨人。
プロデューサー、アレンジャー、作曲家として数多くの
傑作を残してきましたが、1973年リリースのこのリーダー作では、
珍しく歌っています。
ようやくCD化された『YOU’VE GOT IT BAD GIRL』より。
ジャケット写真の自信満々な立ち姿がカッチョイイ!!


5  PINGA FOGO / NARA LEAO 

ボサノヴァのミューズ。
政治的なメッセージの色濃い作品も少なくなかったため、
60年代には当時の軍事政権の抑圧から逃れパリに亡命。
1989年、脳腫瘍のため47歳の若さで他界している。
優しげな歌声には、独裁者や病魔と闘ってきた不屈の精神が
隠されていたのだ。
ここではボサノヴァではなくサンバを。


6 HEROES / THE WALLFLOWERS  

誰しもが英雄になりえる♪
ボウイの名曲をストレートにカバーしているのは、
ディランの息子ジェイコブ率いるウォールフラワーズ。
近代柔道に例えるなら抑え込み20秒で技ありです。
壁の花…なんてロックにしてはちょと辛気臭い名のような気もするが、
なかなか骨太のパフォーマンスをする良いバンドでした。

BOOK BAR staff| 14:56 | カテゴリー:SONG LIST

2009年03月07日

東天の獅子

大倉眞一郎セレクト

    totennoshishi.jpg

著者:夢枕獏  双葉社


柔術から柔道へ。
文武二刀の達人・講道館流の創始者である嘉納治五郎を描く
青春武道ロマン。

BOOK BAR staff| 14:34 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年03月07日

幕末史

杏セレクト

    bakumatsushi.jpg

著者:半藤一利   新潮社

明治は維新ではなく、徳川の瓦解であった。
歴史探偵の異名を持つ著者が独自の歴史観を織り込みながら
平易な言葉で語り下ろしていく歴史書。
多くの才能が入り乱れた、黒船来航から西南戦争までの25年を
生き生きと描いていく。

BOOK BAR staff| 14:16 | カテゴリー:BOOK INFO

2009年03月06日

ゼラチン・シルバー LOVE

操上和美である。
超大御所で何度か仕事でご一緒させていただいたこともあるが、
恐れ多くて、これといった話をしたこともない。
あえて年齢には触れないが、聞くとひっくり返るくらい驚く。
どえらくいかした方である。
若い頃もだろうが、今ももててるんだろうなぁ。
その操上さんが監督、撮影をした映画である。

よくこんな役者を集めたものである。
永瀬、宮沢、天海、役所、主題歌は陽水。
スタッフも存じ上げている方々ばかりで絶対悪口はいえない、
じゃなくて口を挟む余地がない。

一口で言えばエロティシズムに特化した映画である。
エロティシズムは必ずしも常にエロスとは限らない。
むしろタナトスのほうが密接な関係があるように思う。
カラー作品なのにモノクロームを眺めているような
ある意味、観客を突き放した感情移入を許さない映画である。
写真を極めた人間が撮った映画はこうなる。
監督のジレンマ、それによって新たに作り出される方法論には
感嘆せざるを得ない。
息を詰めて見よ。

タイトルのゼラチン・シルバーとはいわゆる銀塩写真のことを指している、
と思っていただいて間違いではない。
もっといわゆるってしまうとデジタルでない写真のことである。
最近ではデジタル技術の発達が知らない間に
すごいことになっているらしく、
一度も使ったことがない私にとっては、何がなんだかわからない。
10年前はポジかネガでカメラマンとの調整がつかなかったりして
困った事態に陥ったりしたものだが、
今はそんなことにこだわり抜いていた
カメラマン、アートディレクターたちまで
デジタルでも全然差がないよ、とか言ってるのよぉ。
何台あるかわからない、いくらつぎ込んだかわからない
フィルムカメラを抱えている人間はどうすりゃいいのだろうか。
売ったらいくらになるだろう、と中古カメラ屋で値段を見てみると
二束三文である。少なくとも市場ではごみ扱いである。
持っているすべてのカメラ売り払っても、
最新のデジタル機をレンズまで揃えられない。

フィルム売り場もぐっと狭くなってきて、種類も減った。
私は全然プロじゃないが、本当に同じか?
ネットでアップされている写真を見ると
デジタルで撮ったもの、フィルムで撮ったものの違いは明らかなのだが、
私の勘違いか?
実はこのブログでもずいぶん写真をアップしているが、
載せるためには、まずポジあるいはプリントをスキャンしなければならない。
まずそこでつまずく。
私は原則ポジ通りで色を出してもらうようにお願いしているのだが、
それがまず第一関門で、微妙に調子が狂うことがある。
さらにそれを送ってアップする段階でまた問題が生じる。
理論的にはデータで処理しているので、
それをそのまま載せているだけということになるのだが、
画像の大きさ等を調整する時点なのか、何なのか、
またニュアンスが変わってしまう。
さらには、それを見ていただく皆さんのコンピューターの特性によって
状態が違って見える。
アナログの場合くぐりぬかねばならない段階が多くて
微調整はあきらめてしまわざるを得ない。

デジタルの場合も全くそのまま調子が変わらない、
ということはないだろうが、
比較すると格段にスムーズに流れるはずである。

これはコンピューター上で見るだけでの話ではなく、
印刷される場合も最近ではデーターで送稿されるので、
同様のことが起こる。

ただねえ、
「同じだよ」
と言われても違うと思うのよ。
気持ちの問題じゃなくて、本当に違うと思うのよ。
誰か100%同じだと現物を比較しながら
説得してくださいませんでしょうか。
正直なことを言うと、大量のフィルムを持ち歩くのは
荷物になるのと、重いのとでくじけそうになる時があります。

つまらない話をひとつ。

宮沢りえさんがこの映画ではエロティシズムを具現化した
象徴的存在となっているが、そのこととは何の関係もなく
私、大倉、何と二晩続けて宮沢さんと
夕食の場でお会いしたことがある。嘘。
本当は私が一方的に目撃したことがある。
何年か前、どの店だったか(実は隠そうと思っていたのだが、
思い出そうとしても思い出せないのでつまらない)
こちらも誰と一緒だったか、宮沢さんも誰と一緒だったか
さっぱり思い出せないので、妄想かもと疑ったが、
二晩続けて目撃した後、
「俺ってすごいぜ」
と報告した記憶は鮮明にあるので間違いはない。
食事の場で著名な方をお見かけしたことはままあるが、
二番続いて同じ人と、ということはないだろう。
何かのご縁でもあるかな、とそのときは思ったのだが
予想通り何もなかった。

おめでたとのこと、陰ながら心よりお喜び申し上げます。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 06:43 | カテゴリー:映画部

2009年03月02日

ニャタポラ寺院

ネパール、カトマンズ盆地の中にある3大都市というか町バクタプルは
あまりにも居心地がいいので、つい長居をしてしまう。
私のように「あれをしなきゃ」とか、
「これも押さえとかなきゃ」とかいう向上心に欠ける人間には
最適の場所である。
私の場合、今やカトマンズでさえうるさいと感じてしまうのだから
どのくらいのんびりしたところか少しくらい想像つきますでしょうか。
カトマンズからせいぜいタクシーでも30分くらいなんだけど、
恐ろしいくらい町の規模が違う。
カトマンズは一応都市であるが、バクタプルは町に近い村のイメージ。

入り口までタクシーを着けると、町の入場料を払わねばならない。
$10。
西洋人は何で町に入るのに何故金を払うんだと揉めているが、
私は3回も来ているのであっさり支払って入る。
実際に中に入るとこの町を維持していくには
相当のお金が必要であろうことはすぐにわかる。
ほとんどかつての町並みを残している。
しかし、1934年の大地震で大変な被害を受けているので、
立て直されたものも多いが、
民家はひん曲がったまま、
いつ倒壊するかを待っているような有様である。

この町については書くことがあまりにも多いので、
今回は前回紹介した「あ・うん」関連のことにとどめておく。

阿吽は掘り下げればさまざまな意味が出てきて収拾がつかないが、
とりあえず、日本の神社、寺院に置かれている
一対の狛犬ということにして、話を進めよう。
日本には仏教とともに入ってきたということになっているが、
さまざまな起源が提示されているので、
これも面倒である。
要は大事なものの近くに守り神を置いた
というのが正しいのであろう。

日本では狛犬と呼ばれているが、
だれが見てもあれは犬じゃないだろう。
恐そうなよくわからない獣である。
事実、中国では石獅子とされているらしい。
仏教起源説で解説されることが多いが、
じゃ、下の写真はどうであろうか。

okura0302.jpg

私が泊まっていた宿から徒歩1分の場所にある
ヒンズー教のニャタポラ寺院である。
全景を見せると守護像が良く見えないので
今回は階段部分が良く見えるものをアップしているが、
階段から上は五重塔になっており、
毎朝見上げるたびにありがたくて涙こぼれそうであった。
これ、口を開けている像、開けていない像の対ではないが、
どう見ても狛犬と同じ考え方で作られたものでしょう。
この寺院は18世紀初めに作られたものなので、
ドーンとサービスのつもりでずらっと揃えたのかもしれない。
一番下が戦士で、通常の男の10倍の力を持つという。
順に象、獅子、グリフィン
(と現地で買った英語の解説書には記されているが、
もともとギリシャ神話の怪獣なのでおかしい。
強い怪獣と解釈しておけばいいだろう)、女神像と続いており、
一段上がるごとに下の像の10倍の力を持つとされている。
祀られているのはタントラの女神らしく、
中に入れるのは王だけとなっているのだが、
王なき現在はどうなっているのか調べようもない。

規模はもっと小さいが、
こんなものがカトマンズ盆地のヒンズー教、ネワール仏教の
寺にはごまんとある。

私には楽しくて仕方がない。

                              大倉眞一郎

BOOK BAR staff| 06:41 | カテゴリー:


バックナンバー

カテゴリー